脳は刺激が大好き! ということをご存じですか? 新しいことを始めると、脳は活発に活動し始め、認知症予防にもつながります。いつもと違う道を歩いたり、以前から気になっていた趣味を始めたり、もちろん運動をしてからだを動かすのもOK。家族みんなで、日常のさまざまな場面で刺激を与え、脳を常に活性化させましょう。
脳には、「飽きっぽくて新しいことが好き」という特徴があります。新しいことを始めると、脳は一気に活性化。認知症予防に向けて脳のパフォーマンスを上げるために、刺激を与え続けることが大切です。
ただし、新しいことを始めるには「安心感」と「楽しさ」もポイントになります。斬新すぎたり、まったく知らないことをいきなり始めると、好奇心よりも不安や危険を感じる気持ちが強くなってしまい、本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまうのです。まずは、いつもの日常生活の中から少しずつ変化を加え、脳に刺激を与えてみましょう。
例えば、駅やスーパーまでの道のりを、いつもとちょっと違うルートに。完全に知らないルートではなく、よく通る道から1本脇に入ってみたり、少しだけ遠回りをしてみます。新聞をいつもとは違うページから読む、今日誰とも話していないと思ったら誰かに電話するというのもおすすめ。不安や危険を感じない程度の刺激を心がけるとよいでしょう。
また、仕事の場面では作業の手順を変えたり、新しいやり方を取り入れたりすることで脳は新鮮さを覚え、刺激を感じることができます。毎日をルーティンワークで回さずに、ちょっとした変化を取り入れるのです。
そうした変化で楽しさや喜びを認識すると、脳内の報酬系と呼ばれる神経ネットワークに「ドパミン」という神経伝達質が放出され、活力ややる気の源になります。
日々の生活の変化にだんだんと慣れてきたら、以前から気になっていた趣味を始めるなど、もう少し活動範囲を広げてみては? 一度起こした変化を惰性で続けず、自分が「好きだな」「楽しいな」と感じられることをどんどん取り入れていくことが大切です。
脳に刺激を与える方法として、運動も有効です。運動不足で全身の血流が悪くなると脳にも十分な血液が流れなくなり、認知症を招く要因に。適度な運動は血管を広げて血流を促し、脳内ホルモンや神経伝達物質といった、認知症予防に効果のある物質の分泌が促されることがわかっています。
とくに、有酸素運動は全身の血流がよくなり、脳への血流も促すのに有効。認知症でもっとも多いアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβが蓄積することで発症しますが、血流がよくなると、脳の神経細胞が活性化して蓄積がおこりにくくなるといわれています。また、運動により血流がよくなると、血管の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が分泌され、血管が広がってやわらかくなるため動脈硬化の予防にもつながるのです。
有酸素運動にはウォーキングや水泳などがありますが、とくにおすすめなのが歩く程度のスピードで歩幅を小さく小刻みに足を動かすスローペースのジョギング。ポイントは「疲れないこと」で、ウォーキングよりも運動効果が高いとされています。
さらに、有酸素運動とともに筋トレも行うと、認知症予防効果が高まります。筋トレをすると筋線維が壊れ、それを修復しながら筋肉が増えていくのですが、近年、筋線維が大きくなる過程で「マイオカイン」という物質が出てくることがわかりました。
マイオカインは神経成長因子を刺激して、記憶力を高めます。そのため、筋トレではお尻や太ももなどの大きな筋肉を鍛えるのがより有効です。下半身を鍛えるスクワットなどを行いましょう。1日30分が目標です。
生活習慣の変化や運動に加え、脳に刺激を与えるには知的活動を続けることも推奨されています。それを裏付けたのが「ナン・スタディ」と呼ばれる認知症の大規模調査です。
この調査は1986年に行われました。米国の修道女678人を対象に認知テストや面談を行い、死後には脳を解剖するという内容です。調査開始時はCTやMRIなどの画像検査が発展途上だったため、脳の変化を見るには解剖が必要な時代。調査開始時の修道女の年齢は75~106歳で、死後の解剖では脳にアルツハイマーの病変がありながら、認知症にならなかった人が12%いました。
中でも注目されたのは、修道女メアリーの調査結果。彼女は101歳で亡くなるまで、認知テストは優秀な成績で、積極的な奉仕活動をつづけ、コミュニケーションにも問題ありませんでした。しかし解剖の結果、脳にはアミロイドβが蓄積し、萎縮している部位がある状態だったのです。
彼女の脳の血管は健康で動脈硬化や脳梗塞はない一方で、逆に脳の萎縮が軽度でも脳梗塞をおこした痕跡がある人は認知症を発症していました。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると、血管が傷ついて動脈硬化をおこし、心筋梗塞や脳梗塞を招きます。脳にアミロイドβが蓄積しても、生活習慣病にならずに脳梗塞を起こさなければ、認知症のリスクが下がるという事実が解明されたのです。
修道女メアリーの場合、積極的な奉仕活動やコミュニケーションをとり続けるといった「知的な生活」を送ったことが、常に脳を刺激していたと考えられています。
どんな人でも年齢とともに脳は萎縮するもの。しかし、外からの刺激により機能の低下をカバーする力があり、脳を積極的に使うことで退化を防いで強化できるのです。
いつもの生活に変化を与えたり、運動したり、人との関わりを持ち続けたり。脳に常に刺激を与え、混乱させることが認知症予防につながるというのは、とても心強い事実ですよね。
次回は、家族みんなでできる認知症予防メソッドについて紹介します。
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。