日々の介護の中でストレスをため込むと、ネガティブな感情がふくれ上がって、どんどん落ち込んでいったり、仕事や家事、介護作業などが手につかなくなったりしがちです。そんなときは、1日10分でもよいので、「瞑想」で心を整えてみましょう。瞑想によって一時的にストレスから離れると、精神状態が安定するだけでなく、集中力も高まりますよ!

1. ネガティブな思考や感情は、悪循環に陥る前にリセットするのが◎

 

ストレスを感じるような物事が起こったときや心配ごとができたとき、ネガティブな思考や感情にさいなまれて、逃れられなくなることはありませんか?

特に、物事を悪いほうに考えてしまうクセのある人は、ちょっとしたミスをしただけでも、「自分は何をやってもダメだ」などと思い込んで、不安や焦りを感じがちです。その結果、仕事や家事、介護作業などが手につかなくなって落ち込んだり、夜眠れなくなったりといった悪循環に陥ることも。そうなる前に、早めにリセットしましょう。

ネガティブな思考や感情をリセットするにあたって、ぜひ知っておいてほしいのが「ストレスは人生のスパイス」という言葉です。これは、カナダの生理学者であるハンス・セリエ博士の言葉で、適量のスパイスが料理をおいしくしてくれるように、適度なストレスは緊張感や能力を高めてくれるという意味です。

人は日常生活の中でさまざまなストレスを受けており、過剰なストレスは、心身の不調の原因になりかねません。しかし、ストレスにはよい効果もあり、その正体を知って上手に対処できれば、「やる気」を出すきっかけとなり、仕事や家事などの能率アップにつながったりもするのです。

2. ストレスに対処するには「1人で抱え込まないこと」

 

ストレスへの対処法としておすすめしたいのは、人と話したり、相談したりすることです。ストレスを感じたときに、1人で悩み、我慢して抱え込んでしまうと、前述のような負のスパイラルに陥りかねないので注意してください。

 

中には、悩みや不安を打ち明けることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、内面をさらけ出して話を聞いてもらうことは、自分自身を素直に受け止めることにもつながります。それによって、心もぐっと楽になるでしょう。

 

また、ストレスに対処するときは、ストレスに対して否定的になるのではなく、「この経験は後で必ず役に立つ」「大変だからやりがいがある」とプラス思考で向き合うことも大事です。プラス思考になると気持ちに余裕が生まれてくるので、ぜひ実践してみてください。

 

加えて、「原因から少し離れてみる」「問題の見方を変えてみる」など、状況に応じて対処することも大切です。

3. 1日10分程度の瞑想で頭の中を空っぽに

 

ストレスに対処する方法として、もう1つ紹介しておきたいのが「瞑想」です。瞑想=崇高で宗教的なものだと考えている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。瞑想において最も大事なのは、浮かんでくるさまざまな雑念をシャットアウトし、「今」に集中すること。それによって、よけいな感情や思考から離れることができ、一時的にストレスを断ち切れるはずです。

そういう意味で、瞑想は1日10分程度の気軽なストレス解消法だといえるでしょう。基本的なやり方は、次の通りです。

<瞑想のやり方>
①できるだけ落ち着く環境に身を置いて、座ってください。その際、無理に坐禅を組む必要はありません。脚を崩していても、いすに座っていてもOKです。
②目は完全に閉じず、うっすら開けておきます。
③親指と人差し指で輪を作ります。途中で眠ってしまった場合に、くっつけていた親指と人差し指が離れるので気づくことができます。
④おへその下にある「丹田(*)」という部位に意識を集中させ、少し遠くの床をぼーっと見ましょう。
⑤その状態で、ゆっくりと呼吸をくり返してください。

*丹田(たんでん)…へそより指3、4本分下がったところにあるツボのこと。ここに力を入れると、健康と勇気が得られるといわれています。

瞑想の間にさまざまな思いが浮かんだり、体がむずむずしてきたりすることがありますが、そんなときは、自分の呼吸に注意を向け直すようにしてください。最初はうまくいかないかもしれませんが、何度もくり返すうちに慣れてきます。その日のストレスをその日に解消するためにも、毎日寝る前に行うなどして、できるだけ習慣的に実践するとよいでしょう。

