サルコペニア肥満になると、転倒や骨折などが起こりやすく、高齢のご家族の要介護リスクが高まります。サルコペニア肥満を防ぐためには、筋トレを習慣にすることが大切です。年齢とともに減っていく筋肉ですが、鍛えることで、何歳からでもふやすことができます。最近、筋肉の衰えを感じるMySCUE世代の方もサルコペニア肥満かもしれません。さっそく筋トレを習慣にして、親子でサルコペニア肥満を予防しましょう。
誰でも簡単にできる筋トレを「上半身の筋トレ」「下半身の筋トレ」「すきま筋トレ」に分けて紹介します。
全身の筋肉の約7割は下半身にあり、筋肉量の減少も下半身を中心に進んでいきます。まずは下半身の筋肉から鍛え、それが習慣化したら上半身を鍛えるようにしましょう。
年齢とともに筋肉量は減っていきますが、なかでも衰えやすいのが下半身の筋肉です。まずは、太もも、お尻、大腰筋(太ももと背骨をつないでいる筋肉)などを鍛えましょう。
●つかまりスクワット
<強化する筋肉>
太もも・お尻の筋肉、大腰筋
<やり方>
①脚を肩幅に開き、椅子の背を持ち、背すじを伸ばして立つ。
②上体は真っすぐのまま、ゆっくりと椅子に座るイメージで膝を曲げて腰を落とす(このとき、膝がつま先より前に出ないように注意)。
③ゆっくりと元の姿勢に戻る。
※慣れてきたら、膝を深く曲げてみる(最大90度まで)。
●太もも上げ
<強化する筋肉>
大腰筋、腹筋
<やり方>
①椅子に浅めに腰かけ、背すじを伸ばし、椅子の座面を両手でつかむ。
②片方のひざをゆっくりと上げ、ゆっくりと元の位置に戻す。
③片方ずつ行い、きつい場合は左右交互に行う。
※慣れてきたら、ひざを胸に引きつけると同時に、背中を丸め、ひざに寄せる。
●ひざ伸ばし
<強化する筋肉>
太ももの前の筋肉
<やり方>
①椅子に浅めに腰かけ、座面を両手でつかみ、背すじを伸ばす(椅子の背にもたれない)。
②ゆっくりと片方のひざを真っすぐに伸ばす。
③ゆっくりと元の姿勢に戻る。
④反対側の足も同様に行う。
※慣れてきたら、ひざを伸ばしたときに、つま先を顔のほうに向ける。
下半身の運動に慣れてきたら、次はおなか、胸、腕、背中など上半身の筋肉も鍛えましょう。全身の筋肉量が増えると、疲れを感じにくくなりますよ。
●上体起こし
<強化する筋肉>
腹筋、大腰筋
<やり方>
①あお向けに寝て、両ひざを立て、脚は腰幅に開く(慣れるまで背中に枕やクッションなどを挟んでもよい)。両腕を前方に伸ばし、指先で太ももに触れる。
②おへそをのぞき込むように、肩が床から離れるくらいまでゆっくりと上体を起こす。
③ゆっくりと元の姿勢に戻る。
●腕立て伏せ
<強化する筋肉>
胸・腕の筋肉
<やり方1/基本編>
①壁からやや離れた位置(肘を伸ばしたときに、指先が触れる程度)に立つ。
②両手を肩幅程度に開いて壁につき、指先を少し内側に向ける(肘は伸ばしきらないように)。
③腰が反らないように気をつけながら、壁に向かってゆっくりと肘を曲げる。
④ゆっくり元の姿勢に戻る。
<やり方2/応用編>
①両ひざを腰幅に開いて床につき、四つんばいの姿勢になる。
②両手は肩幅程度に開いて床につき、指先を少し内側に向ける。
③腰が反らないように気をつけながら、ゆっくりと肘を曲げる。
④ゆっくりと元の姿勢に戻る。
●足上げ背筋
<強化する筋肉>
背中・お尻の筋肉
<やり方1/基本編>
①肘とひざを伸ばしてうつぶせになる(顔は床を向いても、横を向いてもよい)。
②右腕と左脚を同時にゆっくりと軽く上げる(対角線に手と脚を引っぱられるイメージで。脚を上げすぎず、腰を反らさないように)。
③ゆっくりと元の姿勢に戻る。
④反対側も同様に行う。
<やり方2/応用編>
①両ひざを腰幅に開き、四つんばいの姿勢になる。
