介護施設や老人ホームへの入居費用を抑えられる補助金制度があることをご存知でしょうか? 補助金制度を利用すると、施設への支払いが減額されたり、還付を受けられたりするため、経済的な負担を軽減できます。

今回は、介護施設や老人ホームで使える補助金制度を紹介します。

1. 高額介護サービス費支給制度

高額介護サービス費支給制度は、利用者の自己負担を軽くするための代表的な制度です。

この制度は、介護サービスを利用した際の1ヶ月あたりの自己負担額が一定の上限額を超えたとき、申請すると「高額介護サービス費」として払い戻されるというものです。

【自己負担上限額】
対象となる世帯の所得に応じて、5段階の自己負担上限額が設定されています。

たとえば、生活保護を受給している人は1万5000円、課税所得380万(年収約770万円)未満の人がいる世帯は4万4400円までが上限額となります(くわしくは、こちら(厚生労働省)をご覧ください)。

なお、夫婦で施設に入居している場合や、夫婦のどちらか片方が介護サービスを利用している場合は、それらを合算して上限額が判断されます。

また、この制度では、施設に入居した場合の食費や居住費、介護保険の利用限度額を超えた費用は対象外となるので、注意しましょう。

制度を利用する際は、市区町村から送られてくる支給申請書の提出が必要になります。詳しくはお住まいの市区町村へご確認ください。

2. 高額介護合算療養費制度

同一世帯で1年間に支払った「医療費」と「介護保険サービス費」の自己負担額の合計が一定額を超えた場合に、所得に応じて自己負担額が減額される制度です。

対象期間:
毎年8月1日〜翌年7月31日までにかかった自己負担額
対象者:国民健康保険、後期高齢者医療・被用者保険の加入者

上限額については、こちらをご覧ください。

なお、制度を利用する際は、市区町村から送られてくる支給申請書の提出が必要になります。

市区町村によっては案内を送ってくれる場合もありますが、該当する期間中に引っ越しをした場合は、送付されない場合もあります。そのようなケースは、医療保険者や市町村の担当窓口に確認することをおすすめします。

3. 特定入所者介護サービス費(補足給付)

生活保護受給中の方や所得の低い方が介護保険施設に入所する際に、食費や居住費の減免を受けられる制度です。

補足給付を受けるには、世帯及び配偶者が市長村民税非課税・預貯金等の金額が基準以下である必要があります。

また、減免幅は世帯所得や預貯金額によって、4段階に分けられています

たとえば、特別養護老人ホームでの食費の基準額は1,445円/日ですが、第2段階の方は390円/日となります。居住費についても、特養の従来型個室は1日あたり1,668円が490円に軽減されます。

各段階の上限額は、こちら(利用者負担の軽減について)をご覧ください。

【対象となる施設】
補足給付の対象となるのは、以下の介護保険施設に入所、または短期利用する場合です。

●介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
●介護老人保健施設
●介護療養型医療施設
●介護医療院
●地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)
●短期入所生活介護(ショートステイ)
●短期入所療養介護(医療型ショートステイ)


負担額の減免を受けるには、市区町村の窓口に申請し、「介護保険負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。

預貯金などの資産状況の確認が必要になるので、申請する際は預金通帳などを持参するとスムーズです。

なお、認定期間は申請月の初日からになり、それ以前に遡ることはできません。初月から減免を受けるためにも、入所が決まったら、速やかに手続きを行いましょう。

4. 社会福祉法人等利用者負担軽減制度

社会福祉法人などの非営利法人が運営する特別養護老人ホームに入所した場合に、自己負担額が軽減される制度です。

市町村民税非課税かつ預貯金額が一定以下などの要件を満たす方が、対象になります。

なお、減額幅(*1)は、原則として介護サービス費や食費、居住費の利用者負担額の1/4(老齢福祉年金受給者は1/2)です。

制度の利用には、市区町村への申請が必要となります。「利用者負担軽減確認証」の交付を受け、施設へ提出するとそれ以降の請求額が減額されます。

ご自身が対象になるかわからない場合は、介護施設の相談員やケアマネジャーに確認しましょう。

*1 減額幅について
参考:北海道HP「社会福祉法人等による介護サービス利用者負担軽減事業について」

5. 自治体独自の補助金

紹介した制度のほかに、自治体独自で介護費用の一部を助成する制度が設けられている場合があります。

例えば、次の自治体では独自の助成制度を設けています。

川越市:対象となるサービスを利用したとき、収入に応じて負担額の1/2~1/4を助成(*2) 
大崎市:利用者負担額の25%(老齢福祉年金受給者は50%)を助成(*3) 
横浜市:特養や老健のユニット型個室の居住費を月額5,000円程度助成(*4) 

なお、助成制度の有無や内容は自治体によって異なります。

*2 参考:介護保険に係る利用者負担の助成制度
*3 参考:社会福祉法人等による利用者負担軽減制度、介護サービス利用者負担額助成認定について
*4 参考:介護サービス自己負担助成(横浜市独自制度)

6. さいごに

ご紹介したように、老人ホームに入所する際は、さまざまな補助金制度が利用できます。制度ごとに対象者や利用条件が異なるので、お住まいの市区町村に確認が必要です。

経済的な不安を軽減して施設に入所するためにも、補助金制度の活用をご検討ください。


監修者:中谷ミホ

この記事の提供元
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著者:倉元 せんり

福祉系大学を卒業後、急性期病院で医療ソーシャルワーカーとして勤務。現在は、フリーライターとして、福祉にまつわるさまざまな記事を執筆している。福祉制度や社会保障などの知識を分かりやすく伝えるのが得意。
保有資格:社会福祉士・ケアマネジャー

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