1. 特殊詐欺とは? 2022年の被害件数と被害額
特殊詐欺とは、被害者に電話などを利用して信頼を得る手口で、指定した預貯金口座への振り込みや、それ以外の手段を用いて、不特定多数の人々から現金などをだまし取る犯罪です。
警察庁によると、2022年に発生した特殊詐欺事件の認知件数は1万7,570件、被害額は370億8,000万円に及び、前年に比べて認知件数も被害額も増加しています。
この中で、65歳以上の高齢者の被害認知件数は1万5,114件で、特殊詐欺の被害者の実に86.6%にのぼります。
特に被害に遭っているのは、一人暮らしで日中自宅にいることが多い高齢女性です。65歳以上の女性の被害件数は全体のおよそ7割(1万1,559件)を占めます。
2. 高齢者を狙う特殊詐欺の種類と手口
特殊詐欺の手口は日々巧妙化しており、被害を拡大させています。
ここでは、高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺の種類と手口について、具体的な事例を交えて見ていきましょう。
①オレオレ詐欺
親族を装い、「鞄を置き忘れた。小切手が入っていた。お金が必要だ」などと言って、現金をだまし取る手口です。
②預貯金詐欺
警察官、銀行協会職員等を名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続きが必要です」と言ったり、役所の職員等を名乗り、「医療費などの過払い金があります。こちらで手続きをするのでカードを取りに行きます」などと言って、暗証番号を聞き出し、キャッシュカード等の情報をだまし取る手口です。
③架空請求詐欺
有料サイトや消費料金等について、「未払いの料金があります。今日中に払わなければ裁判になります」などとメールやハガキ(封書)で知らせ、金銭等をだまし取る手口です。
④還付金詐欺
医療費、税金、保険料等について、「還付金があるので手続きしてください」などと言って、被害者にATMを操作させ、被害者の口座から犯人の口座に送金させる手口です。
2022年に高齢者の被害件数が最も多かったのは、この還付金詐欺による被害でした。被害額は53億7000万円(前年から18.9%増)、被害件数は4679件(前年から16.9%増)でした。
⑤キャッシュカード詐欺盗(窃盗)
警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を名乗り、「キャッシュカードが不正に利用されているので使えないようにする」などと言って、隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る手口です。
3. 高齢者が被害に遭いやすい理由
では、なぜ高齢者が特殊詐欺の被害に遭いやすいのでしょうか? その理由を見ていきましょう。
①判断力・注意力の低下
年齢を重ねると、判断力や注意力が低下することがあります。そのため、詐欺グループの巧みな話術や心理的な誘導に騙されやすくなると考えられます。
②予備知識がない
最新の特殊詐欺の手口や対処方法を知らないことも、高齢者が被害に遭いやすい原因のひとつといえます。詐欺に関する予備知識がないために、犯人の言うままに動いてしまい、気がついた時には詐欺被害に遭っていたというケースも少なくありません。
③ 不安や孤独感
高齢者は、健康や経済的な不安、孤独感などを感じやすい傾向があります。詐欺師はこのような不安や孤独感を巧みに利用して高齢者を信用させ、金銭や財産をだまし取るのです。
4. 高齢者の詐欺被害を防ぐ5つのポイント
特殊詐欺は、被害者が気づかないうちに騙されてしまうケースも多いため、日頃から注意しておく必要があります。以下の5つのポイントについて、家族間で話し合うところから防犯対策をしていきましょう。
・心当たりのない請求には応じない。相手(請求者)に連絡しない
・家族の名前や公的機関の名前を出されても信用しない
・留守番電話や防犯機能を備えた電話用機器を設置する
・電話でお金を要求する話が出たら必ず家族に相談する
・家族と普段から連絡を取り合い、合言葉を決めておく
しかし、いくら対策をしていても、詐欺被害に遭ってしまう可能性はゼロではありません。「何か怪しい」「騙されたかもしれない」など、不安を感じた場合は、以下の相談窓口に連絡しましょう。
警察相談専用窓口 #9110
消費者ホットライン 188
未公開株通報専用窓口 0120-344-999
(日本証券業協会)