②右腕を前方に、左脚を後方にゆっくりと伸ばす(顔は床に向けたままで)。
③ゆっくりと元の姿勢に戻る。
④反対側も同様に行う。
筋トレをする時間がないという人におすすめしたい、仕事や家事のちょっとした合間に気軽にできる筋トレです。どれも1~2分もあれば十分できるので、ぜひ日常生活に取り入れましょう。
●かばんの上げ下げ
<強化する筋肉>
背中・二の腕の筋肉
<やり方>
①かばんを持って椅子の横に立つ。反対側の手を座面についてからだを支える。両脚を前後に開いてからだを前傾させる。
②かばんを持った腕がからだから離れないように注意して、ゆっくりとかばんを持ち上げる、下げるをくり返す。
③反対側も同様に行う
●かかと上げ
<強化する筋肉>
ふくらはぎの筋肉
<やり方>
①椅子の背に手を置き、つま先は真っすぐ正面に向ける。脚を腰幅に開き、背すじを伸ばす。
②足の指先のつけ根に体重がかかるように、ゆっくりとかかとを持ち上げる。
③からだのバランスを崩さないように、ゆっくりと元の姿勢に戻る。
●ひざ上げツイスト
<強化する筋肉>
わき腹・おなかの筋肉、大腰筋
<やり方>
①椅子に腰かけて、背すじを伸ばす。両手は頭の後ろで組み、両脚はそろえる。
①片方のひざを持ち上げると同時に、膝を上げたほうにできるだけからだをひねる。
③持ち上げたひざと、反対側の肘を近づける。
④反対側も同様に行う。
※難しい人は②で①の姿勢に戻る。
なお、筋トレを行うときは、漫然と行うのではなく次の点を意識してください。
◆呼吸を止めて行うと、血圧が上がるので要注意。「1、2、3」と声に出してカウントしながら行うと自然に呼吸ができます
◆痛みや違和感のない範囲で行いましょう
◆1つの動作に7秒程度かけて、ゆっくりと行ってください
◆強化する筋肉を意識しながら行うと、筋トレの効果を引き出しやすくなります
◆行う回数は10回で1セットが目安(左右行う場合は、それぞれ10回、計20回で1セット)
◆筋トレの初心者は1日1セットからはじめ、慣れてきたら2セット行いましょう
◆複数の筋トレを行う場合は、血圧の上昇を防ぐために、1セットめと2セットめの間隔を3~5分空けるようにしてください
最後に、筋肉量を増やすためのもう1つのポイントをお伝えしましょう。
それは、食事のとり方です。中高年になるとダイエットを意識する人が増え、「肉を食べずに野菜を食べよう」と考えたり、食べる量を極端に減らす方法をくり返したりしている人も見られますが、それはNG! 無理な食事制限をすると体重とともに筋肉量も減ってしまいます。筋肉量が減ると、ダイエットをしてもリバウンドしやすく、骨も弱くなってサルコペニア肥満になるリスクが高まるのです。
「いくら筋トレをしても、筋肉の材料になるたんぱく質を十分にとっていなければ筋肉量を増やすことは困難です。たんぱく質には動物性(肉・魚・卵・乳製品)と植物性(大豆製品・穀物など)がありますが、筋肉量を増やすためには動物性たんぱく質をしっかりとることが大切です」(久野先生)
久野先生によると、食事をとるタイミングを意識すると、さらに効果的だそうです。たとえば、運動後30分以内にたんぱく質をとると、筋肉量を効率よく増やすことができ、食後に運動を行う場合は、10分程度の軽いウォーキングをすると、食後の血糖値の上昇を抑える効果が得られるとのこと。ぜひ実践してみてください。
久野譜也(くの・ しんや)
筑波大学大学院 人間総合科学学術院 教授。株式会社つくばウエルネスリサーチ代表取締役社長。
運動指導: 鶴園卓也(つるぞの・たくや)
株式会社つくばウエルネスリサーチ
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。