介護老人保健施設は、在宅復帰を目標にリハビリを行う公的な介護保険施設です。この記事では、介護老人保健施設のサービス内容や入所条件、費用などを紹介します。
介護老人保健施設(通称:老健)は、介護保険施設のひとつです。老健の多くは、医療法人によって運営されています。
病気やけがで入院していた高齢者が退院後、すぐ自宅での生活に戻るのは難しい場合などに、一時的に入所し、在宅生活に復帰するためのリハビリテーションを受けられます。そのため、自宅と病院の中間的な施設ともいえます。
老健は、在宅復帰を目指す施設であるため、長期的な入所はできません。
入所期間は、原則3ヶ月と決められています。3ヶ月ごとに入所者の状態を見て、入所を継続するか退所するかを判定します。リハビリが必要だと判断されれば、入所期間を延長することも可能です。
なお、介護老人保健施設に入所中は、原則として医療保険を利用できないため、病院受診が認められない場合があります。
施設に常駐する医師の指示によって、薬の処方など一定の医療サービスを受けられるようになっています。
■リハビリテーション
介護老人保健施設は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による専門的なリハビリが行われるのが特徴です。在宅復帰を目指して、日常生活動作の訓練や、身体機能の維持・向上のためのリハビリを受けられます。
また、施設から在宅への移行にあたり、退所前にスタッフが自宅訪問をして、自宅で安全に過ごせるようにするための指導を受けられる場合があります。
■医療や看護サービス
介護老人保健施設には、医師や看護師、薬剤師などの医療職が常駐しているため、診察や投薬などの医療処置が受けられます。
■介護サービス
介護スタッフから食事や排せつ、入浴などの介護を24時間体制で受けられます。
■生活支援サービス
食事の提供や居室の掃除、レクリエーションなど、入所者が快適な生活を送るための生活支援サービスも整っています。
上記以外にも、老健を退所後にスムーズに在宅介護が始められるよう、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと連携して、施設から在宅への移行をサポートしてもらえます。
【人員配置基準】
・医師:1名以上
・看護・介護職員:入居者3人に対して1人以上(このうち看護師は7分の2程度)
・理学療法士、作業療法士または言語聴覚士:入居者100人に対していずれかの1人以上
・栄養士:1名以上
・支援相談員:1名以上
・介護支援専門員:1名以上
【設備基準】
・療養室:1室あたり定員4名以下(多床室の施設が多い)
・機能訓練室:入所定員×1㎡以上
・食堂:入所定員×2㎡以上
・廊下幅:1.8m以上
・浴室:身体の不自由な人が入浴するのに適したもの(車椅子の方が入浴できるように機械浴の設置など)
介護老人保健施設では、医師や看護師が常駐し、理学療法士や作業療法士といった医療職が手厚く配置されているのが特徴です。
また、特別養護老人ホームと同様に看護・介護職員は要介護者3名に対して1名以上の配置が義務付けられています。
介護老人保健施設は、65歳以上の要介護1〜5の高齢者で、病状が安定し、入院治療の必要がない方が入所対象です。40歳から64歳で、特定疾病により要介護認定を受けている人も入居が可能です。また、認知症の人や看取りに対応している施設もあります。
在宅で生活する人が介護老人保健施設に入所したい場合は、施設の「支援相談員」に連絡すると、入所の流れや申し込み方法について教えてもらえます。
病院を退院後、すぐに老健へ入所したい人は、入院先の病院の医療ソーシャルワーカーに相談すると良いでしょう。
なお、入所の際には、施設利用申込書、介護保険被保険者証、医療被保険者証、医師の紹介状などが必要です。
介護老人保健施設は、介護保険施設のため、入居一時金のような前払い金は不要です。
支払うのは月額費用のみであり、費用の目安は5〜15万円程度です。介護サービス費や食費、居住費などがかかります。
所得の少ない方には、軽減制度も用意されているので、支払いに不安ある場合は、支援相談員に相談しましょう。
著者:倉元 せんり
福祉系大学を卒業後、急性期病院で医療ソーシャルワーカーとして勤務。現在は、フリーライターとして、福祉にまつわるさまざまな記事を執筆している。福祉制度や社会保障などの知識を分かりやすく伝えるのが得意。
保有資格:社会福祉士・ケアマネジャー