要介護の高齢者の多くは程度の違いはあれど、摂食嚥下機能の問題を抱えています。その場合、食べにくい食材を噛みやすく、飲み込みやすくするために、どれほど工夫して調理しても、噛んで飲み込むことが困難になってくるため、その人ごとの噛む力、飲み込む力に合わせた形態の食事(=嚥下食)づくりが必要になります。そこで今回も、名寄市大学保健福祉学部栄養学科准教授で、在宅訪問管理栄養士として栄養指導を行うスペシャリストの中村育子先生に解説していただきます。

1. 噛む力、飲み込む力を参考にした嚥下調整食


摂食嚥下に障害が出てきたといっても、その程度は一人ひとり違います。弱い力でも噛めるのか、歯ぐきや舌でつぶせる程度なのかなど、普段の食事の様子をよく観察し、その人に合った形態の食事(嚥下調整食)を用意するようにしましょう。


在宅での食事は、「ユニバーサルデザインフード(UDF)」「スマイルケア食」などの市販の介護食品の基準を参考に、「容易に噛める」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「噛まなくてよい」の4区分で調整していくとよいでしょう。

2. 嚥下調整食の作り方~主食編

 

嚥下調整食は、①容易に噛める、②歯ぐきでつぶせる、③舌でつぶせる、④噛まなくてよいの4つの区分に分けられます。基本の主食である、ごはんとパンの形態別の嚥下調整食の作り方を紹介します。

 

【ごはん(1人分)】

①容易に噛める

やわらかごはん(軟飯)の作り方
耐熱容器にごはん150gと水大さじ2を入れて、ラップをかける。電子レンジ(500W) で3分加熱し、さっと混ぜる。
*炊飯器の炊き上がリ時の中央部は軟飯なので、そのまま利用してもよい。

 

②歯ぐきでつぶせる
やわらかごはん~全がゆの作り方
ごはん茶碗1杯分と水50~100mLを小鍋に入れて弱火にかけ、水分がなくなるまで煮る。

 

③舌でつぶせる
つぶした全がゆの作り方
ごはん茶碗1杯分と水約100mLを小鍋に入れて弱火にかけ、水分がなくなるまで煮る。煮上がりをスプーンでつぶす。

 

④噛まなくてよい
ペースト状がゆの作り方
舌でつぶせるおかゆをフードプロセッサーやミキサーに入れて湯を20~40mL加え、なめらかにかくはんする。とろみ調整食品を小さじ1/3程度加え、適度にとろみをつける。

 

【パン(1人分)】

①容易に噛める
やわらかトーストの作り方
8枚切り食パン1枚の耳を切リ落とし、4等分に切る。トースターで2分ほど焼く。

 

②歯ぐきでつぶせる
パンがゆの作り方
6枚切り食パン1枚は食べやすい大きさにちぎって小鍋に入れ、牛乳50~100mLを加えて、弱めの中火にかけ、さっと煮る。

 

③舌でつぶせる
やわらかいパンがゆの作り方
6枚切り食パン1枚は細かくちぎって小鍋に入れ、牛乳150mLを加えて、弱めの中火にかけトロトロに煮る。

 

④噛まなくてよい
ペースト状パンがゆの作り方
舌でつぶせるパンがゆをフードプロセッサーやミキサーでなめらかにかくはんする。とろみ調整食品を小さじ1/3程度加え、適度にとろみをつける。

3. 市販の介護食を利用して介護負担を軽減

 

嚥下調整食の支度には手間がかかります。とくに、「噛まなくてよい」区分になると調理の手間に加えて、調理器具の後片づけも必要になり、毎食品数を揃えようとすれば、調理の負担は大きなものになります。

 

その場合は、レトルトや冷凍の介護食品を購入すれば、温めるだけで簡単に数品を整えることができます。家族が食べるごはんやパンをおかゆにするなど、主食だけは手作りし、主菜、副菜は市販品にするといった対処がよいでしょう。

 

市販の介護食品のペースト状の物は種類が少なく、飽きやすいのが問題です。食事形態が「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」レベル(やわらか食)まで回復すると、食べられる市販の介護食の品数が増えてきます。


さらに、食べやすいようにつぶしたり刻んだり、やわらかくなるように少々手を加えたりすれば、スーパーの総菜や普通食の冷凍・レトルト食品などを食べることも可能になるので、メニューに変化がつけられるようになります。

