在宅介護は、家族だけで頑張ろうとして「外」に頼ることを忘れがちに。しかし介護の長期化を視野に入れて、介護サービスを利用して専門家の手を借りることも必要です。その選択肢の一つとして知っておきたいのが「ショートステイ」です。利用することで介護者、被介護者にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
ショートステイは、在宅介護中の被介護者が一時的に施設に入り、その施設の職員がピンチヒッターとなり生活介助や機能訓練を行うサービスです。特別養護老人ホームや介護老人保健施設であれば介護保険が適用されるので、少ない自己負担額で利用できるのが魅力です。
ショートステイは、介護がすごく大変なときに限って利用するサービスだと思いがちですが、そんなことはありません。介護者側の事情を見ていくと、介護から離れてリフレッシュしたい、仕事が忙しい、冠婚葬祭の予定が入ったなど、様々なシーンで利用できます。家族が長期におよぶ介護を乗り切るには、24時間365日、介護を頑張る必要はなく、自身の都合を優先して「介護から距離を置く」時間を作ることが大切です。被介護者側の事情は、家族を休ませたい、家族以外の人とコミュニケーションを取りたい、退院直後のリハビリが目的など、こちらも様々です。
また、ショートステイは認知症の方も利用できます。ただし暴言、暴力、多動などの問題行動があると、人手が少ない施設などはキャパシティ不足で受け入れが難しいことがあります。その際、ショートステイが可能な認知症グループホームも選択肢の一つになり得ます。認知症グループホームは認知症の高齢者を対象とした施設のこと。空床があれば利用できる可能性があるので覚えておきましょう。
ショートステイを利用する場合、家族としては、入所前に施設の情報をチェックしておきたいところ。情報源となるのは施設のホームページやパンフレットのほか、地域の施設情報を熟知しているケアマネジャーに聞くのがおすすめです。施設によってはキャンペーンを打って期間限定の「体験ショートステイ」を行っていることもあるので、お試し利用をしてみるのもいいかもしれません。
また、見学はコロナ禍を機に一定の制限をするようになった施設もありますが、見学が許されるなら以下のチェックポイントを押さえておきましょう。チェックの数が少ないほど利用者への配慮が行き届き、安心してお任せできる施設の目安になります。
〈施設見学のチェックポイント〉
□ 共用部にいる利用者が少なく、部屋にこもっている
□ 共用部に利用者がいても表情が曇っている
□ 職員が常に走り回っている
□ 職員同士が大声でやりとりしイライラしている
□ 換気が行き届かず室内に不快なにおいがこもっている
□ 掃除が不十分で壁の隅、障子の桟、窓ガラスなどが汚れている
□ 掲示してある献立表に同じ献立が続く、季節感が感じられない
人手が足りない施設は、掃除や換気、利用者とのコミュニケーションが疎かになりがち。また、利用者の身体状況によってできることは違いますが、共用部にいてもただ時間をやり過ごしているだけのようでは家族としても心が痛みます。職員が笑顔で声がけしてコミュニケーションを取る様子が垣間見えると安心感につながりそうです。
ショートステイは、利用者に納得して利用してもらうのが理想です。しかし実際は、短期間であっても自宅を離れることに抵抗を感じるケースは少なくありません。ネガティブイメージを少しでも減らすために、ショートステイ利用のメリットを知っておきましょう。
一つ目のメリットは、職員や他の利用者との交流を通して、生活に変化を感じられる点です。また、自分と他の利用者を見比べて刺激を得ることもできます。利用者のなかには「自分が一番大変な思いをしている」と感じている人もいます。しかし、自分より介護度が高くても一生懸命に生活している高齢者を見ると、「自分ももっと頑張らなくては」と生きる気力が高まることがあります。
次に、生活リズムの改善が期待できます。ショートステイでは施設が決めたタイムスケジュールにより、一人ひとりの普段の生活ペースを尊重しますが、集団生活の効果で食事や睡眠のリズムが規則正しくなり、それにより自然と排便リズムが整い便秘が解消されるケースも少なくありません。
また、リハビリを受ける場合は、歩行機能などの維持・向上が期待でき、食事、排泄、移動といった生活行為における自立度がアップ。自宅に帰った後の生活の質の向上が期待できます。
家族にとっての最大のメリットは、介護から離れる時間が日単位で作れるという点です。自宅で介護に追われると視野が狭くなり、孤独感や無力感に陥りがち。自分自身に余裕がないと被介護者に辛く当たってしまい悪循環に。数日でも介護者という役割を手放し、自分の時間を作ったり、仕事に集中したりすると気持ちがリセットされて穏やかな気持ちで介護を再開できます。
また、ショートステイの使い方によっては、こんなメリットもあります。介護者が病気を発症して入院、退院し帰宅できるまでに回復したけれど介護が必要に。退院が決まると、家族は自宅での生活を見据えた介護指導を病院で受けますが、言われた通りの介護ができるとは限りません。そんなときは、帰宅前にショートステイを利用し、施設で自宅での生活にフィードバックできる介護プランを立ててもらうことが可能です。家族が施設を訪れて介護職員から介護方法を詳しく習えることもあり、これから始まる在宅介護に向けた準備ができるのもショートステイ利用のメリットと言えます。
著者:中村雅彦
中村雅彦(なかむら・まさひこ)
JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院居宅介護支援事業所主任介護支援専門員。特別養護老人ホームの生活相談員を経て、ケアマネジャーに。前一般社団法人長野県介護支援専門員協会会長、前一般社団法人日本介護専門員協会長野支部長、長野県主任介護支援専門員研修・長野県介護支援専門員専門研修(専門研修課程Ⅰ・Ⅱ)講師、介護予防ケアマネジメント指導者など、介護支援専門員に関する研修指導や、訪問介護・通所介護などの研修活動にも従事。