シニアと行きたい旅行プランをトラベルライターの間庭典子がご紹介! 今回はいつかは行ってみたい夢の海外旅行をご提案。シニアの親だからこそ、実は過ごしやすい街、刺激のある街をピックアップしてみました。
規則正しい生活サイクルを維持する方が多いシニア世代にとって、海外旅行のハードルとなるのが時差と飛行距離。かといって異国感が少ないと「海外旅行に来た!」という気分になれず、刺激もない…ということで、異文化のわくわくを体感しつつ、快適に過ごせる街とはどこか、考えてみました。
私の中でのナンバー1はシンガポール! 時差は1時間、冬でも暖かく、治安も比較的よく、安全で清潔。しかもIT技術最先端を誇る未来都市でありながら、中国やマレーシア、イスラムなどさまざまな文化が混じり合う、独特の雰囲気が漂っています。中華、西洋、マレー文化が混ざり合ったプラナカン様式(*)のカラフルな家が並ぶカトン地区など、テーマパークのようにフォトジェニックな風景に出会えるのもシンガポールならでは。リトルインディアやイスラムの街そのもののアラブストリートもエキゾチック!
家族で移住する日本人も多いことから、その住みやすさをうかがいしれます。問題は物価の高さ! 世界中からIT系のエクスパートが集まり、ハイエンドなレストランやバーも多いのですが、クオリティと比例してお値段も一流! スーパーの野菜や、パンなどの食材や日用品の価格も高く、最近さらにアップした、とかの地に長く住む友人も嘆いていました。けれどもご安心あれ。高級レストランやブティックに負けず、ローカルな市場やフードコートも充実しているのです。むしろ珍しいおやつやスナックが並び、海外ならではの賑わいにわくわくするのでは?
写真上:メニューを指さしながら選べ、いろいろ試せるのがホーカーズの魅力。
大衆的なフードコートはホーカーズといって街中のいたるところにあります。駐車場を改造したような半屋外のロケーションなど、大きな広場に屋台が並んだ感じで、どのお店のお料理も持ち込めるテーブル席が並んでいます。見渡すと、家族や仲間など大勢で集って楽しむ人あり、仕事の合間にさくっとご飯を食べている様子の人ありとさまざま。カジュアルで自由な雰囲気です。屋台はヌードル専門店から本格的な魚料理を出すお店などこちらもさまざま。テイクアウトも人気のようです。
*プラナカン様式…15世紀後半からシンガポールやマレーシアに移り住んだ中華系移民の子孫、プラナカンの人々が作り上げてきた文化形態のこと。中国文化とマレー文化、さらに西洋の文化が融合した独自の文化は、建築物のあざやかな色使いや窓枠のフォルムや飾りなどに如実に表れている。
シンガポールは空港も迫力満点。ジュエル・チャンギ・エアポートはショッピングセンターやレストランなどの入った10階建ての複合施設。中でも必見なのは世界最長の人工滝と庭園。1日あっても回り切れないほどの規模です。アーリーチェックインや荷物預かりサービスもあるので、帰国日は余裕をもって空港に向かい、最後まで旅を満喫しましょう。
写真上:10階建ての吹抜けから流れるジュエルの人工滝。定期的に光のショーも開催。
シンガポールは国の面積も東京23区程度とコンパクト。空港と市街をつなぐ地下鉄もあって移動もしやすく、ナイトサファリが楽しめる大規模な動物園やカジノやエンタメ施設のあるセントーサ島などの観光スポットも多数。街の中心地を歩くだけでも楽しいし、少し郊外に出ても疲れないほどの距離感です。まさにおとなの遠足向きの旅先だと言えるでしょう。夜景も見事ですよ!
もうひとつ、おすすめなのはオーストラリア第二の都市、メルボルン! オーストラリアは日本との時差がないので、時差ボケに悩まされることもありません。また、南半球は季節が逆なので、冬は暖かく、夏は涼しく過せます。寒暖厳しい季節に訪れれば、最高の気分転換にもなります。
メルボルンはオーストラリア大陸の南東部ビクトリア州にあり、多くの公園や庭園に恵まれています。7年連続でエコノミスト・インテリジェンス・ユニットの住みやすい街指数の世界一に輝いたほど、実は安全で、整備された街。オーストラリアらしい大らかな雰囲気が心地いいのです!
英国風の歴史ある建物や駅舎などから成る美しい街並みなど、見どころも満載。路面電車トラムは市内中心部だと無料になるなど、アクセスも良好。個人的には世界一美しいと言われる図書館に感動しました。もう一度、訪れたい。いや、住みたい!
