特別養護老人ホームは、要介護3以上の方が終身にわたって入所できる公的な介護施設です。民間の老人ホームと比較すると安価な費用で利用できるので、人気が高く入所待ちが長い傾向にあります。

 

今回は、特別養護老人ホームの費用や月額費用の目安、利用できる負担軽減制度についてご紹介します。

1. 特別養護老人ホームの費用

特別養護老人ホームの費用

・入居一時金:不要

・月額費用:5~15万円

 

特別養護老人ホームは、介護保険施設のため入居一時金は必要なく、利用者は毎月の利用料のみを負担します。

月額費用の内訳は、以下のとおりです。

 

1.施設サービス費

施設サービス費とは、介護を受けるための費用です。介護保険が適用されるため、自己負担割合は所得に応じた1〜3割です。

また、入所者の要介護度が高くなるほど負担額が高くなり、さらに部屋のタイプによっても金額が異なります。

 

以下は、部屋のタイプ別の施設サービス費(月額)の一覧です。

※特養の入所条件は要介護3以上ですが、要介護1・2も特例で入所が認められているため、要介護1より記載します。

 

1-①:従来型個室・多床室

 

従来型個室・多床室

 

参考:厚生労働省|介護給付費単位数等サービスコード表(案) Ⅰ-資料2②


※従来型個室とは、1室を1名で利用するタイプの居室、多床室とは、主に4人部屋。

        月額(1割負担の場合)
・  要介護1 17,670円
・  要介護2 19,970円
・  要介護3 21,960円
・  要介護4 24,060円
・  要介護5 26,130円

1-②:ユニット型個室的多床室・ユニット型個室

ユニット型個室的多床室・ユニット型個室

参考:厚生労働省:介護給付費単位数等サービスコード表(案) Ⅰ-資料2②


       月額(1割負担の場合)

 ・要介護1 20100円
 ・要介護2 22,200円
・ 要介護3 24,450円
・要介護4 26,580円
・ 要介護5 28,650円

※ユニット型とは、10名程度を1グループにしたケア体制

2.サービス加算
サービス加算とは、職員の体制や介護サービスの内容などに応じて加算される費用です。(自己負担割合は所得に応じた1〜3割)

 

特別養護老人ホームで請求される主なサービス加算(月額)

 

特別養護老人ホームで請求される主なサービス加算

   加算の種類   概要   費用
・初期加算     入所から施設に慣れるまでの支援を評価する加算   30円/日(入所日より30日間)
・福祉施設看護体制加算  福祉施設において常勤の看護師を1名以上配置したときの加算
4〜13円/日
・福祉施設個別機能訓練加算  リハビリ専門職を1名以上配置し、個別の計画に沿ってリハビリを行う施設への加算 20円/日

3.食費と居住費
食費と居住費は、全額自己負担となります。また、国による基準費用額が定められてます。

 

【食費】

 43,350円(1,445円/日)

 

【居住費】

 

基準費用額(居住費)

 

参考:厚生労働省:介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費) について


  2024年7月まで(月額) 2024年8月から(月額)
・ユニット型個室的多床室  50,040円 51,840円
・従来型個室  35,130円  36,930円
・ユニット型個室  60,180円  61,980円
・多床室  25,650円  27,450円


特別養護老人ホームなどの介護保険施設を利用する場合、自己負担の食費と居住費を軽減できる制度(負担限度額認定)を利用できます。この制度を活用すれば、自己負担を抑えられるため、経済的な心配がある方でも安心して施設を利用できるでしょう。

 

4.日常生活費
個人差はありますが、毎月1〜2万円程度が目安です。

日常生活費には、主に以下のようなものがあります。

■医療費
■嗜好品費
■日用雑貨費
■理美容費

 

なお、特別養護老人ホームで使用するおむつ代は、介護サービス費に含まれています。

 

2. 特別養護老人ホームの費用例

ここでは、要介護4の人(利用者負担第4段階、自己負担割合1割)が、多床室とユニット型個室を利用した場合の費用例を紹介します。

 

ケース1
・要介護4
・利用者負担第4段階(住民税課税世帯)
・介護保険の自己負担割合1割
・多床室を利用

 

特別養護老人ホームの費用例1


  費用の内訳  費用
・施設サービス費  24,060円
・サービス加算  600円
・食費  43,350円
・居住費 25,650円
・日常生活費  10,000円
・合計 103,660円


ケース2
・要介護4
・利用者負担第4段階(住民税課税世帯)
・介護保険の自己負担割合1割
・ユニット型個室を利用

 

特別養護老人ホームの費用例2


  費用の内訳  費用
・介護サービス費  26,580円
・サービス加算  600円
・食費  43,350円
・居住費  60,180円
・日常生活費 10,000円
・合計  140,710円


部屋のタイプによって、約4万円の費用差が生じています。

 

3. 特別養護老人ホームの費用を抑える軽減制度

負担限度額認定制度(特定入所者介護サービス費)
自己負担の居住費と食費を軽減できる制度です。一定の所得要件を満たした方は、所得や資産状況に応じた1日の負担限度額が設定されており、居住費と食費が減額になります。
詳しくは、こちらをご覧ください。

 

該当すると思われる方は、お住まいの市区町村に申請が必要です。審査が通ると「介護保険負担限度額認定証」が郵送されます。この認定証を施設に提出することで、減額を受けられます。

 

 

社会福祉法人等の利用者負担軽減制度
社会福祉法人等が運営している特別養護老人ホーム入所者の中で、一定の条件を満たす人は、利用者負担額が軽減されます。

 

以下の費用が減額の対象となります。
・施設サービスにかかる利用者負担額
・食費
・居住費

 

軽減額は利用者負担の1/4(老齢福祉年金受給者は1/2)です。生活保護受給者は居住費の全額が軽減されます。

軽減の適用を受けるには、お住まいの市区町村にて申請の手続きが必要です。
対象者と認定されると、市区町村から利用者負担軽減確認証が交付されます。この確認証を施設に提出することで、軽減を受けられます。

 

上記以外にも、高額介護サービス支給制度高額介護合算療養費制度といった軽減制度も活用できます。

4. まとめ

特別養護老人ホームは、入所時に前払いする入居一時金は必要なく、費用の負担は、施設サービス費、食費、居住費など毎月の利用料のみとなります。

 

また、自己負担となる食費や居住費には、所得に応じて国が定める段階ごとの負担限度額が適用されるので、比較的安い費用で入所が可能です。

 

そのほかにも、所得の低い方に対するさまざまな軽減制度が用意されているので、組み合わせて利用することで、費用負担を大きく軽減できる可能性があります。

 

特別養護老人ホームに入所を検討する際は、利用できる軽減制度について確認することをおすすめします。入所を希望する施設や担当のケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。

 

監修者:中谷ミホ

 

イラスト:Freepik

この記事の提供元
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著者:古賀優美子

北海道の2つの自治体で約15年間保健師として勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護支援専門員業務などを経験。その後、高齢者デイサービスセンターで5年間介護員として勤務。2021年4月から専業ライターとして活動を始め、主に介護福祉関連の記事を執筆する。

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