1. 特別養護老人ホームとは?
特別養護老人ホームとは地域密着型サービスの1つで、介護が必要な入居者ができるだけ自立した日常生活を送れるようサポートするとともに、機能訓練や療養サービスも行われます。
常時介護サービスを受けられることに加え、特別養護老人ホームの多くが可能な限り施設で入居者を看取る姿勢をとっていることから、終の棲家として利用するケースが多くみられる点が特徴です。
また、部屋の種類が多岐にわたっており、従来型の個室のほか、多床室やユニット型の部屋が用意されています。ユニット型はさらに個室と個室的多床室に分かれています。
●利用するための条件
特別養護老人ホームを利用できるのは、原則として要介護3以上に認定された人です。ただし、要介護1および2であってもやむを得ない理由がある場合は利用することができます。
やむを得ない理由とは、
・認知症によって日常生活に支障がある
・精神的な障害によって意思の疎通が難しい
・同居家族の支援を受けられない、もしくは虐待の恐れがある
などで、入居の順番は緊急性の高さによって決まります。
また、特別養護老人ホームは地域密着型と広域型があり、広域型の場合はどこに住んでいても入所を申し込めます。一般的に特別養護老人ホームは広域型を指すことも覚えておきましょう。ちなみに地域密着型の場合、定員が30名未満という条件があります。
●かかる費用
特別養護老人ホームを利用する場合、以下の3つの費用がかかります。
・施設サービス費
・居住費および食費
・日常生活費
仮に要介護5(自己負担1割)の人がユニット型個室の特別養護老人ホームを利用した場合の施設サービス費の目安は、ひと月あたり約2万8,000円です。そして、基準となる居住費は一日あたり2,006円、食費が1,445円となっており、仮に日常生活費が1万円かかった場合、1カ月にかかる費用総額は約14万円だということがわかります。
また、食費や居住費については、所得によって負担限度額が設定されており、負担限度額を超えた部分については。介護保険から支給される仕組みになっています。
●利用するための手続き
特別養護老人ホームを利用するには、まず入居したい特別養護老人ホームを決め、書類を提出のうえ入居の申し込みを行います。必要になる書類は申込先の特別養護老人ホームによって異なりますので、事前に問い合わせて確認し、もれのないように準備しておきましょう。
どの特別養護老人ホームを利用するか迷った際には、ケアマネジャーに相談してみましょう。申し込み後、審査が行われます。そして、審査に通過した後に入所のための契約を結び、最終的な入居日を決定します。その際には、住民票を入居する先の特別養護老人ホームがある場所に移すことを忘れないようにしてください。
2. 公的な介護施設にはほかにどんな施設がある?
特別養護老人ホームは公的な介護施設の1つですが、他にも利用できる公的な介護施設はあります。特別養護老人ホームとは特徴が異なるため、よく理解した上で利用するかどうかを決めるようにしましょう。
●介護老人保健施設
介護老健施設とは老健ともいわれ、要介護1以上の人が利用できます。退院直後など、短期間での入所が目的となっている点が特別養護老人ホームと異なりますが、医師が常時駐在しているため、安心して利用できます。
●介護医療院
以前は介護療養型医療施設が利用されていましたが、2023年3月をもって廃止となるため、その転換先の意味をもっています。1型と2型があり、1型は重い疾患がある人や認知症の人を対象としています。そのため、2型に比べると1型のほうが利用者1人に対する医師や看護師の数が多く、行き届いた介護や療養が受けられます。
3. 民間の介護施設は何が違うのか
介護を必要とする人に向け、民間企業が運営する介護施設もあります。主な施設としては、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「グループハウス」などが挙げられます。
介護付き有料老人ホームでは、スタッフが常駐しており、施設内で常に介護サービスを受けることができますが、住居型有料老人ホームにはスタッフは駐在していません。そのため、入居前に訪問介護や通所介護を利用していた方のうち、入居後も引き続き利用したいと考える人に向いているといえるでしょう。
他には、要支援2以上の認知症の人ができるグループホームという介護施設もあります。さらにケアハウスという施設もありますが、こちらは介護は必要なく、自立した人を入居の対象としている点が異なっています。
●民間の介護施設と公的の介護施設の違いとは?
民間の介護施設と公的の介護施設の違いは、なんといってもかかる費用です。公的な介護施設の入居の際には一時金は必要ありませんが、民間の介護施設ですと一時金が必要な所が多く、場合によっては1,000万円以上など多額の一時金が必要な施設もあります。
また、食費や居住費なども公的な介護施設と比べて高めに設定されており、一時金以外にかかる毎月の利用料も高くなります。ただ、その分サービス内容が充実している点は注目すべきところでしょう。
4. 望む介護サービスと費用面を考慮しながら、入居先を選ぶことが大切
公的な介護施設にしても民間の介護施設にしても、さまざまな種類があり、受けられる介護サービスはそれぞれ異なります。特に終の棲家として考えるなら、長期間介護施設に滞在することになるため、滞在することでストレスにならないよう、自分の望む介護サービスが受けられる施設かどうかを見極める必要があります。
また、民間の介護施設のほうがサービスの質はよいと言われているものの、一時金や毎月の利用料を含めると数千万円ほどの費用がかかるケースも考えられるということを頭に入れておきましょう。
5. まとめ
介護施設を利用するにあたり、家族に金銭的な負担をかけたくないと考える人も多いと思われます。利用する方の資産がどのくらいあるかによって選択肢も変わってきますが、サービス内容や費用面も考慮し、最終的にその方に合った介護施設に入居できるよう、考えましょう。
6. 監修者プロフィール
新井智美(あらい・ともみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
福岡大学法学部法律学科卒業。 2006年11月、世界共通水準のFP資格であるCFP®認定を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。 2017年10月に独立し、コンサルタントとしての個人向け相談や、資産運用などにまつわるセミナー講師のほか、大手金融メディアへの執筆および監修に携わる。