ガス衣類乾燥機を実家に設置して半年が経ちましたが、在宅介護が本当にラクになって驚いています。なぜ電気式ではなくガス式を選んだのか、どんな介護の場面で活躍しているのか、購入費用などについてご紹介します。
わが家の在宅介護で、最もストレスを感じているのは失禁処理です。
認知症の母が夜に失禁するので、わたしが汚れたシーツやタオルケットを交換して、洗濯します。母の尿量が多いときはリハビリパンツを履いていても尿漏れしますし、日中もトイレに間に合わずにズボンを汚してしまい、慌てて洗濯する日もあります。
母の認知症が進行するにつれて失禁の回数が増え、洗濯機を何度も回すことになり、洗濯物を干す回数も増えていきました。
これまで洗濯物は洗濯ハンガーの洗濯ばさみに挟んで、外に干していました。しかし雨や雪が降ると外に干せないので、エアコンのある居間や寝室で部屋干しをしていたのですが、それができません。
なぜかというと、認知症の母が洗濯物を見つけると、乾いていない状態のまま取り込んでしまうからです。そのまま洗濯物を畳んでタンスに片づけてしまい、生乾き臭が部屋を覆いつくしたこともありました。
そこで母の目に入らない2階の部屋で洗濯物を干すようにしたのですが、2階には冷暖房の設備がないため、洗濯物がなかなか乾きません。洗濯物が部屋いっぱいになってしまい、早く乾かす方法はないだろうかと頭を悩ませていました。
特に洗濯物が乾かない梅雨や真冬の時期は洗濯物がどんどんたまってしまうので、実家から歩いて10分のところにあるコインランドリーの乾燥機で乾かすことにしたのです。
しかし実家には車がないので、雨の日は右手に傘、左手には下の写真のような水分を含んだ重い洗濯物を持って歩き、雪の日は凍結した道で転倒しないよう、気を付けながらゆっくりと歩かなくてはなりません。
また、コインランドリーを利用する他のお客さんは、わたしが母の介護をしていることを知りません。母の下着を乾燥機に入れるときに変な目で見られるのではないかと、周りを気にしたり、緊張したりもしました。
しばらくはコインランドリーの乾燥機で何とかなっていたのですが、母の失禁回数はさらに増え、洗濯物がたまるペースが早くなっていきました。重い洗濯物を持って何度もコインランドリーに行くのも大変だし、周囲の目も気になったので、衣類乾燥機の購入を決めたのです。
衣類乾燥機には電気式とガス式がありますが、わが家はガス式にしました。
最初は、電気式の乾燥機能がついた一体型のドラム型洗濯機を買おうと考えました。20年以上前から使っていた縦型の全自動洗濯機は経年劣化していて、さすがに買い替えたほうがいいと思ったからです。
しかし洗濯機を置く脱衣所のスペースを計測したところ、巨大なドラム型洗濯機は置けませんでした。そのため洗濯機は諦めて、乾燥機だけ購入することにしたのです。
洗濯機と一体型ではない乾燥機もガス式と電気式がありますが、コインランドリーで使っていた乾燥機はガス式で、乾燥時間の早さとパリッとした洗濯物の乾き具合に魅力を感じていました。
在宅介護中は1日に何度も洗濯しますし、できるだけ早く洗濯物が乾いたほうが着替えとしてすぐに使えます。ですので、早く乾くガス式を選んだのです。
ガス式は、ガスの配管や洗濯物の湿気を排出する排湿口が必要で、家の壁に穴を開ける必要がありました。ただ築50年以上も経つ古い家なので、その点はあまり気にする必要はありませんでした。
ガス会社を実家に呼んで、設置場所を検討したり、見積書をもらったりしたのですが、すぐには購入しませんでした。理由は値段でためらったのと、母の介護の状況からです。
工事費を含めた、ガス衣類乾燥機の総費用は20万円弱。気軽に買える値段ではありません。また、重度まで認知症が進行した母が、急に介護施設に入る可能性もあります。購入しても使わずじまいになるのでは? そんな思いもありました。
しかし購入を悩んでいる間も洗濯物はたまり続けていましたし、訪問介護で家に来るヘルパーさんも、洗濯物を干すのが大変そうでした。わたしもヘルパーさんもストレスなく、効率よく在宅介護をするために、1年悩んでついに購入を決めたのです。
ガス衣類乾燥機を設置してから、洗濯にかかる時間は3割ほど削減されたと思います。大きなシーツやタオルケットも1時間かからずに乾燥できますし、遠距離介護を終えて東京に帰る日の朝も、早起きして洗濯して乾燥機を使えば、干しっぱなしにして帰る必要もありません。
思っていた以上に洗濯にかけていた時間が多かったことに気づきましたし、その時間が削減された分、介護ストレスから解放されました。こんなことなら3年くらい前に買っておけばよかったと、後悔しているくらいです。
住宅環境によってはガス式が設置できない家もあると思いますし、電気式の乾燥機能付きのドラム型洗濯機をお持ちの方もいると思います。いずれにせよ、乾燥機があると在宅介護は劇的にラクになります。お困りの方、ぜひ 購入を検討してみてください。
著者:工藤 広伸
介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年より岩手で暮らす認知症の母を、東京から通いで遠距離在宅介護を続けている。途中、認知症の祖母や悪性リンパ腫の父も介護し看取る。介護に関する書籍の執筆や、企業や全国自治体での講演活動も行っている。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書に『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)、『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか
介護ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/
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