2025年には、65歳以上の5人に1人がなると推計されている認知症。予備群である軽度認知障害(MCI)は、早い人だと40代から始まるといわれています。高齢者はもちろん、ケアラー自身も認知症を発症・進行させないために、まずはMCIの前段階「プレMCI」に気づいて予防に取り組むことが大切です。
「会議で固有名詞が出てこない」「仕事の段取りで戸惑うことがふえてきた」…。
この「もの忘れ」が加齢によるものなのか、認知症によるものなのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。
そもそも認知症は病気ではなく、「症候群」を表現する言葉です。まずは簡単に、認知症の種類と特徴についてみていきましょう。
●アルツハイマー型認知症
日本人でもっとも多く、全体の60%程度を占める認知症です。アミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が、神経細胞のまわりに蓄積することによって発症します。病気が進行すると日常生活を正常に送ることが困難に。最終的には寝たきりになってしまうこともあります。
●脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で、脳のいろいろな部位に障害が起こります。障害を受けた部位によって症状は異なりますが、意欲が低下したり、生活態度がだらしなくなったり、感情の起伏が大きくなったりするのが特徴。全体の20%程度を占めます。
●レビー小体型認知症
レビー小体とは、特殊なたんぱく質が脳の神経細胞内に蓄積したものです。これが大脳皮質や脳幹でふえることにより、神経細胞が壊れ、認知症の症状が現れます。早い段階から、幻視や便秘などの自律神経失調症状が現れるのが特徴です。男性に多いといわれ、全体の20%程度を占めます。
●前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮し、血流が低下することが原因で起こる認知症です。前頭葉は思考や感情の表現、判断を司り、側頭葉は言葉の理解、記憶、感情をコントロールしています。そのため暴力的になったり、万引きをしたり、人格や行動に変化が起こるのが特徴です。65歳未満に発症することが多く、全体の2〜3%を占めます。
すべての認知症に共通するのは、脳の神経細胞が壊れて、脳が萎縮すること。細胞が壊れる原因によって病名が変わり、症状が異なります。また、2つの病気が合併する混合型タイプもあります。
認知症は、発症するまでに20~25年かかるといわれていますが、発症すると完治が難しいため、まずは発症させないことが重要です。発症する前段階であるMCIは、早い人では40代から始まり、この段階であれば適切な予防や治療を行うことで、進行を抑えられる可能性があることがわかっています。
さらに、MCIの前段階である「プレMCI」に気づいてケアすることができれば、より認知症の予防につながります。認知症を発症させないためにも、まずは次のリストでプレMCIかどうかを家族でチェックしてみましょう。
プレMCIチェックリスト
⬜︎ メンタルの不調を感じやすい(気分が沈む、集中力・注意力がつづかない)
⬜︎ もの忘れがふえている自覚がある
⬜︎ 仕事でなんでもない凡ミスをする
⬜︎ 探しものがふえている(いつもの場所に探しものがない)
⬜︎ 疲れやすい、気がつくと居眠りをしている
⬜︎ 一度にいろいろなことをいわれると、戸惑ったり頭が真っ白になる
⬜︎ 同じ人に無意識にくり返し同じ話をしたり尋ねたりする
⬜︎ 話しはじめの言葉が聞き取れずに聞き返すことがふえている
⬜︎ 嗅覚がなんとなく衰えている感じがする
⬜︎ 慣れていることなのになんとなく違和感があり、なじみ感覚が薄くなっている
10項目中5項目が当てはまれば、プレMCIの可能性があります。認知症は食生活の乱れや運動不足、喫煙などにより脳への血流が悪くなり、老廃物がたまって脳が萎縮することで発症します。認知症の過程に進まないために、日常生活、生活習慣、食生活を見直すことから始めましょう。
日本人でもっとも多いアルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が脳に蓄積し、脳の細胞が壊れて萎縮することで起こると考えられています。アミロイドβは脳内に生じる老廃物。健康な人でも毎日たまっては排出されることをくり返している物質で、問題なのは排出されずにどんどんたまっていくことです。
たとえば、ハードな仕事を徹夜でつづけたとき、脳の状態をみるとアミロイドβがうっすらとたまっています。しかし、そのあとゆっくり休むとアミロイドβは消えています。これは、ラットを使った実験で確認されたことで、眠らずに働きつづけたラットの脳にアミロイドβのシミができたものの、睡眠後にはシミが消えることがわかりました。
人間の場合も、眠っている間に新陳代謝が進み、細胞が新しく生まれ変わるため、睡眠をとることでアミロイドβが排出されると考えられています。逆に、睡眠の質が悪いと、アミロイドβが蓄積してしまいます。つまり、認知症予防のカギを握るのは、良質な睡眠なのです。
では、良質な睡眠をとるために、どんなことに気をつければよいのでしょうか。
睡眠には、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)があり、およそ90分ごとにくり返しています。新陳代謝を促す成長ホルモンは睡眠中に分泌され、とくに眠りはじめの深いノンレム睡眠のときに多く分泌されます。
1日にたまったアミロイドβを排出するには、最低でも5時間以上の睡眠が必要です。認知症予防のためにも仕事の効率アップのためにも、以下のポイントを参照にしながら良質な睡眠を心がけましょう。
睡眠の質を上げるポイント
①朝の光を浴びる
朝の光を浴びてから約15時間後に、眠りを誘発するメラトニンが分泌されます。たとえば朝7時に光を浴びると、夜10時に自然と眠くなります。
②日中にからだを動かす
日中に運動したり、仕事で頭を使ったりすると、自律神経のバランスを調節する機能が向上し、眠りにつきやすくなります。
③入浴でからだを温める
夜は38度のぬるめのお湯なら25~30分、41~2度の熱めのお湯なら5分程度、湯船につかる習慣をもちましょう。
④スマホは就寝2時間前まで
スマホの画面から出るブルーライトは脳を覚醒させます。就寝の2時間前からスマホは見ないようにしましょう。
認知症予防でもっとも大切なのは、発症させないことです。認知症の前段階であるMCI、さらにMCIの前段階であるプレMCIになる前に、規則正しく健康的な生活を心がけて良質な睡眠をとれば、予防することは可能なのです。ぜひこれを機に、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
次回は、介護する家族に認知症の疑いがあるとき、受診の方法や検査内容、治療法について解説します。
広川慶裕(ひろかわ よしひろ)
ひろかわクリニック院長(京都府)。京都大学医学部卒、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。精神科医として認知症やうつ病などの精神疾患治療を数多く行い、2014年に認知症・認知症予防/働くひとのメンタルヘルスに特化したクリニックを開院。開院当初より「認知症は生活習慣病の終着駅」「認知症は40代から予防」を提唱し、認知症予防トレーニング「認トレ®」を考案。ひとりでも多くの人が認知症から遠ざかった楽しい生活がおくれるよう、著作や講演会など精力的に活動中。
https://j-mci.com/
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。