4. どこでもできて、ストレス耐性が向上するマインドフルネス瞑想

 

瞑想法にはいろいろな種類がありますが、近年、欧米の有力企業などで従業員の研修プログラムに採用され、ストレス軽減や集中力アップに役立つといわれているのが「マインドフルネス瞑想」です。

マインドフルネス瞑想というのは、「今ここに存在すること」だけを意識する瞑想技法で、緊張・うつ症状の改善やストレス耐性の向上、睡眠の質の改善など、さまざまな効果があることが科学的にも実証されています。また、長期間続けることで知覚・思考・推理・記憶といった脳の機能が向上する、という研究結果もあります。

マインドフルネス瞑想では、常に今の自分に意識を集中し、思考や感情が浮かんできても、それらを客観的に観察するように心がけます。どんな思考や感情も、ゆったりとした川を流れていくたくさんの葉っぱや、広い空を流れていく雲のようなもので、ただ眺めていれば過ぎ去ってしまうもの…。そう実感できれば、不安やイライラが減っていくはずです。

マインドフルネス瞑想を実践する際は、自分の深い呼吸に注意を向けることも大事です。息を吸うときは頭の中で「吸って」とつぶやき、吐くときには「吐いて」とつぶやく。そのときに「雑念を消す」とか「無になる」という必要はありません。自分の呼吸に集中し、思考の乱れを鎮めることで、「自分は悲しいんだな」とか「頑張っていて疲れているんだな」という気づきが無意識下で行われ、自分をより深くわかってあげられるようになるでしょう。

なお、マインドフルネス瞑想には座って行う瞑想だけでなく、食べる瞑想(食べ物の形や味や食感に注目し、五感をフルに活用してゆっくりと味わって食べる)、歩く瞑想(急がずに、一呼吸ごとに自分が何歩進んでいるのかを意識しながらゆっくりと歩く)などもあります。通勤やランチのときにもできるので、気軽にはじめてみましょう。

5. まとめ

 

満員電車内の迷惑なリュックサックやヘッドホンの音漏れなど、まわりのマナーの悪さに、ついイライラしてしまうことは、誰にでもあります。また、介護の日々の中で、やることに追われたり、家族とうまくいかなかったりしたときも、気持ちはネガティブになりがちです。それを考えると、ストレスは私たちが生きていくうえで、「避けては通れないもの」といえるのかもしれません。

しかし、ストレスをそのままにしておくと、それが新たなストレスを生む要因にもなりかねません。ちょっとしたことで怒りが爆発して人間関係を壊したり、トラブルを招いたりといった二次被害が出ることもあります。そうならないためにも、今回紹介したマインドフルネス瞑想を上手に取り入れて、心身の健康維持に努めましょう。

例えば、電車の中で不快な出来事に遭遇したら、静かに「吸って」「吐いて」を繰り返してみてください。それだけで、不思議と怒りが収まり、音漏れのシャカシャカ音や他人のおしゃべりも気にならなくなります。マインドフルネス瞑想は、寝る前に行うのもおすすめです。ぐっすりとよく眠れるようになり、翌日はすっきりと気持ちのよい朝を迎えられますよ。

6. 監修者プロフィール

山本晴義(やまもと・はるよし)
(独法)労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。神奈川産業保健総合支援センター相談員。1972年東北大学医学部卒業、91年横浜労災病院心療内科部長、98年より現職。専門は、心身医学、産業医学、健康教育学。日本医師会認定産業医、日本心療内科学会認定専門医・指導医、社会医学系専門医制度専門医・指導医、日本精神神経学会認定専門医、日本職業・災害 医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。心療内科医として、うつ病を含む勤労者のストレス病に関する啓発・予防・治療・リハビリに精力的に取り組んでいる。数多くの著作や講演を通じて、現代のストレス社会の中でも生き生きと過ごすためのヒントを伝授している。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『ドクター 山本のメール相談事例集』(労働調査会)など多数。

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護にあたるケアラーをサポートをするプラットフォームです。 シニアケアをスマートに。高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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