シニアと行きたい旅行プランをトラベルライターの間庭典子がご紹介! 博多からのアクセスも抜群の唐津や壱岐島、今話題の熊本、温泉王国・別府など、春の九州旅におすすめのアイデアをご提案します。
春におすすめなのは、気候が温暖で、食べ物が何でもおいしい九州への旅。県ごと街ごとに、それぞれ個性が際立っているのも魅力です。そして実はアクセスしやすいエリアがたくさんあるのです。そこで今回は、効率よく回りやすい旅行先をご提案します。
というのも九州は電車や地下鉄、路面電車などの公共交通機関が使いやすく、移動のストレスが少ない街が多いのです。福岡や宮崎などは、空港から街の中心地まで列車ですぐ。全国各地からのフライトがある福岡空港はJRの博多駅まで2駅で8分、にぎやかな繁華街・天神駅までもわずか5駅で到着。九州新幹線や魅力的な観光特急など、移動そのものが便利で楽しく、博多を拠点に周遊してみるのもいいですね。
写真上:福岡空港国内線ターミナルビル3階のラーメン滑走路には10件近くの店舗が並ぶ。
博多は言わずと知れたグルメの街。ビジネス街でもあるので、リーズナブルで機能的なホテルもすぐ見つかります。シニアとの旅ならば、まず到着してグルメを堪能し、翌日に次の目的地に移動するのもいいですね。もしくは最終日を博多の街で過ごし、おみやげを買うなど、ゆとりをもったスケジュールにすると安心です。
博多は港も街の中心部からすぐ。ベイサイドプレイス博多ふ頭までは天神駅から車で10分で、天神駅や博多駅からバスも運行しています。港には無料でのぼれる博多ポートタワーがあり、そこからは博多の街を360度展望できます。ショップやレストランはもちろん、水族館や天然温泉などもあり、地元の人々の憩いの場を楽しめます。
この港からは壱岐島の郷ノ浦港、芦辺港を結ぶ船も出ており、高速船だと最短65分です。壱岐は少し歩けば遺跡や古墳 に出会う古代遺跡の宝庫。神々が宿る島とも呼ばれ、島には150社以上の神社があります。干潮時のみ海のなかから参道が現れ、壱岐のモン・サン・ミッシェルの異名をもつ小島神社、伝統神事「壱岐大大神楽」が奉納される住吉神社、全国各地の月読神社の本宮である月読神社などのパワースポットが点在しています。
そして忘れてはいけないのが壱岐グルメ! 天然のアワビやウニが有名ですが、冬は寒ブリ、春は鯛、初夏からはイサキやイシダイなど1年を通じて海の幸を堪能できます。また年間900頭しか出荷されない幻の銘牛、壱岐牛もぜひご賞味あれ。海からのミネラルをたっぷりふくんだ牧草を食べ、伸び伸びと育った壱岐牛は柔らかく、上質な脂身は甘くて芳醇。島内の飲食店ではハンバーグやハンバーガーなどお手頃なメニューも提供していますよ。
また島の北西岸には療養規定値の約15倍という高濃度な湯本温泉郷もあります。宿泊せずとも日帰り入浴ができる施設、宿も多いので、ぜひこの黄金色に輝く温泉を体験してみましょう。体の芯から癒されます。
写真:壱岐には遺跡や古墳、由緒ある神社などが島中に点在する神様が住む島。
壱岐の帰りはちょっと気分を変えて、佐賀県唐津経由で戻るのもおすすめ。印通寺港からは佐賀県の唐津東港まで1時間40分で行くフェリーもあります。郷ノ浦港からはすこし離れているものの、壱岐島の違う表情も見られると思えば楽しいですよね。
城下町唐津は散策するのにちょうどいい規模。呼子(よぶこ)のイカや玉島川のツガニなど、名産も多く、佐賀牛も有名。唐津焼など器探しも楽しい街です。そして歴史好き、レトロ建築好きにもたまりません。なかでも東京駅を設計した辰野金吾による旧唐津銀行は必見! 薩長土肥の肥前国である佐賀県は明治維新にまつわる歴史遺産が多く、旧三菱合資会社や旧高取邸なども残っています。他にも戦国時代の戦場や日本で最初の稲作文化があったと魏志倭人伝に記載された遺跡など、時代ごとの見どころがあるのです。
