イオングループが運営するデイサービス、イオンスマイルについてのシリーズ企画、第二弾は、現場のスタッフの方の声をお聞きすべく、イオンスマイル新浦安店を訪ねました。新浦安駅からすぐのイオンスタイル新浦安店の西棟にある店舗は、同じフロアに音楽教室やバレエ教室などがあり、平日の夕方は教室に通うお子さんやその家族で賑わう場所です。あまり広くないスペースにたくさんのマシンや階段のスロープなどが並ぶ店舗で、管理者の島村健司さんにお話を伺いました。
こちらのお店のオープンはいつ頃になりますか?
「2022年の8月1日にオープンしましたので、もう少しで丸2年になります。私は立ち上げから参加しているのですが、その前は埼玉の川口南鳩ヶ谷店に半年ほどいました。2022年の6月頃から開店の準備をしたり、この地域のケアマネジャーさんにご挨拶行ったりといった業務を始めました」
オープン当時はどのような状況でしたか?
「オープン時点で確か15人ほどは新規の利用者様がいて、8月中にもう少し利用者様が増えて、20名ほどになったというような状況だったと思います。目標とする人数は到達できてまずは良かった、とスタッフ間で話していたことを覚えています。ただ、月曜から土曜日まで 週6日、午前と午後の2体制での営業で合計20名の利用者様ということなので、誰もいない曜日やお1人という日もあったため、時間の使い方などで多少苦労した点はありました」
以前はどのようなお仕事をされていたんですか?
「イオンスマイルに入る前は病院やクリニックなど医療系の現場で、どちらかというとプレイヤー的な役割で仕事をしていました。
大学では救急救命士の資格を取得したのですが、その後理学療法士の学校に行き直して理学療法士、そしてNSCAというアメリカの協会が認定するCSCS(*1)という資格を取得しました。NSCAには日本支部があり、日本でも受験して取得できるもので、スポーツトレーナーのための資格です。
*1 CSCS…CSCS(Certified Strength and Conditioning Specialist。認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)は、National Strength & Conditioning Association』(全米エクササイズ&コンディショニング協会)が認定する民間資格の一つ。NSCAの日本支部、NSCAジャパンによると「傷害予防とスポーツパフォーマンス向上を目的とした、安全で効果的なトレーニングプログラムを計画・実行する知識と技能を有する人材を技能を有する人材を認定する資格」とされている。(「NSCA認定資格とは」より NSCAジャパン公式HPより)
イオンスマイル新浦安店管理者の島村さん。
病院でのお仕事とこういったデイサービスでのお仕事では違う部分があるかと思うのですが、いかがですか?
「私は特に急性期の病院で働いてたので、けがをしたばかりだったり、病気になったばかりだったりという患者さんに対することが多く、これから回復させることが目標でした。一方ここ(デイ)では、身体の機能の維持・向上が目標になります。また、身体の症状はもちろん、安心して生活を送ってもらうための関わりという意味合いが強く、病院とはかなり違う役割があるように思っていたのですが、実際やってみると違う印象をもつようになりました。というのも、ここでの目標は現状維持だと思ってきたのですが、今日も昨日も90歳を超えた方が「筋力を上げていきたい」とか、「筋肉量を増やしていきたい」と仰るんです。こうしたケースを多々見てきて、「維持期」にある高齢の利用者様でも「向上」できる部分がある、という点では病院と変わらないのだ、と思うようになったんです」
現状の利用者様の数や主な年齢層、男女比、介護度などについて教えてください。
「現在の利用者様の数は144名です(2024年6月現在)。一番若い方は65歳で、一番上の方では95歳の方がいらっしゃいます。90代の方は、他にも何名かいらっしゃいます。多いのは、大体70代後半から80代の方だと思います。144名のうち、男性は61名、女性が83名ですので、割合としては男性4:女性6くらいでしょうか。
合計144名の利用者様のうち、要介護認定を受けている方は34名です。要支援1,2と判定された方と事業対象者(*2)という区分の方は合わせて110名になります。サービス内容やスタッフの体制的に(介護度の高い方の)受け入れが難しい部分があります」
*2 事業対象者…要介護認定の審査の結果、要支援にも要介護にも該当しなかったり(非該当)、要支援の区分から更新がされなかった等の状態にある65歳以上の方で、心身の状況や置かれている環境その他の状況から、「基本チェックリスト」を受けた結果、チェック項目に該当し、要支援・要介護状態となることを予防する援助を行う必要があると判断された方のこと。
現在の 運営側の体制を教えていただけますか?
