「サルコペニア肥満」という言葉を聞いたことがありますか? サルコペニアは、ギリシャ語で「筋肉」を指す「サルコ」と、「喪失」を指す「ペニア」を組み合わせた言葉で、筋肉量の減少や筋力の低下を意味します。つまり、筋力が低下し、体内の脂肪が増えた状態がサルコペニア肥満なのです。サルコペニア肥満になると、転倒・骨折をはじめ、健康にさまざまな悪影響をおよぼしかねません。健康長寿を目指すためにも、また、最近ご両親の足もとに不安があるという方は介護予防のためにも、みなでサルコペニア肥満を防ぎましょう。

1. サルコペニア肥満を放置で要介護のリスクが高まる!?

「人生100年時代」といわれる昨今、サルコペニア肥満に注目が集まっています。前述したように、サルコペニアとは加齢に伴って筋肉量が減り、筋力が落ちて身体能力(歩行速度など)も低下した状態のこと。筋肉量が減ると、骨密度も低下して骨粗しょう症を引きおこす可能性があり、転倒して骨折し、寝たきりになるリスクも高くなります。また、サルコペニアと肥満が重なってサルコペニア肥満が進行すると、そのリスクはさらに高まるといわれています。

 

「筋肉の量は20代をピークに、30代以降は年に約1%ずつ減っていきます。つまり、ピーク時に比べて50代では20%、60代では30%も筋肉の量が減っているのです。筋肉量が減少すると基礎代謝も低下し、肥満が進みやすくなります。そのため、サルコペニア肥満は、サルコペニアによる転倒・骨折のリスクと、肥満による生活習慣病のリスクを併せ持った状態といえるでしょう。私たちの研究では、サルコペニア肥満を放置していると、単純な肥満より高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、命にかかわる心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが高くなり、寝たきりや要介護の状態になるリスクも格段に高くなることがわかっています」

 

そう話すのは、筑波大学大学院教授の久野譜也先生です。まずは以下のリストを使って、サルコペニア肥満のリスクを自己チェックしてみましょう。

 

<サルコペニア肥満チェックリスト>
肥満(BMI25以上)の人で、以下の項目で当てはまるものが多いほど、サルコぺニア肥満になる可能性が高くなります。

 

 

2. 50歳以降に「つまずきやすくなった」という人は要注意

筋肉量が減少する一方で、脂肪がつきやすくなるため、体型や体重の変化がわかりにくいのもサルコペニア肥満の特徴です。この点を踏まえて、久野先生は「50歳を過ぎたら筋力低下のサインを見逃さないことが大切」だといいます。

 

「サルコペニア肥満は60代から増えはじめますが、50代の人でも油断できません。40~50代の男性の約6割、女性の約3割が肥満です。この時期にからだを動かさず、太りやすくなった人は基礎代謝が低下し、60代以降に筋肉の減少が加速してサルコペニア肥満になるケースがとても多いのです。50代で、歩行時につまずきやすくなった、やせにくくなったという人は特に注意が必要です」

 

では、サルコペニア肥満を予防・改善するには、どうすればよいのでしょうか。有効だとされているのは、筋肉量を増やすための「筋トレ」です。とはいえ、運動を始めても、途中でやめてしまう人が多いのも事実。久野先生に、運動を習慣づけるためのコツについて聞いてみました。

 

「運動を始めたら、体組成計や体脂肪計を活用して、筋肉量や体脂肪の変化を記録することをおすすめします。適切な運動を続けているうちに『つまずきにくくなった』『階段を上っても息切れしなくなった』というように自分のからだの変化を感じられれば、継続する意欲も増すと思います」

3. 筋トレと有酸素運動を組み合わせれば、さらに効果的!

サルコペニア肥満を予防・改善するには、筋トレに余分な体脂肪を減らす「有酸素運動」を組み合わせると、より効果的です。以前は、有酸素運動で体脂肪を燃焼させるには20分以上運動を続けることが必要といわれていましたが、最近では、1回10 分程度の短い運動でも回数を重ねれば、体脂肪の燃焼量はほぼ変わらないとされています(下図参照)。

 

有酸素運動には、ジョギングやサイクリング、水泳などもありますが、いちばん手軽にできるのがウォーキングです。通勤や家事(買い物)などの際は、できるだけ歩くことを心がけましょう。

 

「健康長寿を目的にウォーキングをする場合、1日当たり8,000歩程度の歩数を歩くことが目安とされています。しかし、毎日この歩数を歩く必要はなく、5,000歩しか歩けなかった日があれば、別の日に3,000歩プラスして歩けば大丈夫です。『現状あまり歩いていない』という人は、今の歩数より1,000 歩増やすことを目標にスタートして、2,000歩、3,000歩と徐々に増やしていきましょう。体脂肪を燃焼させるには、軽く息が上がり、歩きながら会話ができる程度の速さで歩くと有効です」(久野先生)

 

ウォーキングについて詳しく知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。

ウォーキングで大事なのは「時間」よりも歩幅・スピード・コースの3つ!

4. サルコペニア肥満の予防にはたんぱく質も欠かせない

最後に、筋肉量を増やすためのもう1つのポイントをお伝えしましょう。それは、食事のとり方です。中高年になると食生活に気をつける人が増え、「健康のために肉を食べずに野菜を食べよう」と考えたり、食べる量を極端に減らすダイエットをくり返したりしている人も見られますが、それはNG! 無理な食事制限をすると確かに体重は落ちますが、一緒に筋肉量も減ってしまいます。筋肉量が減ると、ダイエットをしてもリバウンドしやすく、骨も弱くなってサルコペニア肥満になるリスクが高くなるので注意してください。

 

「いくら筋トレをしても、筋肉の材料になるたんぱく質を十分にとっていなければ筋肉量を増やすことは困難です。たんぱく質には動物性(肉・魚・卵・乳製品)と植物性(大豆製品・穀物など)がありますが、筋肉量を増やすためには動物性たんぱく質をしっかりとることが大切です」(久野先生)

 

食事をとるタイミングを意識すると、さらに効果的だと久野先生はいいます。たとえば、運動後30分以内にたんぱく質をとると、筋肉量を効率よく増やすことができ、食後に運動を行う場合は、10分程度の軽いウォーキングをすると、食後の血糖値の上昇を抑える効果が得られるとのこと。ぜひ意識してみてください。

5. まとめ

自分では気づきにくいサルコペニア肥満について解説しました。介護している両親が実はサルコペニア肥満…という可能性もあります。最近、見た目は変わらないのに、筋肉量が減ってきたかも? と思ったら、サルコペニア肥満かもしれません。

 

次回の記事では、自宅で手軽にできる「下半身の筋トレ」「上半身の筋トレ」、そして、忙しい家事の合間にできる「すきま筋トレ」を紹介します。家族で筋トレを習慣にしましょう。

6. 監修者プロフィールなど

久野譜也(くの・ しんや)
筑波大学大学院 人間総合科学学術院 教授。株式会社つくばウエルネスリサーチ代表取締役社長。


運動指導: 鶴園卓也(つるぞの・たくや)
株式会社つくばウエルネスリサーチ

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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