ケアラーの心配事の1つが、「両親が詐欺などに引っかからないか」ではないでしょうか。現在、詐欺被害や強盗被害が深刻な社会問題となっています。2023年1月から12月までに全国で発生した特殊詐欺(オレオレ詐欺、振り込め詐欺、架空請求詐欺など)の被害状況を例にあげると、認知件数の合計が19,038件、合計被害額は452億5,643万6,710円。高齢者を中心に、多くの被害報告が寄せられているのが実情です。今回は、一般社団法人日本防犯学校副学長であり、防犯アナリストでもある桜井礼子さんに、架空請求詐欺、キャッシュカード詐欺、投資詐欺の犯罪について、手口や被害事例、対策方法を教えていただきました。

1. 【架空請求詐欺】身に覚えのない料金を請求されても、決してあわてない!

毎日のように報道される特殊詐欺。犯罪者は、あの手この手を使ってターゲットからお金をだまし盗ります。なかでも、とくに気を付けたいのが架空請求詐欺です。「架空請求詐欺なんて、昔からある手口。こんなのに引っかかる人なんているの?」と、高をくくっている人も多いかもしれませんが、油断してはいけません。警察庁が発表している特殊詐欺に関する統計を見ると、2023年1〜12月に報告された架空請求詐欺の被害金額は140億3,859万8,000円。オレオレ詐欺を上回り、いちばん多い数値となっているのです。

架空請求詐欺の実際の事例から紹介していきましょう。静岡県に住む50代女性の携帯電話に「利用料金の支払いが確認できない。至急連絡をください」とメールが届き、記載されていた連絡先へ電話をすると、「個人情報が悪用されている。お金を支払わなければ訴えられる」と告げられました。そのため複数回にわたって、宅配便で現金を送ったり、プリペイドカードを購入してその番号を教えたりし、結果的には総額1,330万円をだまし盗られることに……。よく聞く手口ですが、これは氷山の一角です。

ほかにもさまざまな手口があり、なかには実在する公的機関や企業名をかたって、メール・はがき・手紙が送られてくるものもあります。悪質なのは、犯人が裁判所または法務大臣の許可した債権回収会社にうその訴えをし、そこから手紙やはがきが届くケース。それらを無視していると、ある日突然、差し押さえや、強制的に相手が請求した金額を支払わされる羽目になります。これでも「自分は大丈夫」と思えますか?

では、そうした被害にあわないためにはどうすればよいのでしょうか? 無視するのがよいともいわれますが、それでは危険が残ります。とくに、実在の裁判所や企業から届いた書面を無視するのは、いちばんやってはいけないことです。

とはいえ、実在する公的機関や企業からメールやはがき、手紙が届いたからといって、記載されている連絡先に連絡するのは避けてください。そうしたケースでは、正しい連絡先を調べてから連絡することが大事です。また、そのようなメールやはがき、手紙が届いたら決して一人で悩まず、信頼できる人に相談してください。届いたメールやはがき、手紙は絶対に消去・破棄しないで、警察や消費者センターに持参し、相談しましょう。

〈POINT〉
●無視してはいけないケースもある
●一人で対処しようとせずに必ず相談を

【架空請求詐欺】身に覚えのない料金を請求されても、決してあわてない!

2. 【キャッシュカード詐欺盗】警察官や金融庁職員が直接訪ねてきたら要注意

キャッシュカード詐欺盗は、キャッシュカードすり替え詐欺ともいわれ、2023年の発生件数は、5年前の約2倍に増加しています。では、その手口とはどんなものでしょうか? 以下に一例を紹介します。

ある日突然、「○○警察署の○○です。あなたのキャッシュカードが不正に使用された可能性があります。不正使用できなくするために手続きが必要です。のちほど金融庁職員が伺いますので、キャッシュカードを用意してお待ちください」と警察官を装った電話が自宅の固定電話にかかってきます。その際、犯人は同じ封筒を2枚用意したうえで、1枚を空にし、もう1枚には意味のないポイントカードなどを入れておきます。

金融庁職員に扮した犯人はターゲットの自宅を訪れ、まずは「○○警察から連絡があったと思います。キャッシュカードを不正使用できなくするための保護手続き開始のため、キャッシュカードと暗証番号を書いた紙をこの封筒に入れてください」と指示。空封筒にそれらを入れさせて目の前で封をします。その後、犯人は「封をした箇所に印鑑を押す必要があるので持ってきてください」と印鑑を取りに行かせ、その隙に準備しておいた意味のないポイントカードなどが入った封筒とすり替えます。そして、すり替えた封筒に印鑑を押してからターゲットに手渡し、「2~3日この封筒を保管しておいてください。手続き完了後ご連絡いたします」といいながら帰っていくのです。