「管理者の私と、相談員の社員が1人、あと相談員兼インストラクターが1名、看護師が4名、そしてインストラクターが5名の、トータルで12名となります。
1単位の中では、私と他の社員、相談員、看護師、インストラクターの計5名体制で行っていて、基本的にはこのメンバーで固定だと思います。こちらの店舗では、誰が出ても同じことができるように、業務に関してはあまり厳密に分けないようにしています」
利用者様は店舗の周辺の方が多いのでしょうか?
「そうですね。浦安はJR京葉線の新浦安駅周辺の新町と呼ばれる比較的新しい地域と、東西線の浦安駅周辺とで分かれていて、オープン当時は東西線側に利用者様が多いのではと予測されていたのですが、現在約140名中130名くらいの方はこの新浦安駅近辺の方になります。町名でいうと、日の出や富岡、また舞浜方面から来られる方も結構いらっしゃいます」
新浦安店ならではの特徴はありますか?
「店舗はみんな同じようなスタイルで作られていて、サービスの内容も同じなのであまり変わらないように思いますが、利用者様の傾向ということでいえば、男性の方は結構ジェントルマンな感じの方、女性も上品なご夫人方が多いという印象です。ちゃんと距離感を保って、大人の対応をされている方が多いので、その辺ではこちらも助かっています」
デイサービスに行くことに抵抗感のある方が多いということはありませんか?
「特に男性の方ではその傾向は強いと思います。ケアマネジャーさんからの相談でよくあるのは、頑固でプライドの高い方をどうデイサービスに行く気になってもらうか、ということです。物忘れなど認知の状態も確実に悪くなっているし、体の機能も落ちているのでご家族としては積極的に外に出てほしいのだけど、本人にはあんな所(デイサービス)には行きたくないと言われてしまうと。
デイサービスって種類によってはみんなで座ってレクリエーションをしたり、季節の飾り付けがあったりしますが、新浦安店の利用者の方は、そういった雰囲気があまり好きではない方が多いようです。イオンスマイルはマシンとリハビリトレーニングで完結していて、飾り付けなどもないため、デイサービスに抵抗感のある方にも勧めやすいという点もあると思います。他のスタッフも利用者様を子ども扱いするようなことのないよう、心がけてくれています」
車での送迎もあるのですよね?
「はい、もちろんあるのですが、店舗が駅近で便利な場所なこともあり、近所から来られている方たちの中には送迎を使わないで歩いてくる方もいらっしゃいます。また、『お迎えは来てもらうけど、帰りは買い物して歩いて帰ります』という方もいて、そういった例は他店舗に比べて多いかもしれません。ただ、2024年4月からの改訂で送迎を使わないと料金が割引になってしまうので、経営的な面ではあまり良いことではないのかもしれないですが。
ただ、私としては、運動をしてその次の段階を目指してもらうことが目的だと思っていますので、本人が買い物をして帰りたいのだったら、そこはもう利用者さまの希望を聞くようにしています。そこはこの店の大きな 特徴かもしれないですね」
それだけ元気な方が多いと、利用者様の運動のレベルも結構高くなってきそうですね。
「最初はそれぞれの年齢や体重で課題を設定しますが、大体みなさん、物足りなくなるので、負荷を上げていったりしています。やる気のある方は、『あの人がやってる個別のトレーニング、あれは何? 私もやってみたい』とか、『あの人は重さ〇〇kgでやっているから、私も〇〇kgでやる』とか、利用者さんの間で競り合うようなこともあります。皆さん熱心に取り組んでいますね」
すごいですね!
