手すりの取り付けや段差解消など、介護のために自宅をバリアフリーに改修したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 
そのような場合には、介護保険を利用しての自宅の改修工事が可能です。住宅改修にかかる費用の一部を介護保険から支給してもらえるため、自己負担を軽減できます。
 
今回は、介護保険を利用した住宅改修についてご紹介します。

1. 住宅改修の支給限度額は20万円

介護保険における住宅改修の支給限度額は20万円です。そのうち利用者が負担する金額は、利用者の所得に応じて1〜3割です。
 
例えば、20万円の改修工事を行った場合、介護保険の自己負担割合が1割の人は2万円、2割負担の人は4万円、3割負担の人は6万円の自己負担ですみます。
 
介護保険を利用した住宅改修が行えるのは、原則として1人1回ですが、1度の工事で上限額の20万円を使い切らなかった場合は、複数回に分けて利用することも可能です。
 
また、以下の場合は、再度20万円を限度として、介護保険を利用した住宅改修が行えます。
 
・要介護度が3段階以上重くなったとき
例:要支援1の人が要介護3になった場合、要介護1の人が要介護4以上になった場合
・新築を伴わない転居を行った時
 
市町村によっては独自の住宅改修費用を助成しているところもあります。詳しくはお住まいの市町村にご確認ください。

2. 住宅改修の対象となる工事

介護保険を利用した住宅改修は、対象となる工事が決められています。
 
介護保険でできる改修工事は、以下の通りです。
 
●手すりの取り付け
例:廊下、トイレ、浴室、玄関まわり、玄関から道路までの通路など
 
●段差の解消
例:居室、廊下、トイレ、浴室、玄関まわりなど
 
●床や通路面の材料の変更
例:居室、浴室、階段、玄関周りなど。畳敷きから板製床材、ビニル系床材等への変更、浴室の床材を滑りにくいものへの変更など
 
●引き戸等への扉の変更
例:開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に取り替え、扉の撤去、ドアノブの変更など
 

●洋式便器等への便器の取り替え
例:和式便器を洋式便器に取り替え、既存便器の位置や向きの変更


●上記の住宅改修に付帯して必要となる工事
例:手すりやスロープ設置のための下地工事など
 
注意点として、お住まいの市町村によって介護保険の対象となる改修工事や付帯工事の判断が異なる場合があります。
住宅改修の対象となる工事

3. 住宅改修を利用する流れ

次に、介護保険を利用した住宅改修の流れと必要な手続きを確認しましょう。
 
1.ケアマネジャーに住宅改修の相談
介護保険を利用して住宅改修をする際は、地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談をします。
 
2.工事内容の打ち合わせ
利用者、ケアマネジャー、施工業者で工事内容の打ち合わせを行い、住宅改修のプラン(住宅改修が必要な理由書)を作成します。
 
3.市町村に改修前の申請
改修工事は事前の申請が必要です。市町村に申請せず、改修工事を始めてしまうと、支給を受けられないため注意しましょう。
 
申請は、申請書、住宅改修を必要とする旨を記載した理由書、工事費の見積書、改修工事着工前の写真を添えて市町村に提出します(ケアマネジャーによる代行申請も可能)。
 
4.市町村の審査・結果通知
申請書類を提出後、市町村が事前申請の審査を行います。承認されると市町村から被保険者(利用者)宛に承認通知書が送付されます。
 
5.改修工事の着工・完成
結果通知が手元に届いてから、工事を着工します。
 
6.市町村に事後申請(終了報告書の提出)
工事終了後、市町村へ終了報告書や領収書、改修後の写真などを提出します。
 
7.市町村による確認・住宅改修費の支給
市町村が提出した書類に不備がないか、住宅改修の工事が適切に行われたかを確認します。適切と認められると、自己負担を除いた金額が支給されます。

4. 支払い方法は償還払いと受領委任払いの2種類

支払い方法は「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。原則、償還払いですが、利用者の費用負担を考慮して受領委任払いも可能としている市町村もあります。
 
①償還払い
工事終了後、いったん工事費用の全額を支払っておいて、市町村へ申請することで自己負担分を除く保険給付分(7〜9割)を受け取ることができる支払い方法です。
 
②受領委任払い
工事終了後、自己負担分の1~3割のみを施工業者に支払い、その後、保険給付分(7~9割)を市町村が利用者から受領に関する委任を受けた施工業者に直接支払う方法です。
 
ただし、この支払い方法を利用する場合は、施工業者が「受領委任払い取扱事業者」として市町村の登録を受けている必要があります。
 
登録を受けた受領委任払い取扱事業者は、市町村のホームページで確認するか、ケアマネジャーに相談すると紹介してもらえます。

5. 住宅改修を行う際のポイント

住宅改修を行う際には、ケアマネジャーとよく話し合いながら改修工事の内容を決めていくことになります。
 
しかし、ケアマネジャーは必ずしも住宅改修の具体的な内容に詳しいとは限りません。
 
例えば、手すりを設置する際には、自宅のどこに手すりがあったら活動しやすくなるのかを検討して設置箇所を決めます。手すりの高さや角度、長さなども利用者本人の身体の状態に合わせて細かく調整する必要があります。
 
身体の状態に合った適切な住宅改修を行うには、本人の状態をよく把握しているリハビリ専門職(理学療法士など)に自宅に来てもらい、専門的な意見や具体的なアドバイスを受けると良いでしょう。
 
すでに訪問リハビリや通所リハビリといった介護サービスを利用している、あるいは介護老人保健施設に入所していて自宅に戻る予定があるという方は、相談してみましょう。
 
また、住宅改修工事を行う施工業者の選定も重要なポイントです。
 
介護保険制度の知識が不足している業者に依頼した結果、保険給付を受けられなかったり、必要のない工事が行われたりするなどのトラブルが実際に起きています。
 
そのため、施工事業者を選定する際には、次のような点に気を付けましょう。
 
・介護保険を利用した住宅改修の実績があるか
・アフターサービスがしっかりしているか
・予算に応じた改修プランをたててくれるか
・地域での評判はどうか
 
施工業者を選定する際は、複数の業者に見積りを依頼して内容や費用を比較・検討することをおすすめします。
この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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