もちろん、いくら待っても連絡などきません。ターゲットは不安になって封を開け、ようやくキャッシュカードを盗られたことに気付きますが、時すでに遅し。口座からは現金が引き出されています。ほかに、警察官だと偽って電話をかけ、偽の金融庁職員に電話を替わって「その場で暗証番号を聞き出す」ケースや、「新しく不正使用できないカードを作成してお送りします」といってだますケースもあり、その手口はさまざま。金融庁職員ではなく「警察官を名乗って訪ねてくる」というケースもあります。

多くの人が、こうした詐欺にだまされてしまう理由は、犯人が「カードを預かります」といわず、すり替えたカードを自宅で保管させることで、被害者の信用を得るからです。しかし、本来は警察がそうした電話をすることも、金融庁職員が自宅に訪問してくることもありません。不審な電話がかかってきたら、まずは最寄りの警察に相談しましょう。電話のあとに警察や金融庁職員を名乗る人物が訪ねてきた場合も、玄関を開けず警察に連絡をしてください。

今は着信時に、安心して出てもよい電話か、出なくてもよい電話かをLEDライトの色で教えてくれる「防犯電話機」もあるので、そうしたツールを活用するのもよいでしょう。

〈POINT〉
●警察や金融庁職員がキャッシュカードの点検や交換に自宅にくることはない。そう名乗る人物が来たら、すぐに警察に連絡を
●犯罪者と会話をしなくてすむように、迷惑・悪質電話防止装置付きの電話機に替える

【キャッシュカード詐欺盗】警察官や金融庁職員が直接訪ねてきたら要注意

3. 【投資詐欺】うまい話には裏があるとわかっていても、手を出してしまうのはなぜ?

よく耳にする「投資詐欺」。頭では「うまい話には必ず裏がある」とわかっているのに、おいしい話を聞いて「老後のためのお金も必要だし、ひと儲けできるならやってみるか」とつい手を出してしまった……。そんな人は、決して少なくありません。

2021年に摘発された、テキシアジャパンホールディングス「キング」の事件も、そうした事例の1つです。同社は、海外の富裕層向け資産運用という名目で架空の投資話をつくり上げ、一口100万円の出資で月3%利率の配当金の支払いを約束し、預かり金としてお金をだまし取っていました。被害者はだまされたことに気付くまで、代表者である「キング」を、まるでスターのように崇拝していたといいますから、やり方がよほど巧妙だったのでしょう。

この「キング」の事件以外にも、ある日突然、はがきや書面またはメールが届いたり、電話がかかってきたりして、言葉巧みにだます手口がいろいろあります。たとえば、「貴重な品物で今しか手に入らない」と商品の購入をもちかけたり、「この会社の株は将来必ず値が上がる。今がチャンスです!」と未公開株の購入をもちかけたりする金融商品等取引名目詐欺などは、その代表例です。

絵や書を趣味にしている人のところに「あなたの絵(書)は大変すばらしいので、毎月、新聞や絵(書)関連の会報誌に掲載したい。そのためには登録が必要です」と連絡し、登録費名目でお金をだまし取るものや、「高齢者住宅や老人ホームへの施設入居権を特別に購入できる」と架空の話をもちかけるものなど、高齢者を狙った手口もたくさんあるので注意が必要です。

こうした犯罪に巻き込まれないためには、「老後や生活のために、少しでもお金を増やしたいと願っている人の心理を利用した悪質な詐欺がある」と知っておくことが大事です。詐欺犯は私たちが考えている以上に知恵を使い、常にだます方法を考えています。前述したような内容の郵便物やメールが届いたり、電話がかかってきたりしたら、まず疑ってかかり、消費者センターや警察に相談してください。

〈POINT〉
●「今しか買えない」「必ず儲かる」「特別に購入できる」などの言葉が出たら、まず詐欺を疑うこと






この記事の提供元
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著者:桜井 礼子(さくらい・れいこ)

一般社団法人日本防犯学校副学長、防犯アナリスト。
日本初の女性防犯アナリスト。事件現場の検証と取材に携わり、子育て経験や高齢者がいた経験を活かして、女性・母親・高齢者の親を持つ立場で皆様と同じ目線に立ち、自分自身で出来る防犯対策を始め、子供と高齢者・女性を守る防犯対策を分かりやすく解説。弱者を犯罪被害から守る予知防犯を提唱する活動を展開している。

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