車で1時間ほどのヤラバレーのワイナリーなど、郊外にも美食を楽しめる名所が多く、多くの車のCMや映画などにも登場する海岸沿いのグレートオーシャンロードや12使徒と呼ばれる奇岩群(*)も圧巻です。
写真上:郊外の12使徒の奇岩群をヘリコプターから眺める冒険ツアーも。
メルボルンはおしゃれなカフェも多く、ヨーロッパのような美しい街並みを楽しめるので、市内を散歩するだけで旅行気分が高まります。ぜひ足を運んでほしいのが、1,000件ものお店が並ぶ市場、クイーンビクトリアマーケット。チーズやスパイス、ソーセージなどの各専門店が並び、生牡蠣やホットドックなどはフードコートで食べることもできます。異国で日常を過ごす。そんなテーマの滞在ができるのもメルボルンのよさですね。
*奇岩群(きがんぐん)…メルボルン南西の湾岸道路、グレートオーシャンロードにある景勝地。南極由来の海流と風によって浸食された石灰岩層が岩となって海に取り残され、現在のような風景となった。岩が連なる風景をキリストの12人の使途になぞらえて「12使途」とも呼ばれている。
旅の達人も「やっぱりいい!」とうなるのがハワイ。中でもホノルルは、ビーチにダイヤモンドヘッドのような大自然、ショッピングセンターなど、さまざまな要素が詰まった玉手箱のような街です。ちょっと足をのばせば、マノアの滝など、スピリチュアルな風景にも出会えます。日本語が通じやすいので、シニア世代も過ごしやすく、リピーターも多いでしょう。
写真上:ビーチの開放感と街の快適さがバランスよくミックスしている常夏のハワイ。
一番の悩みは物価高。ならばLCC(格安航空会社)を活用し、エア代の節約でカバーしてはどうでしょう? 2018年設立、JALが100%出資した子会社ZIPAIRではホノルル便が週3便あり、片道30,048円~(諸税込み ※2024年4月現在)から飛べるのです! 安かろう狭かろうのイメージのあるLCCですが、必要に応じてサービスを選び取り、合理的に無駄をカットという視点で考えれば、その価格にも納得です。
機内食は基本的には予約制。エア代に食事代は含まれていません。ヴィーガンやハラル対応などの30種類のメニューから選び、その分追加料金を支払います。人数分の食事を常に搭載する必要がないので、その分のスペースやカートの本数が削減でき、座席のスペースを確保できるというわけ。たとえば座席はJALでは約200席のところを、ZIPAIRでは約1.5倍の290席。シートは幅が約43cmなど、フルサービスキャリアでも広く採用されている設計で、快適さを確保しています。ゆったりと過ごしたかったら180度リクライニングが可能なフルフラット座席へのアップグレードもできます。
うれしいのは全フライトで無料のWi₋Fiを設置し、メールやSNSが機内でもさくさくつながる点。スマホなど使い慣れた自分の端末で動画コンテンツを楽しめるんです。
日系の航空会社ならではのサービスと計算された快適さで、信じられないほどリーズナブル。ZIPAIRはホノルル便以外にもシンガポール、ソウル、バンコク、ロサンゼルス、バンクーバーなどの各人気都市への路線もあるので、夢が広がります。
写真上:ローコストなLCCでもJALが100%出資という安心感のZIPAIR。
コロナ禍を経て、もう難しいかな、とあきらめていた海外への旅も、行き先やエアを選べば、快適にお値打ちに気軽に、旅行できます。旅ってプランを立てることから楽しめる趣味。どこへ飛ぶ? どこを巡る?といろいろと想像しながら、会話を楽しみましょう。
著者:間庭典子(まにわのりこ)
中央線沿線の築30年以上の一軒家に後期高齢者の両親と同居する50代独身フリーランス女子。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「mc Sister」編集者として勤務後、渡米。フリーライターとして独立し、女性誌など各メディアにNY情報を発信し、「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」(講談社)などを発行。2006年に帰国し、現在は日本を拠点に、旅、グルメ、インテリア、ウェルネスなど幅広いテーマの記事を各メディアへ発信。旅芸人並みのフットワークを売りとし、出張ついでに「研修旅行」と称したリサーチ取材や、さびれた沿線のローカル列車で進む各駅停車の旅を楽しむ。全国各地の肴を味わえる地元の居酒屋やスナックなどの名店を探すソロ活動も大好き。