4. 「誤嚥の予防」が特に重要

 

飲み込む力が低下してくると、誤嚥(食べ物や飲み物が食道に送られずに気管に入ってしまう)を起こしやすく、誤嚥性肺炎の原因になります。

とくに汁物や飲み物、煮物など水分の多い物は誤嚥を起こしやすいので、とろみをつけてゆっくりとのどを通るようにするか、ゲル化剤などを使ってゼリー状に固めたものを提供するのが誤嚥の予防に効果的です。

 

とろみは普通食と同様、水溶きかたくり粉でもつけることができますが、とろみづけ用に加工された「とろみ調整食品」もあります。これらの食品は加熱が不要で、加えて混ぜるだけなので、カップに入れた水やお茶に入れてそのまま混ぜてもとろみがつきます。

 

とろみの強さは「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分類されていて、とろみ調整食品の使用量によって調整します。

適切なとろみの強さは人によって違います。基本的にはその人の飲み込みやすい強さにしますが、とろみを感じると嫌がる方の場合は薄めに調整します。また、あまり強いとろみをつけると、口腔内にべったりとくっついて飲み込みにくくなり、のどに詰まる危険があるため、注意が必要です。

 

その方に合った適切なとろみの強さは、医師や歯科医師、管理栄養士などに相談してください。また、歯科医師による嚥下調整食の指示のなかで、とろみの程度が指定されることもあります。

 

3段階のとろみ

薄いとろみ:スプーンを傾けると、すっと流れ落ちる

中間のとろみ:スプーンを傾けると、とろとろと流れる

濃いとろみ:スプーンを傾けても、形状がある程度保たれ流れにくい

 

出典:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2013」日摂食嚥下リハ会誌、 17(3):255-267、2013年

5. 飲み込みやすくなる「ゲル化剤」を利用しよう

ゲル化剤を使うとまとまりがよく、なめらかな食感でのどに残らず、最も飲み込みやすい形態になります。ゼリーを作るときによく用いるゼラチンや寒天は、冷やして固めますが、温かいまま固まるゲル化剤や、べたつかないおかゆゼリーができる、でんぷん分解酵素入りのゲル化剤などもあります。

 

水やお茶、ジュースなどの飲料やデザートは比較的作りやすいのですが、主食やおかず類はゲル化剤をミキサー食に混ぜる、あるいは混ぜてミキサーにかけるという手順になるため、手間がかかります。どのような場合にどう用いるかは、医師や管理栄養士に相談しましょう。

 

とろみ調整食品の使い方

①飲み物、汁物、ペースト状の食品などにとろみ調整食品を加え、すぐにかき混ぜる。混ぜる時間の目安は30秒ほど。

② 2~3分待つととろみの状態が安定する。

③とろみの状態や温度を必ず確認する。

*使用量などは、商品パッケージの表記に従ってください。とろみがつきにくい液体の場合は一度混ぜてから2~15分おき、再度30~60秒混ぜましょう。

6. まとめ

嚥下調整食の4つの区分に対して、それぞれ解説しました。噛む力や、飲み込む力が低下した高齢者の誤嚥を防ぐためには、正しい姿勢で食事をとることも大切です。

座位が保てる場合はできるだけ、椅子や車椅子に座って、テーブルで食事をするようにしましょう。椅子に座り、少し前かがみになるようにすると、自然と噛む力が強まり、誤嚥も起こしにくくなります。

7. 監修者プロフィール

中村育子(なかむら・いくこ)
名寄市立大学保健福祉学部栄養学科准教授。管理栄養士、在宅訪問管理栄養士、介護支援専門員。静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府博士後期課程修了。医療法人社団福寿会慈英会病院在宅部栄養課課長。一般社団法人日本在宅栄養管理学会副理事長。在宅訪問管理栄養士の第一人者。『やわらかく、飲み込みやすい 高齢者の食事メニュー122』(ナツメ社)、『75歳からのラクラク1品栄養ごはん』(扶桑社ムック)など、著書多数。

この記事の提供元
Author Image

著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

関連記事

シニアの体型とライフスタイルに寄りそう、 2つの万能パンツ

2022年7月23日

排泄介助の負担を軽減!排尿のタイミングがわかるモニタリング機器とは?

2022年9月23日

暮らしから臭い漏れをシャットアウト! 革新的ダストボックス

2022年9月5日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする