皆さんは、「国際介護士」をご存じですか? 聞きなれないこの名前、初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。今回はこの「国際介護士」について、どのような資格なのか、介護福祉士とは何が違うのか、一般社団法人国際介護士協会代表の上地智枝さんにその成り立ちと現在、そして今後についてお話を聞きました。

1. 「国際介護士」とはどんな資格?

はじめまして。介護福祉士の上地智枝と申します。私は現在、介護教育事業を展開する株式会社Takaraful代表取締役として、中国や台湾、インドネシアなどのアジア各国で日本の介護技術や介護知識を伝える「国際介護士」の普及・育成に取り組んでいます。

 

国際介護士とは、私が設立した一般社団法人国際介護士協会が認定する民間資格で、社会福祉士や介護福祉士といった公的な資格ではありません。介護福祉士の新しい働き方の一つとして、日本式の「介護」を、海外で必要としている地域に伝える人材に与えられる資格です。単なる日本式介護の輸出ではなく、日本式介護の長所と根拠を示しながら現地の文化や価値観を融合させ、その国独自の介護の在り方を、現地の人と一緒に作りあげるアドバイザー的な役割を担います。

 

そもそも、私がこのような活動をするようになったきっかけをお話ししましょう。

 

学生のころから世界の環境汚染に関心があった私は、得意の化学分野で環境問題の解決に携わりたいと考え、化学系の専門学校に入学。卒業後は、医薬品卸会社や研究補助員として従事しましたが、アレルギーなどの症状に悩まされ体調をくずし、希望だった職をやむなく退職することになりました。

 

仕事をやめ、目標を見失っていたそんな時。ひょんなことからホームヘルパー2級の資格を取り、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームに入職することになりました。最初は、やはり仕事を覚えるのに必死で、先輩職員のおむつ交換のスピードの速さと手際の良さに驚き、自分もそうなりたいと考えていました。人材不足で忙しい介護の現場をスムースに回すためにはどうしたらいいか、そんなことばかりをやりがいにしていた気がします。

 

写真:国際介護士の働き方講演

「国際介護士」とはどんな資格?

2. 点ではなく線でとらえる「おもてなしの介護」

しかし、そうした考えも少しずつ変わっていきました。その一つのきっかけは、初めて経験した「看取り」でした。施設の利用者が亡くなられた時、「これでよかったのだろうか」「もっと自分がしてあげられることがあったのではないか」と感じたのです。ご本人が何をしたいとか、何かを食べたいとおっしゃった時、ただ「できない」で済ましていなかったか。できることは限られていたかもしれないけれど、何かやってあげられたことはなかっただろうかと強く思ったのです。

 

この経験から、介護の仕事というのは、その方が長年歩んできた「人生の最期」に寄り添う仕事なのだということをあらためて思いました。もちろん、福祉に携わった時からその自覚は持ってはいましたが、私にもっと技術と知識、そしてもっと寄り添う力があれば、その方の希望をなんらかの形で叶えられたかもしれない――。それまで先輩職員の手際の良さばかりに目が行っていましたが、その手際の良さの背後には「寄り添う介護」「おもてなしの介護」の精神があったのだ、と気づいたのです。

 

介護の現場って、どうしても排泄、食事といった一つ一つの介助を「点」で見てしまいがちになります。しかし、そういった点をひとつなぎの「線」でとらえ、それを介護サービスに活かすことができたら、きっとすばらしい介護になる。それこそが日本式介護の本質なのだ――。その気づきが、今につながる「国際介護士」普及活動の出発地点となったのです。

 

写真:中国・長沙にて介護人材育成

点ではなく線でとらえる「おもてなしの介護」

3. 海外で求められる日本の介護技術

そんな時、中国から日本に留学した経験のある知人から、中国で介護事業をやってみないか、という助言をもらいました。この助言が私の人生を変えることになります。早速、実際に中国の介護事情を見てみようと現地へ視察に行ったところ、そこで見たのは、私がそれまで日本で経験した「介護」とはほど遠いもので、介護というより「お世話」という印象を持つほど一方的で味気のないものでした。ただ、現地の介護スタッフに罪はありません。単に知識や経験が十分でないだけで、知らないのであればできないのは当たり前です。

 

帰国後、私はひたすら自問自答しました。技術的なことはもちろん、目配り・気配り・心配りといった配慮のある日本の介護のすばらしさを、中国へ、アジアへ、そして世界へ広めることはできないかと模索する日々を送ります。そして何度も中国に足を運びながら現地の高齢者福祉の現状を知るにつれ、介護教育の不足と日本の高い技術を学びたいと考える人が多いことに驚きました。

 

写真:インドネシアでの認知症ケア講演

海外で求められる日本の介護技術

4. 関わる全ての人が幸せになれる介護の仕事を世界に!

介護という仕事は、他人の人生に触れていく仕事になります。それが親や祖父母、兄妹といった近しい人であったとしても、「自分とは違う人生」に必ず触れることになるのです。そこで「ケアすること」ばかりに目が行ってしまうと、どうしても相手の「出来ていないこと」に目が行きやすくなります。あれが出来ないから…、これをしないと…、〇〇しているのに〇〇してくれない…。私も介護職員として未熟だった時に、よくこの状況になっていました。しかし、日本の介護は伝統文化や美意識からうまれた「おもてなし」が含まれていることに気づいた今では、世界的にもレベルが高く、価値のある仕事だと誇りを持てるようになったのです。

 

日本式の「おもてなしの介護」を世界に――。この強い思いが今の私を突き動かしています。介護の究極の目的は、さまざまな道を歩んでこられた方の「人生の最終章」に寄り添うことです。喪失感を味わいながらも、それらを受け入れ、生活に障害が出てきても「やりたいこと」へ挑戦し、最期まで「生きている」という実感が持てるよう、支援していきたいと思っています。

 

私は、自分の経験してきたこと、私が大切にしていることを人に伝え、育てたい。そして自分も成長したい。これが自分のミッションだと思っています。介護って、関わる全ての人が幸せになれます。最後はお互いが笑えます。そんな仕事って、きっと介護しかありせん。だから私は介護が大好きだし、これからもずっと「国際介護士」の普及を続けていきたいと思っています。

 

写真:中国・銀川にて介護保険や予防について講演

関わる全ての人が幸せになれる介護の仕事を世界に!

5. 会員登録のご案内

 

この記事の提供元
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著者:上地智枝

1978年、兵庫県宝塚市生まれ。国際介護士、介護福祉士、社会福祉主事、介護支援専門員。長年福祉に携わった経験を生かし、株式会社Takaraful、一般社団法人国際介護士協会を設立。介護福祉士の新しい働き方としてのブランド「国際介護士」の普及に取り組みながら、研修・講演活動を積極的に行っている。

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