博多駅までは電車で1本。タイミングがいいと乗り換えなしで、地下鉄空港線で福岡空港まで行けるというアクセスのよさ。移住先として唐津を選ぶ人が多いのもうなづけます。博多から壱岐、壱岐から唐津、そして福岡空港へのルートで、旅の幅が広がります。
写真上:夕陽が美しい唐津の浜。呼子のイカや旬の魚などの海産物も豊富。
唐津と同様に、移住者が最近増えて注目されているのが熊本です。2016年の熊本地震で倒壊した熊本城の改修工事も進み、街のシンボル、熊本城天守閣も2021年に完了しました。復興しようという活気にあふれ、こちらまでパワーを受け取り、元気になれそう。そしてもう一点、台湾の大手半導体メーカーTSMCの大規模な工場ができ、熊本の産業はさらに発展しそうです。この勢い、今こそ体感したいですね。
そんな活気ある熊本の街をアクティブに楽しもうという新感覚ホテル が2023年に開業したばかりのOMO5熊本 (おも) by星野リゾートです。旭川や札幌、大塚や京都など、全国各地に展開している星野リゾートのホテルブランドOMOは、テンションあがる「街ナカ」ホテル。街の中心地を拠点とし、城下町熊本をこよなく愛するスタッフとご近所さんがとっておきの楽しみ方をナビゲートしてくれます。フロントのある階には街滞在の拠点となるOMOベースが。朝ごはんも食べられるカフェやご近所の名店を紹介する「Go-KINJOマップ」がある誰でも立ち寄れるフリースペースです。「凸凹テラス」からは熊本城や城下町を見渡せます。
写真上:OMO5熊本の凸凹テラスからはライトアップされた熊本城を眺められる。
九州の温泉はパワフルで、黒川、阿蘇、雲仙、湯布院など個性豊かな温泉街がたくさんありますが、アクセスの良さなら別府がおすすめ。バスを乗り継ぎたどり着く温泉街が多いなかで、ターミナル駅から徒歩圏内という利便性は全国的にも珍しいはず。別府駅へは博多駅から特急ソニックで1本。駅前に公衆浴場、駅前高等温泉、宿も点在しているなど、駅から徒歩圏内で巡れる温泉街なのです。
駅から別府湾方面に進んだ北浜にある「界 別府 」のコンセプトは「ドラマティック温泉宿に逗留する宿」。全客室海を見下ろすピクチャーウィンドウからの眺めは、刻一刻と表情が変わり、朝焼けも見事! 畳をいかした和洋折衷なインテリアも心地よく、まさにラグジュアリーホテルと伝統的な旅館のいいとこ取り。心からくつろげます。
温泉に続く庭園などのパブリックスペースも見逃せません。水平線を眺めながらの絶景足湯、実験室をモチーフにしたラボでは温泉学をレクチャー。夕暮れ時の「湯の広場」では縁日のようににぎやかな夜店も開かれます。建築デザインは隈研吾氏。館内にいながら温泉街のにぎやかさにわくわくする、アイデアに満ちた空間なのです。
写真上:湯の広場ではスマートボールや型抜きなどの懐かしい遊びの夜店もオープン。
著者:間庭典子(まにわのりこ)
中央線沿線の築30年以上の一軒家に後期高齢者の両親と同居する50代独身フリーランス女子。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「mc Sister」編集者として勤務後、渡米。フリーライターとして独立し、女性誌など各メディアにNY情報を発信し、「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」(講談社)などを発行。2006年に帰国し、現在は日本を拠点に、旅、グルメ、インテリア、ウェルネスなど幅広いテーマの記事を各メディアへ発信。旅芸人並みのフットワークを売りとし、出張ついでに「研修旅行」と称したリサーチ取材や、さびれた沿線のローカル列車で進む各駅停車の旅を楽しむ。全国各地の肴を味わえる地元の居酒屋やスナックなどの名店を探すソロ活動も大好き。