飲み込んだものが、食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」は、若い健康な人でも起こります。通常はせき込んだりして、すぐ体外へ排出されますが、高齢の場合は排出する力が弱いため、そのまま気管に入ってしまうことがあります。本人が誤嚥と気がつくことは難しく、そのまま放置してしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性もあるため、細心の注意が必要です。食事だけでなく、服薬時の工夫も知っておくことで誤嚥のリスクを軽減できるでしょう。

 

今回は誤嚥を防ぐ服薬の具体的な方法について、薬剤師として在宅療養を支援している、さいがケアファルマ合同会社代表の雜賀匡史さんに解説いただきます。また、誤嚥を引き起こしやすい薬と対処法についても紹介します。

1. 【日本人の死因第6位】誤嚥が引き起こす「誤嚥性肺炎」

食べ物や飲み物がなんらかの理由で誤って喉頭と気管に入ってしまう状態を「誤嚥(ごえん)」と呼びます。また、誤嚥によって肺に菌が侵入して引き起こされる肺炎を「誤嚥性肺炎」といい、令和4年の死亡数を死因別にみると、誤嚥性肺炎は悪性新生物(腫瘍)、心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎に次ぐ6位に位置します。

 

食べ物や飲み物は、通常は食道を通って胃に運ばれます。誤って気管に入ったとき、私たちは反射的に咳き込む(むせる)ことで異物を排出します。ところが加齢にともなって嚥下能力が低下し、嚥下反射が遅れることで反射的に咳き込むことができず肺まで異物が達してしまいます。(1)

 

食事のときや、服薬時には誤嚥性肺炎を引き起こさないよう注意しなければなりません。誤嚥のリスクを軽減するためにも、服薬の工夫を知っておくとよいでしょう。また、誤嚥は加齢による機能低下以外に、薬の副作用が原因で引き起こされることもあります。ここでは、誤嚥を防ぐ服薬のコツと、誤嚥を引き起こしやすい薬についてご紹介いたします。

【日本人の死因第6位】誤嚥が引き起こす「誤嚥性肺炎」

2. 誤嚥を防ぐ服薬の4つポイントとは

●服薬時の姿勢に注意

あごを上げることで気管(空気の通り道)に空気が入りやすくなります。あごを上げた状態で服薬すると空気だけでなく、薬や服用時の水も気管に入ってしまうので、食事中や服薬時はあごが上がっていないことを確認しましょう。介助する人が高い位置から服薬介助することや、本人が見上げるような位置にテレビなどがある場合に、あごが上がりやすいので注意しましょう。ベッド上で服薬する際は、ベッドが30度以上になるようにギャッジアップしましょう。

 

●その人にあった水(または白湯)を選ぶ

薬は水と一緒に服薬します。誤嚥しやすい人は、服薬時の水にも注意が必要です。食べ物や飲み物の粘度が増すと、嚥下反射に遅れが出やすい高齢者でも気管に入ることを防ぎやすくなります。誤嚥しやすい人は、服薬時の水にとろみ剤でとろみを付けるようにしましょう。

また、服薬補助ゼリーやオブラートなどに薬を包み込んで服薬することも効果的です。

 

●その人にあった薬の形態を選ぶ

服薬時の水にとろみ剤でとろみを付けても、適した薬の剤型でないと服薬できないことがあります。大きい錠剤やカプセルなどは口の中に残留しやすい剤型です。

 

嚥下機能の低下した人は、錠剤やカプセルから粉の薬に変更したり、溶かしてから服薬するなどの工夫が必要です。ただし、自己判断で薬をすりつぶして粉にすることは、有効性を失ったり副作用を招く危険性があります。飲み込みやすく工夫された口腔内崩壊錠(OD錠)やドライシロップの形態の薬は、水に溶けやすい製品ですので、これらを利用することもおすすめです。

 

どうしても内服薬が難しいときには、吸入薬、貼り薬、坐薬、注射などへの変更も検討する必要があります。薬の変更が可能かどうか、医師、薬剤師に相談してみましょう。

 

●胃食道逆流を防ぐ

服薬した後も胃食道逆流を起こさないように気を付ける必要があります。内服後2時間は横にならない。もし難しい場合は、30度の傾斜を保つ姿勢を維持することで、胃食道逆流を引き起こしにくくなります。

誤嚥を防ぐ服薬の4つポイントとは

3. 誤嚥を引き起こしやすい薬もあるので注意を

薬の中には嚥下障害を引き起こしやすいものが数多く存在しています。嚥下障害を引き起こしやすい代表的な薬としては、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、認知症治療薬などが挙げられます。これらの薬を飲んでいる人すべてに嚥下障害が起きるわけではありませんが、服薬中の人はより注意が必要です。(2)

 

薬剤性の嚥下障害は服薬してから1週間以内に発現することが多いので、新たに薬が追加になった時には、今までと状態が変わらないか、服薬時や服薬後の様子をよく観察しておきましょう。

誤嚥を引き起こしやすい薬もあるので注意を

4. まとめ

今回は、誤嚥を引き起こさない服薬のコツと、誤嚥を引き起こしやすい薬についてご紹介させていただきました。誤嚥している時に誤嚥に気づくことは非常に難しく、肺炎になって初めて誤嚥だったと気づくことも多いので、日頃からの注意が大切です。

 

服薬についての具体的なアドバイスは、かかりつけの薬剤師に相談してみましょう。服薬介助のコツや、飲みやすい薬への変更などを一緒に考えてもらえると思います。

 

参考文献

1)    厚生労働省 令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況

2)    野﨑 園子, 桂木 聡子 薬剤による摂食嚥下障害の実態調査と危険因子の分析-摂食嚥下認定看護師・臨床薬剤師と介護者の連携による早期発見と対応マニュアルに向けて-

5. 監修者のプロフィール

雜賀 匡史(さいが まさし)

さいがケアファルマ合同会社代表、薬剤師、認知症ケア専門士、介護支援専門員(ケアマネジャー)

大学院で修士課程を修了した後、臨床薬剤師について学ぶ為にカナダアルバータ大学に留学。その後、病院薬剤師や薬局で勤務するうちに、日々の薬剤師業務や在宅訪問活動(居宅療養支援)を通じて、生活を支える為には医療と介護の垣根を取り除いた総合的な支援が必要だと考えるようになる。それまでの「医学・薬学」的な視点に、「社会資源・ケア」という視点が加わったことによって、「医療を受ける為に、生活に我慢を強いる」のではなく、「充実した生活を送る為に、無理のない医療を提供する」ことを意識した支援活動を行っている。2020年9月には、一人でも多くの患者や利用者の支援を行うために医療・看護・介護の総合支援を行う、さいがケアファルマ合同会社を設立。現在は薬局業務、大学・薬剤師会・製薬企業・ケアマネジャー事業所等での講師など幅広い活動に従事している。

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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