1. 相談内容
「長年、夫の父親を献身的に介護してきました。先月義父が亡くなり、相続について親族で話し合っていますが、私にも義父の遺産を相続できる権利があるのでしょうか?」
仕事で忙しい夫に代わって、妻が夫の親を介護しているというケースは少なくないと思います。しかし妻は、夫の親の相続人ではないため、基本的には夫の親の遺産を相続することができません。ただ、相談者のように、故人に献身的に尽くしてきたのにそれが報われないのは不公平だということで、数年前に法律が改正され、相続人ではない親族も条件を満たせば、「特別寄与料」として遺産の一部を請求できるようになりました。
2. 妻は義親の相続人ではない
亡くなった人(被相続人)の遺産は、遺言がない限り、相続人で話し合って分割することになります(遺産分割)。相続人の範囲は民法で定められていて、これを「法定相続人」ともいいます。民法で定められている相続人は、被相続人の配偶者、子ども、兄弟姉妹などで、子どもの配偶者は含まれません。つまり、今回の相談のケースでは、相談者は義父の相続人にはあたらないため、義父の遺産を相続する権利がないのです。
しかし相談者のように、妻が夫の親の介護をしているというケースは少なくありません。義親のためにどれだけ尽くしたとしても、相続では何ら考慮されないというのは不公平に感じることでしょう。そこで、2018年の法改正により「特別寄与料」という制度が設けられました(2019年7月施行)。
3. 特別寄与料とは?
そもそも相続には「寄与分」という制度があります。被相続人に対して特別の寄与(貢献)をした場合に、遺産相続でその分を多くもらえるという制度です。例えば、被相続人の事業を無償で手伝ってきた、被相続人を長年介護してきたといった場合に、特別の寄与をしたとして寄与分が認められれば、その分が相続財産に上乗せされます。
しかし、従来の法律では、この寄与分の対象は相続人のみで、被相続人の子どもの配偶者には寄与分が認められないという問題がありました。
例えば相談者のようなケースの場合、妻(相談者)の貢献が相続人である夫の寄与分として考慮され、夫が、寄与分の上乗せされた相続財産を受け取れる可能性はあります。この場合は、妻の貢献が間接的にでも報われたといえるかもしれません。しかし、もし夫が義父より先に亡くなってしまうと、夫の寄与分として請求することさえできず、妻の貢献はまったく報われないことになってしまいます。
こうした問題を解消するために法律が改正され、2019年7月から、相続人以外の親族も「特別寄与料」として寄与分を請求できるようになりました。
「特別寄与料」を請求できる親族は「6親等内の血族および3親等内の姻族」とされています。被相続人の子どもの配偶者はもちろんのこと、被相続人の甥姪、従兄弟姉妹なども含まれ、かなり広い範囲の親族が該当します。なお、内縁関係や事実婚などで法的な婚姻関係にない場合や、親族ではないヘルパーなどは「特別寄与料」を請求できません。
4. 特別寄与料はハードルが高い
法律の改正により、妻が夫の親を介護した場合に、「特別寄与料」として遺産の一部を請求することができるようになりました。しかし実際に「特別寄与料」を受け取ることは、かなりハードルが高いものといえます。
「特別寄与料」が認められるには、無償で労務を提供し、相続財産の維持や増加のために特別の寄与をしたとされなければなりません。例えば介護ならば、ヘルパーさんや介護サービスを頼まずに(介護費用をかけずに)付きっきりで介護し、それが一定期間継続した場合などが考えられます。一時的な介護や片手間の介護では認められないと考えたほうがよいでしょう。
また、「特別寄与料」は相続人に対して請求するものです。相続人との協議がスムーズにまとまれば問題ありませんが、協議が整わない場合や協議できない場合もあるでしょう。そうしたときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。ただし、調停を申し立てる際には申立書をはじめ、所定の書類を提出する必要がありますし、寄与の度合いを具体的に主張するためにも、被相続人の状態(病状や要介護度など)や、実際に介護を行った日数・内容などを裏付ける資料やメモの提出も重要になります。
さらに、家庭裁判所への申立ては期間が限られていることにも注意が必要です。相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内となっています。
5. まずは専門家に相談を
妻は義親の相続人ではないため、遺言がない限り、義親の遺産を受け取ることができません。しかし、夫の親を献身的に介護していた場合などは、「特別寄与料」として遺産の一部を請求できる可能性はあります。
ただし、「特別寄与料」が認められるには厳しい要件があるうえ、比較的新しい制度のため、活用するのは難しい部分もあります。実際に「特別寄与料」の請求を検討する場合は、弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。