認知症予防に有効とされる方法の一つが、バランスのよい食生活。脳の働きを高める栄養素を意識的に摂取し、脳の血流量をふやすためによく噛むことが大切です。また、日本人に多いアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというたんぱく質が脳に蓄積することが原因。アミロイドβの蓄積を防ぐ食事の仕方についても紹介します。

1. バランスのよい食事で脳機能を高めよう!

認知症の予防・改善に大切な食事。栄養バランスのよい食事をすることで、新鮮な血液が脳に送られ、酸素が供給されると、脳から老廃物が排出されやすくなります。

 

そこで、脳の働きを高めるために積極的にとりたいのが、たんぱく質、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸、中鎖脂肪酸、ビタミンC、アントシアニン(ポリフェノール)など。一つひとつの栄養素について詳しくみていきましょう。

 

たんぱく質は新陳代謝をよくし、脳とからだを若々しく保ってくれます。肉、魚、卵、大豆などに含まれ、とくに青背魚はたんぱく質のほかにもEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸が豊富。EPAは血流の改善、DHAは脳の活性化を促すといわれ、認知症予防に効果があるとされています。

 

高齢者にふえている「フレイル(虚弱を意味する)」は、筋肉量が少なくなり、歩いたり姿勢を保ったりといった基本動作が十分にできなくなる状態です。フレイルで活動量が減ることが原因で認知症を招くこともあるため、筋肉の元となるたんぱく質は重要な栄養素です。

 

油の選び方にもポイントが。オリーブ油やえごま油は、血流改善の作用が期待できます。そして、近年、アルツハイマー型認知症に対する効果が注目されているのが、MCTオイル(中鎖脂肪酸)。ココナッツ油やパーム油などに含まれ、非常に吸収されやすいという特徴があります。このオイルを寝る前にスプーン1杯飲むと、睡眠中の脳に必要なエネルギーが供給され、蓄積した老廃物を排出する効果が期待できるそうです。

 

さらに、脳を活性化するためのエネルギー生成に必要なビタミンC(レモンやピーマンなど)、脳の血流を改善するアントシアニン(ブルーベリーなど)も意識してとるとよいでしょう。

バランスのよい食事で脳機能を高めよう!

2. ひと口「30回」噛んで脳の血流アップ

食事の仕方にも、認知症を予防するコツがあります。

 

そもそも認知機能を維持するには、脳の血流をよくし、神経細胞を活性化することが不可欠。ウオーキングなどの有酸素運動が有効なのはもちろんですが、よく噛むことでも脳の神経が活性化され、血流量がふえることがわかっているのです。

 

日本顎咬合学会によると、「食べ物を1回噛むごとに0.35mLの血流が脳に送られる」とのこと。歯と骨の間にある「歯根膜」というクッションのような弾力のある膜が、一度噛むごとに約0.03mm沈み、沈み込んだときのほんのわずかな圧力で血管を圧迫します。そのポンプの働きで、脳に血液が送られるのです。

 

そこで意識したいのは、ひと口に対して30回噛むこと! よく噛むことを習慣にすれば早食いを防ぐことができ、血糖値の急激な上昇も抑えられます。血糖値が高い状態がつづくと脳の血管に動脈硬化がおこり、脳が必要とする酸素や栄養が届かなくなるため、アルツハイマー型認知症の原因でもあるアミロイドβもたまりやすい状態に。よく噛むことは、認知症予防として根拠のある方法といえます。

 

30回噛むのが難しい人は、ひと口食べるごとに箸を置いてみるとよいでしょう。また、食事のとき以外にガムを噛むことでも脳の血流がよくなり、脳を活性化する効果が期待できます。たくさん噛んで脳に血液を送ることが、認知症の予防につながります。

ひと口「30回」噛んで脳の血流アップ

3. アミロイドβの蓄積を防ぐ食べ方とは?

日本人に多いアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることが発症の原因。血糖値が高い状態がつづくとアミロイドβの分解が滞ってしまい、脳にたまりやすくなるといわれています。つまり、認知症予防のためには、血糖値を上げないことも大切なのです。

 

食後の血糖値の急上昇(食後高血糖)を招く一番の問題は、糖質のとりすぎ。血糖値が高い血液はドロドロしているので、脳に血流が送られにくくなってしまいます。血液の粘度が高いと血管の壁を傷つけてしまい、動脈硬化をおこして心筋梗塞や脳卒中を招く原因にも。余分な糖質は中性脂肪となって体内に蓄えられ、肥満の原因にもなりますから、体全体の健康のためにも食後高血糖を防ぐポイントを押さえておきましょう。

 

【食後高血糖を防ぐポイント】

 

①糖質を減らす

認知症予防には「1日の糖質摂取量を100gを目安にすること」が推奨されています。ごはんの場合、茶わん小盛り1杯(100g)で糖質37.1gです。糖質はごはん、パン、麺類のほか菓子類などにも含まれるので、1日の摂取量を調整しましょう。

 

②よく噛んでゆっくり食べる

ごはんなどを早食いすると糖質が一気に吸収され、血糖値が急上昇します。よく噛んで、なるべくゆっくり食べるようにしましょう。

 

③野菜から食べる

最初に食物繊維を含む野菜、海藻類、きのこ類を食べましょう。そのあとにたんぱく質、最後に糖質の順に食べると糖質の吸収が抑えられ、血糖値の急上昇を防ぎます。

 

④食後に軽い運動をする

ランチは遠い店に歩いて行く、夕食の後に散歩するなど、食後に運動を組み込むのが効果的です。ラジオ体操や腹筋などの筋トレもおすすめなので、取り入れてみましょう。

アミロイドβの蓄積を防ぐ食べ方とは?

4. 糖尿病の人は特に注意が必要

最後に言及しておきたいのは、「糖尿病の人は認知症になりやすい」ということ。実は、糖尿病の人はアミロイドβがたまりやすいことがわかっているのです。

 

誰でも食事をすると血糖値が上がりますが、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって徐々に下がっていきます。使用済みのインスリンはインスリン分解酵素の働きで分解され、インスリン分解酵素はアミロイドβも分解。ところが糖尿病の人の場合、このインスリンが十分に働きません。そのため血糖値が高い状態がつづき、インスリンの分解に手いっぱいになってしまって、アミロイドβの分解が滞るのです。

 

糖尿病は多くの合併症を起こすことで知られていますが、認知症との関係も深い病気。栄養バランスを整え、血糖値を上げない食生活をより心がけるようにしましょう。

糖尿病の人は特に注意が必要

5. まとめ

日々の食生活を変えるだけで、認知症を予防できる確率はグッと上がります。①脳機能を高める栄養素を意識的にとる、②ひと口30回噛む、③血糖値を上げないよう心がける。この3つを押さえて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

次回は、認知症予防の刺激編について紹介します。

まとめ

6. 監修者のプロフィール

広川慶裕(ひろかわ よしひろ)

ひろかわクリニック院長(京都府)。京都大学医学部卒、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。精神科医として認知症やうつ病などの精神疾患治療を数多く行い、2014年に認知症・認知症予防/働くひとのメンタルヘルスに特化したクリニックを開院。開院当初より「認知症は生活習慣病の終着駅」「認知症は40代から予防」を提唱し、認知症予防トレーニング「認トレ®」を考案。ひとりでも多くの人が認知症から遠ざかった楽しい生活がおくれるよう、著作や講演会など精力的に活動中。
https://j-mci.com/



この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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