ここ数年は、新型コロナウイルス感染症にばかり注目が集まっていましたが、冬はさまざまな感染症に注意が必要です。季節性インフルエンザや乳幼児の重症化リスクが高いRSウイルス感染症、幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こすノロウイルス感染症などは、その代表例といえるでしょう。また、寒くなって体温が下がると、体の動きが鈍くなり、感染症にかかりやすくなり、高齢者では重症化する場合もあります。そうしたなかで、健康な毎日を送るには「ウイルスを体内に侵入させないこと」と「侵入したウイルスと闘える体力をつけること」が重要です。家族で生活習慣を見直して、感染症を予防しましょう。

1. インフルエンザ、コロナ、ノロ……冬型のウイルスの特徴とは?

 
寒くて空気が乾燥しがちな冬は、かぜやインフルエンザ、あるいは新型コロナウイルス、そしてノロウイルスなどの感染症が多くなります。冬に注意が必要な感染症の種類と特徴について、簡単におさらいしておきましょう。
 
●インフルエンザ
インフルエンザウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症で、急激な発熱(38℃以上)や頭痛、せき、のどの痛み、鼻水、筋肉痛、関節痛などの症状がみられます。多くの場合1週間ほどで回復しますが、高齢者、基礎疾患を持つ人では、肺炎を併発することも多く、小児ではけいれん、急性脳症や異常行動などが現れることもあります。
 
●新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスによる感染症です。潜伏期間は1〜14日(多くは2~3日)で、発症初期には発熱や呼吸器症状、全身倦怠感、頭痛といったかぜやインフルエンザに似た症状がみられます。多くは軽症で回復しますが、中には肺炎が悪化し、酸素投与や人工呼吸器、あるいは体外循環による人工肺(ECMO)などによる治療が必要なほど重症化することもあります。生まれたての新しいウイルスとそれによる病気なので、周期性や季節性などはまだあまり明確になっていません。
 
●ノロウイルス感染症
幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こす、ウイルス性の腸管感染症です。潜伏期間は12〜48時間で、腹痛、下痢、嘔吐などの症状を、突然引き起こします。安静にしていれば、2~3日程度で自然に回復しますが、乳幼児や高齢者は脱水症状になりやすいので、こまめな水分補給が必要です。高齢者では吐物による窒息や、吐物が気管に入り肺炎(誤嚥性肺炎)をおこし、命に関わることもあります。
インフルエンザ、コロナ、ノロ……冬型のウイルスの特徴とは?

2. 「正しい手洗い」が感染症予防の要!

感染症の代表的な感染経路の1つは、ウイルスに触った手を介して広がる「接触感染」です。
 
ウイルスがついた物品を手で触り、その手で口や鼻、目などに触れることでウイルスが体内に入り、感染してしまうのです。そうした事態を防ぐには、「手で顔を不用意に触らない」「不特定多数の人が触れるスイッチやボタン類には直接手で触れない」「水道の蛇口を掴む際はペーパータオルを使う」などの対策が考えられますが、完璧に行うのは容易ではなく、またあまり実際的ではありません。
 
だとしたら、どうやって予防するのがよいのでしょう? 接触感染の予防対策として最も手軽で効果的なのは、手を洗うこと。流水と石けんでの手洗いです。帰宅直後や調理の前後、食事の前、トイレの後などには石けんをよく泡立て、20~30秒を目安に丁寧に手を洗いましょう。
 
<正しい手の洗い方>
①まず手指を流水で濡らす
②適量の石けん液を手のひらに取る
③手のひらをこすり合わせよく泡立てる
④手の甲をもう片方の手のひらでもみ洗う(両手)
⑤指を組んで両手の指の間をもみ洗う
⑥親指をもう片方の手で包みもみ洗う(両手)
⑦指先をもう片方の手のひらでもみ洗う(両手)
⑧両手首まで丁寧にもみ洗う
⑨流水でよくすすぐ
 
洗った後は、清潔なタオルかペーパータオルで拭いて、十分に乾かしましょう。なお、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスには、アルコール消毒も有効です。適量のアルコールを手に取り、石けんでの手洗いと同様の方法で手にすり込んでください。手が濡れたままだと効果が弱まるので、乾いた手に吹きつけるのもポイントです。手荒れが気になる人は、こまめな保湿対策を同時に行うとよいでしょう。
「正しい手洗い」が感染症予防の要!

