介護付き有料老人ホームは、24時間体制で介護が受けられる民間の施設です。充実したサービスがある一方で、費用面が気になる方も多いでしょう。そこで今回は、介護付き有料老人ホームの費用についてご紹介します。

1. 介護付き有料老人ホームの費用相場

介護付き有料老人ホームでは、入居時の初期費用(入居一時金)と毎月支払う月額利用料がかかります。それぞれの費用相場は、以下の通りです。

 
初期費用(入居一時金):0〜数千万円
月額利用料:15万〜100万円
 
介護付き有料老人ホームは、主に民間企業が運営しており、施設によって立地や設備、人員体制などが異なります。そのため、それぞれの施設における初期費用や月額利用料に開きがあるのが特徴です。

充実した設備や手厚いサービスを提供する施設は、その分利用料が高くなる傾向があることを理解しておきましょう。

2. 初期費用(入居一時金)

初期費用は家賃の前払いという位置づけであり、入居年数に応じて月ごとに消費される費用です。初期費用の支払い方法は、大きく分けて3種類あります。

 

【全額前払い方式】
入居時に有料老人ホームへの想定入居期間を決め、それに応じた家賃を全額支払う方式です。想定入居期間は施設によって異なるものの、5〜10年と定めているケースが一般的です。

 

この想定入居期間は償却期間と呼ばれ、償却期間が終わる前に退去した場合は残りの期間に応じた家賃分が返還されます。ただし、退去時の返還金の算出方法は、施設によって異なるので、あらかじめ確認しておくことがj重要です。

 

全額前払い方式の場合、入居時にまとまったお金を準備する必要がありますが、毎月の支払額を少なくできる点はメリットになるでしょう。

 

【一部前払い方式】
想定入居期間から算出される家賃の一部を前払い金として支払い、それを差し引いた分を月額利用料に上乗せして支払う方式です。全額前払い方式に比べると、入居時の費用負担が軽減します。

 

全額前払いはできないけれど、できるだけ月々の支払い負担を少なくしたい方はこの一部前払い方式がよいでしょう。

 

【月払い方式】
月額利用料に加えて、家賃を月割りで支払う方式です。

月額利用料は高くなりますが、入居時に大きな金額を支払う必要はないので、まとまった預金がない方でも利用できます。

 

特養の入居待ちなど、いずれ有料老人ホームを退去する予定がある場合は、月払い方式が向いているでしょう。

3. 月額利用料

月額利用料とは、家賃や管理費、食費、介護サービス費など毎月支払う費用のことです。

 

 
・家賃:施設の立地や部屋タイプなどによって決められる
・管理費:施設管理費、維持費、水光熱費など
・食費:1日3食、おやつ代がかかる場合もある
・介護サービス費:要介護度に応じて毎月定額
・日常生活費:歯ブラシなどの日用品代、おむつ代、理美容代、医療費など
・上乗せ介護サービス費:施設によって請求される場合がある
・横出しサービス費:介護保険の適用外サービス、買い物代行、通院介助など



介護サービス費は、要介護度に応じて決まった金額を毎月支払います。たとえば、体調悪化によって普段よりケアが必要になったり、おむつ交換の回数が増えたりしても追加料金はかかりません。どのような状態でも、毎月同じ金額で介護を受けられます。

 

一方、これらの介護サービス費に加えて「上乗せ介護サービス費」という費用がある施設もあります。上乗せ介護サービス費とは、法定の人員配置基準を上回る人数の介護スタッフを配置している場合に発生する費用のことです。

介護付き有料老人ホームの人員は、要介護者3人に対して1人の看護・介護職員を配置しなければならないと定められています。

ところが、中には要介護者2人に対して1人以上の看護・介護職員を配置する施設があり、きめ細やかな介護が受けられるので、その分の費用が上乗せされます。

上乗せ介護サービス費の有無は施設によって異なるので、入居前にサービス内容や費用を確認しておくことが大切です。

4. 介護付き有料老人ホームで利用できる助成制度

介護付き有料老人ホームに入居する場合、所得の低い方などを対象として、助成を受けられる可能性があります。

 

【高額介護サービス費制度】
高額介護サービス費は、1ヶ月に支払った介護サービス費が自己負担上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。介護サービス費のみが対象になるので、居住費や食費は対象外になります。

自己負担上限額は世帯所得に応じて、5段階で設定されています。

 

たとえば、市町村民税課税所得380万円以下の人は44,400円/月までが上限額(くわしくはこちら(厚生労働省))です。この制度の対象になった場合は、自治体から支給申請書が届くので、必要事項を記入して手続きを行いましょう。

 

【高額介護合算療養費制度】
1年間に支払った「介護サービス費」と「医療費」の合計が高額な場合に、自己負担を軽減する制度です。世帯所得に応じて決められた一定額を超えた場合に超過分が支給されます。

世帯内で支払った介護サービス費と医療費がすべて対象になるので、夫婦で施設に入居した場合などに対象になる可能性があります。

 

対象期間:毎年8月1日〜翌年7月31日までにかかった自己負担額
対象者:国民健康保険、後期高齢者医療・被用者保険の加入者

 

世帯所得に応じた上限額は、こちらをご覧ください。

5. 介護付き有料老人ホームで利用できる控除

介護付き有料老人ホームに入居する親を扶養に入れている子どもは、扶養控除や障害者控除を受けられる可能性があります。

 

【扶養控除】
施設入居前から親を扶養に入れていた方は、施設入居後であっても扶養控除が受けられる場合があります。

一人につき38万円の扶養控除を受けられますが、扶養対象が70歳以上であれば老人扶養親族となり、48万円の控除の対象となります。

 

【障害者控除】
一定の身体状況に該当する場合は、障害者控除の対象となります。

障害者控除は一般障害者と特別障害者に分類され、一般障害者は27万円、特別障害者は40万円が控除されます。

 

障害者控除の対象者は、こちらで確認できます。



監修者:中谷ミホ
イラスト:Freepik ※トップ画面

この記事の提供元
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著者:倉元 せんり

福祉系大学を卒業後、急性期病院で医療ソーシャルワーカーとして勤務。現在は、フリーライターとして、福祉にまつわるさまざまな記事を執筆している。福祉制度や社会保障などの知識を分かりやすく伝えるのが得意。
保有資格:社会福祉士・ケアマネジャー

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