有料老人ホームの入居にともない、必要となるのが「入居一時金」です。今回は、有料老人ホームの「入居一時金」についてご紹介します。

1. 有料老人ホームの入居一時金とは?

入居一時金とは、有料老人ホームに入居する際に支払う初期費用のことです。「家賃の前払い」という位置づけの費用で、入居年数に応じて月ごとに消費されます。

入居一時金の金額は、年齢や想定される居住期間によって異なるため、施設によって0円〜数千万円、中には数億円と開きがあるのが特徴です。

2. 入居金の初期償却と償却期間

入居一時金は、最初に支払う「初期償却分」と、その残りに分かれています。多くの有料老人ホームでは、入居一時金の10〜30%程度を「初期償却」として徴収しています。


また、支払った入居一時金が入居期間に応じて返還されるときに設定される期間を「償却期間」と呼び、5〜10年と定めているところが多いようです。

たとえば、入居一時金が600万円、初期償却が30%、償却期間5年(60ヵ月)の場合、初期償却される金額は「180万円」となります。計算式は以下の通りです。




そして、初期償却された残りの金額420万円(入居一時金600万円ー初期償却分180万円)が償却期間の5年(60ヵ月)分の家賃に償却されます。つまり、毎月償却される金額は、7万円です(420万円÷60ヵ月)。


なお、初期償却がない有料老人ホームの場合は、初期費用の全額を毎月一定額で償却したり、年単位で償却したりするなど、施設によって償却方法が異なります。償却期間や初期償却の有無は重要事項説明書に記載されていますので、契約前に必ず確認しておきましょう。

3. 途中で退去する場合、入居一時金は返金される?

繰り返しになりますが、入居一時金は一定期間の入居を想定した前払い家賃のことであり、想定居住期間を償却期間としています。そのため、償却期間が終わる前に退去する場合は、未償却分の家賃は返金されます(返還金といいます)。基本的に退去時の返還金は、施設側が設定する初期償却の割合(初期償却率)と年数によって算出されます。

先ほどのケースで、2年(24ヵ月)で退去した場合の返還金は、次の通りです。


・入居一時金:600万円
・初期償却:180万円(30%)
・償却期間:5年(60ヵ月)
・2年(24ヵ月)で償却された金額:168万円




初期償却の180万円と2年分の家賃に充てられた168万円の合計348万円は返却されないため、未償却分の252万円が返還金として戻ります。


なお、入居期間が長くなるほど退去時の返還金は減少していきます。償却期間が終了すると、返還金はありません。


◾️クーリングオフが適用できる

有料老人ホームでは、契約から90日以内の解約であれば、入居日数分の利用料などを引いた入居一時金の全額を返還してくれるクーリングオフ(短期解約特例)制度が適用されます。ただし、解約が90日を1日でも過ぎてしまうと、一部が返還されないことがあるので注意が必要です。


「入居一時金を支払って有料老人ホームに入居したが、希望に合わないため退去を検討する」という場合は、90日以内に決断することをおすすめします。


◾️保全措置

このほかに、2006年4月以降に開設された有料老人ホームには、入居一時金の保全措置を講じることが義務付けられています。


これは、万が一、ホームが倒産した場合に、入居一時金の未償却部分が返還されない場合、ホームに変わって銀行や損害保険会社、公益社団法人有料老人ホーム協会などが500万円を上限として未償却の金額を支払うという制度です。


ただし、2006年3月以前に開設された有料老人ホームには、保全措置が努力目標と位置付けられているため確認が必要です。保全措置については、施設の「重要事項説明書」に記載してあります。

4. 有料老人ホームの3つの支払い方法

最後に、有料老人ホームの支払い方法について触れておきます。有料老人ホームの支払い方法は、大きく分けて3種類あります。


①全額前払い方式

入居一時金を最初に全て支払い、その後は月額利用料を毎月支払うという支払い方法です。最初にまとまったお金を準備する必要がありますが、後々の支払いは楽になります。

②一部前払い方式

入居一時金の一部を前払いし、あとは残りの分を毎月上乗せして支払う方法です。

③月額費用払い方式

入居一時金と月額利用料を月割りで支払う方法です。


月額利用料は高くなりますが、特養などの入居待ちで一時的に入居する場合には、この支払い方法が利用しやすいでしょう。

 

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この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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