でき合いの食品の利用は手抜きと捉えられがちですが、在宅介護では頭を切り替えて、調理にかける手間と時間を軽減しましょう。主食と主菜だけは手作りし、スーパーやコンビニ、総菜店などの小パックの野菜料理や煮豆、そして冷凍食品やレトルト食品などを組み合わせれば、工夫次第で味の面でも栄養面でも十分に満足のいく食事ができます。名寄市立大学保健福祉学部栄養学科准教授で、在宅訪問管理栄養士として栄養指導を行うスペシャリストの中村育子先生が、冷凍食品やレトルト食品などの利点を生かした介護食作りについて解説します。
普通食が食べられる高齢者の場合、問題はあまりありませんが、口腔機能が低下して嚥下障害が起こってきた高齢者には、やわらかい食事やペースト状の食事などの介護食が必要となり、それらを用意するのは、非常に手間がかかります。
とくに高齢者夫婦の世帯で夫が介護者の場合は、調理経験のない人が多いため、介護負担はさらに大きくなってしまいます。介護する側が先に倒れてしまいかねません。
調理にかける時間や手間を減らすためには、市販の総菜や冷凍食品、レトルト食品などを積極的に活用することをお勧めします。種類も豊富で、味もよく、ちょっとした工夫で食べやすい食事にアレンジすることが可能です。
摂食嚥下障害が進行すると、適切な食事形態の介護食の調理はますます難しくなります。嚥下能力に合わせてそのまま食べられる介護食が市販されているので、無理をせずに、それらを利用してみましょう。糖尿病や腎臓病のある場合の治療食も同様です。
介護する人が料理にかける時間を減らすことができれば、介護負担の軽減になり、要介護者と介護者の良好な関係を維持できます。
日本の食文化である一汁三菜(主食のごはんに、主菜、副菜2品、汁物)は、バランスのよい食事の代表といわれます。その形を目指したいものですが、在宅介護の場合、日常的に手作りするのは難しいのが現状です。
そのまま食卓に出せる総菜、または冷凍食品、レトルト食品、缶詰類、フリーズドライ食品など、さまざまな市販品の利点を上手に生かして、低栄養を予防しましょう。例えば、摂食燕下障害がある場合でも、それらや冷凍弁当などがストックしてあれば、食べやすいかたさや形態に調整するだけで提供することができます。
また、ホワイトソースやミートソース、マーボーソースといった、とろみのついたソース類、やわらかく下ごしらえされた水煮野菜などの素材もあり、調理を負担に感じる人や、調理能力の低い高齢の介護者にも、積極的に利用してほしいものです。
冷凍食品やレトルト食品の利点
●加熱・加工されているため、温めるだけで、もしくはそのままで食べられる
●種類が多く、好みに合う味を選ぶことができ、食事に変化をつけられる
●上手に組み合わせれば1 食分のメニューを揃えることも可能
●別の材料と組み合わせれば、簡単にアレンジ料理ができる
●冷凍食品は1個単位または少量ずつ利用できるので無駄が出ない
●スーパーの安売り時や、インターネット販売などでまとめて買うこともでき、宅配を利用すれば買い物も楽
●長期に保存がきくので、常備しておけば、毎日買い物に出られない高齢者の食事づくりに役立つ
●常に一定量を置いておくようにすると、地震や水害、大雪などの大規模な自然災害の際にも安心
調理の手間を減らす1つの方法として、つくり置きがあります。高齢者のみの家庭では1食に消費する食材の量が少なく、材料を使いきるのも大変です。
そんな場合は、冷蔵庫にある肉・魚や野菜類をまとめてやわらかく煮込み、1食分ずつに小分けして、調味料でそれぞれの味に変化をつけてから冷蔵庫に保存しましょう。和風味、中華味、洋風コンソメ味など好みに合わせて味を変えることで同じ材料が続いても飽きのこない料理がつくれます。
その際、辛みや刺激の強い調味料はむせる原因になるので避けたほうがよいでしょう。特にとうがらし系は、のどへの刺激が強いので注意が必要です。
かけたり混ぜたりするだけの市販の合わせ調味料が多数出ているので、利用してみましょう。ポン酢しょうゆ、ごまだれ、焼き肉のたれ、カレーソース、トマトソースなど、簡単にバリエーションが広がるのでお勧めです。
単品を小分けにして毎日同じ物ばかり食べていると飽きるうえに、栄養も偏りがちになります。簡単なアレンジで工夫してみましょう。
●コロッケをアレンジ
・カットしてトマトやアボカドと合わせ、サラダに
・パンにはさんでコロッケサンドに
●鶏だんごをアレンジ
・甘辛味のあんと合わせて、くずした温泉卵を添える
・小さく切った大根やにんじん、白菜などと一緒に和風味の鍋仕立てに
・香ばしく焼いて、中華丼のもとをかける
●ポテトサラダをアレンジ
・ブロッコリーやツナ、ゆで卵などを加える
・耐熱容器に入れ、溶けるチーズを散らしてオーブントースターで焼く
高齢者用に、ほかの家族とは違う料理を毎日つくることは、介護者にとって大きな負担となります。そんなとき、市販の総菜や冷凍食品などを有効に使うことは、介護者の精神的な負担を減らすことにもつながります。でき合いの食材は強い味方ととらえ、有効活用しましょう。
次回は、噛む力、飲み込む力が落ちてきたときの「嚥下調整食」の作り方について解説します。
中村育子(なかむら・いくこ)
名寄市立大学保健福祉学部栄養学科准教授。管理栄養士、在宅訪問管理栄養士、介護支援専門員。静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府博士後期課程修了。医療法人社団福寿会慈英会病院在宅部栄養課課長。一般社団法人日本在宅栄養管理学会副理事長。在宅訪問管理栄養士の第一人者。『やわらかく、飲み込みやすい 高齢者の食事メニュー122』(ナツメ社)、『75歳からのラクラク1品栄養ごはん』(扶桑社ムック)など、著書多数。
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。