3. 正しい「マスク着用」で飛沫感染を防ぐ

感染症の代表的な感染経路として、感染している人のくしゃみやせきで出る飛沫を吸い込む「飛沫感染」もあります。
 
せきやくしゃみが出る場合は、「自分を防ぐ」というより、「他の人にうつす可能性」を考えて、マスクをつけましょう。万が一、マスクをつけていないときにせきやくしゃみが出そうになったら、ティッシュやハンカチ、洋服の袖などで口元を覆い、飛沫が周囲に飛散するのを防いでください。マスクの素材にはいくつかの種類がありますが、一般的な使用では不織布マスクが使いやすく、また効果が高いとされています。
 
マスクをつける際は、自分の顔にぴったりフィットするサイズを選び、正しくつけることも重要です。下記のポイントに注意して、自分の口から出ていく飛沫の量や、他の人の飛沫を吸い込む量を最小限に抑えましょう。
 
<つけるときのチェックポイント>
・鼻やほおの部分に隙間ができていないか
・鼻やあごの下までマスクできちんと覆われているか
・髪の毛やひげをマスクで挟んでいないか
 
<マスクの正しいつけ方>
①鼻の形に合わせてノーズフィッターにカーブをつける(鋭角になりすぎないように注意)
②鼻からほおにかけてもフィットするように、さらにWの形に曲げる
③ノーズフィッターが鼻にぴったり合うことを確認しつつ、マスクを口に当てる
④プリーツを広げあごまで覆う
⑤そのまま片手でマスクを押さえながら、最後にゴムひもを耳にかける
 
外すときは、マスク自体に触れないようにゴムひも部分を持って外し、確実にゴミ箱に捨てましょう。また、マスクに触った後は、しっかりと手を洗ってください。
正しい「マスク着用」で飛沫感染を防ぐ

4. 高齢者はとくに気を付けたい! 家族で実践したい4つの対策

ここまで、感染症の予防対策として手洗いとマスク着用について解説してきましたが、家庭内でできることはほかにもあります。以下に紹介する4つの項目を実践して、家族の健康維持に努めましょう。
 
①部屋の空気は定期的に入れ換える
換気の悪い場所ではウイルスが滞留し、感染リスクが高まることがわかっています。気温が低くても、空気が淀まないように定期的に換気をしましょう。また、加湿器などで適度な湿度を保つことも重要な予防対策です。
 
②運動・栄養・睡眠で基礎体力を強化
ウイルスが体内に入り込んでしまっても、私たちにはそれを排除しようとする力が備わっています。そして、その力を存分に発揮するには、規則正しい生活、適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠などで基礎体力を強化することが大切です。家族みんなで生活習慣の見直しをしましょう。
 
②こまめなうがいで口腔内を清潔に
のどの粘膜が乾燥して荒れると、ウイルスが体の中に入り込みやすくなります。うがいにはウイルスの侵入を直接的に防ぐ効果こそありませんが、のどの粘膜を潤す効果や、口腔内を清潔に保つ効果があるため、間接的には感染症予防につながります。
 
③感染リスクを下げ、重症化を予防する方法のひとつがワクチン接種
インフルエンザや新型コロナのワクチンには、一定の感染予防効果がありますが、最も期待されているのは、ワクチン接種による重症化や感染拡大を防ぐ効果です。家族の中に高齢者や基礎疾患を持つ方がいる人がいる場合は、ワクチン接種を検討するのもよいでしょう。
高齢者はとくに気を付けたい! 家族で実践したい4つの対策

5. まとめ

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などが流行している時期に、不特定多数の人が集まる場所へ出かけるのは、感染リスクを高めます。流行が広まっていたら、手洗いやマスク着用をするだけでなく、人混みに出かけることもできるだけ避けましょう。
 
なお、「手洗いが大切」といっても、よく洗うことで手が荒れて傷ができると、かえってウイルスや細菌に感染しやすくなります。手を洗った後は、クリームなどで保湿ケアをすることも忘れないでください。


監修:岡部信彦先生
 
岡部信彦 ※写真下
川崎市健康安全研究所所長。1971年、東京慈恵会医科大学医学部卒業後、小児科医として臨床経験を積んだのち、78年に米国バンダービルト大学小児科感染症研究室に研究員として留学。帰国後、国立小児病院感染科などを経て、91年にWHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、95年に慈恵医大小児科助教授、そして97年に国立感染症研究所に移り、感染症情報センター室長、センター長を務めた後、2013年より現職。
まとめ
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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