近年、介護と医療の両方のサービスを受けられる「ナーシングホーム」への注目が高まっています。本記事では、ナーシングホームの特徴やサービス内容、入居条件などを詳しく解説します。
ナーシングホームとは、介護と医療を一体的に提供する老人ホームのことです。一般的な老人ホームでは対応が難しい医療処置や緩和ケア、看取りといった専門的なケアを受けられるのが特徴です。
欧米では一般的な施設ですが、日本にはまだ法的な定義がありません。そのため、手厚い医療ケアを提供する有料老人ホームなどが「ナーシングホーム」と称され、運営されています。
◾️医療サービス
ナーシングホームでは、入居者に必要な医療行為が24時間体制で受けられます。対応するのは、施設に常駐する看護師または併設の訪問看護ステーションの看護師です。
併設の医療機関や訪問診療所とも提携しているので、医師の往診や体調が急変した際の対応も可能です。このため、入居者は安心して必要な医療サービスを受けることができます。
◾️介護サービス
介護スタッフが、入居者の日常生活をサポートします。食事や入浴、排せつなどの介助から移動の手助けまで、一人ひとりの状態に合わせたきめ細やかな介護サービスを提供しています。
◾️リハビリテーション
理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が、入居者の身体機能の維持・向上、機能回復を目的としたリハビリテーションを実施します。個別のプログラムで効果的にリハビリに取り組むことができます。
◾️生活支援サービス
食事の提供や洗濯、清掃といった日常生活に必要なサービスを受けられます。また、レクリエーションやイベントを開催し、入居者の楽しみや交流の機会を提供しています。
◾️終末期ケア
ナーシングホームでは、入居者が最期まで尊厳を持って暮らせるよう、終末期ケアにも力を入れています。医療スタッフと介護スタッフが連携し、入居者とその家族に寄り添いながら、適切なケアを行います。
◾️年齢
・主に65才以上(要介護認定を受けていれば65歳以下も可)
◾️要介護度
・自立
・要支援1・2
・要介護1〜5
◾️条件
・医療依存度の高い人 *1
・自宅での療養が難しい人
・重度障害がある人
ナーシングホームは、主に65歳以上で、自立の方から要介護5の方まで幅広い方の入居が可能です。
*1…医療依存度が高い人の例
たんの吸引や在宅酸素療法、人工肛門の処置といった医療行為が必要な人、末期がんやパーキンソン病で寝たきり状態の人、看取りの状態にある人
入居条件は施設によって異なるため、入居前に施設側に確認が必要です。
ナーシングホームを利用するには、入居時に支払う「入居一時金」と毎月支払う「月額利用料」「その他費用」の3種類の費用が必要になります。
ナーシングホームは昼夜問わず必要な医療ケアが受けられる体制が整っている分、費用面では一般の老人ホームよりも高い傾向にあります。
費用の目安は以下の通りです。
◾️入居一時金:0円~数百万円程度
◾️月額費用:10万円~35万円程度
内訳は次の通りです。
◾️その他の費用
・介護保険サービスの自己負担分(所得に応じて1〜3割)
・医療費
・おむつ代
・日用品費など
(1)病気が悪化しても転居せずに暮らせる
ナーシングホームは、一般的な老人ホームよりも医療や看護の体制が整っています。そのため、病気が悪化したり、要介護度が上がったりした場合でも他の施設に転居することなく、ホームでの暮らしを続けられることがメリットです。
終末期ケアや看取りに対応していることも多く「終の住処」としての役割を果たしています。
(2)必要な医療的ケアを受けられる
一般的な老人ホームでは対応が難しい、医療的ケアを受けられるのもメリットの1つです。
【ナーシングホームで受けられる医療的ケアの一例】
・たんの吸引
・経管栄養の管理
・在宅酸素
・尿留置カテーテルの管理
・人工肛門の管理
※医療的ケアの対応範囲は施設ごとに異なりますので、入居を検討する際は必要な医療的ケアが受けられるかを施設側に確認する必要があります。
(1)一般的な老人ホームより費用が高い傾向にある
ナーシングホームは医療体制が整っていることに加え、看護師の配置も手厚いことから、一般的な老人ホームより費用が高い傾向にあります。
そのため、入居を希望する場合は、入居費用が予算内におさまるかどうか確認が必要です。
(2)一般的な老人ホームより施設数が少ない
介護と医療が一体的に受けられるナーシングホームは、ニーズが高まっている一方で、施設数が少ないのが現状です。そのため、希望する地域で入居できる施設を見つけるのが難しい場合もあるでしょう。
監修者:中谷ミホ
イラスト:freepik ※トップ画面
著者:古賀優美子
北海道の2つの自治体で約15年間保健師として勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護支援専門員業務などを経験。その後、高齢者デイサービスセンターで5年間介護員として勤務。2021年4月から専業ライターとして活動を始め、主に介護福祉関連の記事を執筆する。