「そこで『皆さん、安全に楽しくやって帰りましょう』などと言って(やりたい気持ちを)抑えたら、他のデイサービスと同じになってしまうと思うんです。ですので私たちはちゃんとそこを見極めて、できることはやっていただくようにご案内しています。
私が持っているCSCSという資格は、簡単にいえば、スポーツ選手などに対してトレーニングした体をちゃんと動作で使えるものにする指導者としてのものなんです。利用者様に対してスポーツ選手同様の負荷を課すのは無理ですけれど、同じ理論を利用者様のレベルに落とし込んで提供しています。(認定がつかなくなって)ここを卒業された方で、シニアのテニスの大会で3位になった方もいます」
その方は何歳くらいの方だったんですか?
「70代半ばくらいだったと思います。元々テニスをやっていた方で、ご病気で手術をされたのですが、もう一回テニスをしたいと仰って。そのためのトレーニングということで、ほかのスタッフに協力してもらって廊下でステップの確認をしたり、テニスに必要な動作の確認をしたりという個別メニューの対応をしました。特別なことのようですが、イオンスマイル自体も『個別メニュー』の提供をサービス内容の目玉としてPRしている部分もありますので」
今までお話を伺ってきて、デイサービスに対するイメージが変わりました。
「もちろん機能が落ちていってしまう方もいるのですが、維持向上している方の方が多いかもしれません。(中略)杖を使う方や長い距離になると歩行機やシルバーカーを使う方もいらっしゃいますが、皆さんお元気です。ですのでよくあるのは、要介護1や要支援2で週に2回来れていたのに急に要支援1になってしまって1回しか来れなくなった(*3)と、市にクレームを出されたりすることです(笑)。もっとたくさん来たい、という方は多いんです。介護予防のためのサービスなのに、制度的に矛盾しているよね、と話すこともあります」
*3 介護保険サービスでは要支援や要介護といった区分によって受けられるサービスの内容や利用料金の負担限度額が異なる。そのため基本的には区分に応じた利用内容でケアプランが組まれることが多くなる。通所介護(デイサービス)の利用は要支援2であれば週に2回程度利用できるが、要支援1となると週1回の利用が目安となっている。
利用者様が「卒業」されていくということは、運営側として喜ばしいことなんでしょうか?
「経営的な目から見ると良くないことかもしれませんが、現場の人間としては非常にうれしいことです。そこを目指さないと何のためのリハビリなのか、わからなくなると思います。人的な環境がこのままの状態で介護度の高い方を受け入れてしまうと、今のようなトレーニングの指導ができなくなると思いますので、この基準は崩さないよう考えています。その考えはケアマネジャーさんにも伝わっていますので、基本的に紹介していただくのはこのレベル(非該当、要支援1,2~要介護1,2)の方ばかりですね」
自費でももっと来たいと思われる方がいるのもわかります。
「そう仰る方もいます。通うようになって、トレーニングに加えて食事の面でも節制をして、その結果として筋力などの数値で成果が表れてくると、やはりモチベーションが上がってきますし。90代でも全然、筋肉量を増やせるんですよ」
年齢じゃないんですね。
「年齢じゃないと思いますね。本当にそこはすごいなと思います。オープン当初、88歳くらいで来始めた方が、今90歳なんですが、90歳の今の方が体が凄いんです。筋力は上がっているし、筋肉量は増えているし、体脂肪は減っている。年齢じゃない、というのは利用者様が身をもって証明してくれています。ですのでこちらも楽しくやっています。利用者様の変化をうれしく感じるスタッフも多いですし、スタッフもよりいっそう頑張ろうと、新たに資格を取りに行ったり、自分が運動で得た知恵を利用者さんにアドバイスしたりしています。だから、私がいなくても十分大丈夫なくらいなんですよ(笑)」
イオンスマイル新浦安店を訪ね、管理者の島村さんに伺ったお話からは、「デイサービス」の概念が覆されました。そこから見えてきたのは、利用者様の現状を正しく受け止め、その意志を尊重しようとする姿勢でした。
高齢者に対しては、特に家族のような身近な関係にあると、「歳だから」と、既成概念に閉じ込めるような対応をしがちになりますし、デイサービスは「日中の時間を過してもらう場」と考えていたように思います。そんな中、専門的な知識を持った介護関係者がこれだけの思いで高齢の利用者に向き合い、指導してくれることで、高齢者の自信がどれほど保たれるのか。ケアラーとしては、驚きとともに家族への対応について考え直す機会にもなったように思います。
・イオンスマイル新浦安店
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著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。