1. 一番重要な感染予防策は、生活空間にウイルスを持ち込まないこと!
ウイルスは手や指に付着しただけでは体に入り込むわけではありませんが、手洗いや手指の消毒によって、体に持ち込む経路を断ち切り、感染を防ぐことになります。
家族の健康を守るためにも、「飲食の場や職場での感染予防対策をしっかり行う」「帰宅後はすぐに手洗いとうがいをする」「タオルを共有しない」などを徹底し、生活空間にウイルスを持ち込まない・広げないことを心がけましょう。
もし、インフルエンザや新型コロナウイルスに感染してしまった場合でも、軽症であれば自宅療養で症状の回復を待つのが基本です。その際は、次のことに十分注意して、家族への二次感染防止に努めてください。
2. 「接触を減らすこと」で、家庭内での二次感染を予防
自宅療養中に、家族への感染を防ぐための「基本的な対策」として挙げられるのは、感染者と家族の接触を少なくすること、手洗い・手指消毒を適切に行うこと、必要に応じてマスクを着用することです。
ここでは、その3点を含めた注意感染予防のポイントを解説しましょう。
①家族と生活空間を分ける
できれば、感染した人と家族との部屋を分けましょう。難しい場合は、できるだけ距離をおき、共用スペースの利用は最小限にとどめてください。会話はスマホを利用する、食事は時間差で取るなどの工夫をしましょう。しかし、ちょっとした声かけは、いつも大切です。
②世話をする人は1人に限定する
療養者の世話をする人は、1人に限定しましょう。それによって、接触感染のリスクを下げることができます。とはいえ、1人の人だけに負担がかかり過ぎないよう、交代も必要です。ただし、心臓、肺、腎臓に持病のある人や糖尿病の人、免疫が低下した人、妊婦などが世話をするのはできるだけ避けてください。また、世話をする人も朝晩に体温を測るなどして、健康状況を確認しておくこともよいでしょう。
③手洗いとマスク着用を適切に
ウイルスのついた手で目や鼻、口などを触ることによって感染することがあります。トイレなどの共用部を利用した後は、感染者本人だけでなく家族もきちんと手を洗いましょう。また、看病するときは、療養者も世話をする人もマスクをつけ、ウイルスの広がりを防いでください。
④定期的に換気を行う
換気の悪い場所ではウイルスが滞留し、感染リスクが高まります。冬場であっても、時々窓を開けて、部屋の空気を入れ換えましょう。換気扇やエアコンなどの空調を利用すると、効率よく換気ができます。
④手で触れる共有部分を消毒する
物に付着したウイルスはしばらくの間生存します。ドアの取っ手やノブ、ベッド柵などの共有部分は、薄めた市販の家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、水拭きをしましょう。
⑥汚れた寝具類、衣服を洗濯する
感染した人が使用した衣服、リネンは一般的な家庭用洗剤で洗濯し、完全に乾かしてください。
⑦ゴミは密閉して捨てる
使用済みのマスクや鼻をかんだティッシュなどは、すぐにビニール袋に入れ、密閉して捨ててください。ゴミを捨てた後は、必ず石けんで手を洗いましょう。
3. のどの乾きを感じなくても適切な水分補給を!……自宅療養時の注意ポイント
自宅療養をする際は、安静にして体力の消耗を防ぐのが基本です。できるだけ睡眠をとれるようにして、体の回復につなげましょう。また、療養中は発熱などによって、体内の水分が失われやすくなります。のどの渇きを感じないときや、食欲がないときでも水分はこまめに摂るようにしてください。水分補給は必須です。特に高齢者を介護している人は注意して見守るようにしましょう。
きちんと食事をとることも体力や抵抗力を高めるためには必要なことですが、病気の最中は食が進まないこともあるはず。そうしたときは食べやすさを優先し、のどごしがよく、胃に負担がかからないものを無理なく食べるようにしましょう。その後、体力が戻ってきたら、栄養バランスのよい食事に切り替えてください。
もし、発熱や頭痛、せきなどの症状がつらいときは、市販の解熱鎮痛薬、かぜ薬(総合感冒薬)などで症状を和らげることも大事です。ただし、医師の処方薬(持病の薬も含む)がある場合は、医師や薬剤師に併用しても問題ないかどうかを必ず確認してください。
4. 重症化や合併症のサインがあればすぐに受診を
前述したように、自宅療養では重症化や深刻な合併症のサインを見逃さないことが大事です。高齢者や持病のある人は、家族がより注意深く見守り、以下のような症状が現れたらすぐに医療機関を受診しましょう。
●発熱が3~4日以上続く
●症状が軽減せずに悪化したり、新たな症状が現れたりする
●息切れ、呼吸困難、胸の痛み、吐きけ・嘔吐がある
●尿の量や回数が減る。濃い色の尿が出る(脱水の兆候)
5. まとめ
最後に、自宅療養中の体調や、部屋の環境を正確に把握するための「便利アイテム」についても触れておきましょう。
たとえば、血液中の酸素濃度を測定できる「パルスオキシメーター」もその1つです。血中の酸素濃度は、肺炎の重症化を知る、つまり呼吸がうまくできているかを知るための目安となるので、入手しておくと、万が一のときの備えになるでしょう。
また、換気の悪い部屋ではウイルスが滞留し、湿度が40%を下回ると環境として好ましくないといわれています。室温18℃以上・湿度40%以上を保ちながら換気しましょう。「温湿度計」を見やすい場所に置き、時々チェックするとよいでしょう。
くり返しになりますが、インフルエンザや、新型コロナウイルス、ノロウイルスなどさまざまな感染症を予防するには、手洗いやうがい、マスク着用、換気といった基本的な感染症対策をきちんと行えるようにしておくことが大切です。併せて、今回紹介した自宅療養の注意点もきちんと理解して、いざというときに正しい対応ができるようにしてください。
監修:岡部信彦先生
岡部信彦 ※写真下
川崎市健康安全研究所所長。1971年、東京慈恵会医科大学医学部卒業後、小児科医として臨床経験を積んだのち、78年に米国バンダービルト大学小児科感染症研究室に研究員として留学。帰国後、国立小児病院感染科などを経て、91年にWHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、95年に慈恵医大小児科助教授、そして97年に国立感染症研究所に移り、感染症情報センター室長、センター長を務めた後、2013年より現職。