夫婦で老人ホームに入居することは、おふたりの絆を大切にしながら安心して暮らせる選択肢のひとつです。今回は、夫婦で入居できる老人ホームの種類、メリット・デメリット、注意点などについて解説します。

1. 夫婦ふたりで入居できる老人ホームとは?

夫婦で同時に老人ホームに入居するには、それぞれが個室に入る方法と夫婦で過ごせるふたり部屋に入る方法の2通りがあります。

 

しかし、老人ホームで、タイミングよく同時に2つの個室が空くことはまれであり、夫婦で入居する際は、ふたり部屋を利用するケースが一般的です。

そこでこの記事では、「ふたり部屋に入る」ことを想定して解説します。

2. 夫婦で入居可能なふたり部屋のある老人ホーム

 

夫婦で入居可能な2人部屋のある老人ホーム

 

なお、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)と認知症対応型グループホームは、2人部屋が少ない傾向にあります。

3. 夫婦ふたりで入居するメリット

(1)環境の変化が少ない
長年一緒に暮らしていた夫婦が別々に住むことは、生活に大きな変化をもたらします。高齢者はとくに環境変化の影響を受けやすく、不安や混乱など心身の不調につながりやすいといわれています。

 

新しい環境に適応するまで時間がかかり、また慣れ親しんだ生活リズムが崩れることで、ストレスを感じやすくなるのです。

 

一方、夫婦で同時に老人ホームに入居すれば、環境の変化によるストレスを最小限に抑えることが期待できます。すぐそばにいられる安心感が心身の安定につながるでしょう。

 

(2)費用を抑えられる
夫婦ふたりで個室を2室借りるよりも、ふたり部屋を1室借りる方が入居にかかる費用を抑えられます。

 

ただし、施設の利用料金は、サービス内容や立地、部屋のタイプなど施設ごとに異なるため、事前に確認が必要です。ご自身の予算に合った施設を選びましょう。

 

(3)子どもの介護負担が軽減される
夫婦で老人ホームに入居することで、介護が必要になった際の子どもなどのご家族の介護負担が軽減されるメリットもあります。

 

 特に夫婦両方が同時に介護が必要となった場合、子どもにかかる介護負担は非常に大きいものとなります。場合によっては、子どもが両親の介護のために仕事を離職して介護に専念する必要が出てくるかもしれません。

 

一方、夫婦で施設に入居すれば、自分たちの介護は施設のスタッフに任せられるため、子どもに介護の負担をかけることなく安心して暮らすことができます。

4. 夫婦ふたりで入居するデメリット

(1)同じ部屋にいることがストレスになる
夫婦で同じ部屋にいることが、ストレスになる場合もあります。

 

老人ホームのふたり部屋は、広くても40〜50㎡(平方メートル)ほどのコンパクトな空間です。24時間いつも顔を突き合わせるので、相手が気になり、些細なことでも喧嘩になりがちです。

 

また、親族は「夫婦は一緒が良い」と思っていても、入居する本人たちは別々に暮らしたいと考えている場合もあります。そのため、入居前に本人たちの希望をしっかりと確認することも大切です。

 

(2)住み替えの可能性がある
夫婦ふたりで入居した後、どちらかが入院したり亡くなったりした場合は、ふたり部屋を1人で使うことになります。そうなると、費用負担が大きくなるため、別の施設への住み替えが必要になる可能性があります。

 

夫婦で入居する場合は、どちらかが先に退去した際の対応について、入居前に家族間で話し合っておきましょう。

 

(3)元気な夫(妻)が、介護度の高い妻(夫)の世話を続けることになる
施設に入居すると、施設スタッフによるサポートが受けられますが、24時間ずっとそばにいてくれるわけではありません。そのため、施設に入居してからも、介護度が低い元気な方が、介護度の高い方を介護し続けなければならないこともあるようです。

 

食事や入浴、排せつの介助は、施設の介護サービスを利用できますが、スタッフを呼ぶほどでもない日常の世話は、結局そばにいる元気な方が担い続けることになるでしょう。

 

介護者の共倒れを防ぐことを最優先にするのであれば、夫婦別々の施設に入居する、あるいは介護が必要な方のみ入居することを検討しましょう。

5. 夫婦ふたりで入居を検討するときの注意点

(1)ふたり部屋がある施設の数が少ない
ふたり部屋のある施設は少ないため、希望に合う施設がすぐには見つからないかもしれません。時間をかけて探すか、希望条件を妥協して探すことになるでしょう。

 

また、ふたり部屋がある施設でも、空室状況によっては入居までに待機が必要となる可能性があります。待機期間中は、夫婦が別々の施設へ入居する、あるいは在宅介護の継続を検討することになるでしょう。

 

そのため、夫婦で同時に老人ホームに入居したいのであれば、早めの情報収集と申込みが重要です。介護が必要になる前から、いくつかの施設に見学に行き、申込みをしておくことをおすすめします。

 

(2)夫婦の介護度が異なると、同じ部屋に入れない可能性がある
施設によっては、適切な介護サービスを提供するために、入居者の介護度や認知症の程度でフロアを分けていることがあります。そのため、夫婦の介護度が大きく異なる場合は、同じ部屋に一緒に入居できないこともあります。

 

夫婦で一緒に暮らし続けるためには、お互いの介護度の変化も見据えて、柔軟に対応できる施設選びが大切だと言えるでしょう。

 

 監修者:中谷ミホ

 

イラスト:Freepik



この記事の提供元
Author Image

著者:古賀優美子

北海道の2つの自治体で約15年間保健師として勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護支援専門員業務などを経験。その後、高齢者デイサービスセンターで5年間介護員として勤務。2021年4月から専業ライターとして活動を始め、主に介護福祉関連の記事を執筆する。

関連記事

シニアの体型とライフスタイルに寄りそう、 2つの万能パンツ

2022年7月23日

排泄介助の負担を軽減!排尿のタイミングがわかるモニタリング機器とは?

2022年9月23日

暮らしから臭い漏れをシャットアウト! 革新的ダストボックス

2022年9月5日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする