「足腰が衰えた気がする」「外に出たがらない」「何だか落ち込んでいるように見える」

このように、ご家族の様子が変わったと思うことはありませんか? もしかしたら、その状態はフレイルかもしれません。本記事では、フレイルの概要やセルフチェック、予防対策について解説します。

1. フレイルとは加齢によって心身が衰えた状態

フレイルとは、加齢によって心身が衰えた状態のことで、健康な状態と要介護状態の間の段階を指します。フレイルは「ぜい弱」「虚弱」などを意味する「Frailty(フレイルティ)」が語源になっています。

2. フレイルは4種類ある|症状と原因

フレイルは、どの部分が弱っているのかによって、以下4つのタイプに分けられます。

・身体のフレイル
・心のフレイル
・社会性のフレイル
・口のフレイル

■ 身体のフレイル
・筋力やバランスの低下、関節痛などによって転びやすくなる
・歩くのが遅くなる
・内臓機能の衰えによって、風邪や病気にかかりやすくなる
・体力が低下し、疲れやすくなる

運動器(骨・関節・筋肉・神経など)や内臓などの機能が衰えている状態です。加齢や疾患(関節疾患、生活習慣病など)により、活動量が低下したり、身体の機能が低下することで起こります。

■ 心のフレイル
・出かけるのがおっくうになる
・物をどこに置いたかわからなくなる
・判断力が低下する
・活気がなくなる・落ち込む

気分が落ち込んだり、認知機能の低下が起こったりしている状態です。配偶者や親しい友人などとの死別、加齢による脳機能の衰えなどが原因で起こります。

■ 社会性のフレイル
・部屋に閉じこもる
・孤食(一人で食事する)になる
・人と話す機会が減る
・楽しみや生きがいを失う

社会的に孤立し、対人交流に支障をきたしている状態です。家族や友人などと関わる機会が減ったり、外出によるイベントへの参加機会が減ったりして、社会とのつながりが薄くなることで起こります。独り暮らしであることや、経済的に困窮していることなども原因といわれています。

■ 口のフレイル
・食べる量が減り、栄養が不足して体重が減る
・滑舌が悪くなる
・声量が小さくなる
・食べ物でむせやすくなる
・固い食べ物を避けるようになる

加齢に伴い、あごやのど、舌などの力が衰えることが要因となります。歯の喪失なども関わっています。

3. すぐにできる!フレイルのセルフチェック方法

東京大学高齢社会総合研究機構で考案された、フレイルの簡便なセルフチェック方法2つを紹介します。

■ 指輪っかテスト
筋肉量の減少を簡単にチェックできる方法です。両手の親指同士と人差し指同士を結び、「利き足と反対側の足」のふくらはぎを囲みます。このとき、最も太い部分を囲みましょう。囲み具合によって、以下3パターンのフレイルリスクを簡単に把握することができます。

・囲めない:低リスク
・ちょうど囲める:中リスク
・隙間ができる:高リスク

■ イレブンチェック
「栄養」「口腔」「運動」「社会性・心」の要素から、フレイルを総合的に評価する方法です。質問に対して、AとBいずれに当てはまるかを答えます。



B欄で6つ以上該当すると、フレイルのリスクが高まるといわれています。

4. フレイルの予防対策

糖尿病・高血圧などの生活習慣病、変形性関節症などの慢性的な疾患をもつ方は、主治医の指示に従って症状の悪化を防ぎましょう。そのうえで、以下4種類の予防対策をバランス良く実践することが大切です。

■ 食事
低栄養になると筋肉や骨の衰え、体力や食欲の低下などにより、身体や口のフレイルになりやすくなります。毎日3食の規則正しい食生活を送り、以下の栄養素を意識的にとりましょう。

・ 炭水化物
・ タンパク質
・ ビタミン
・ ミネラル
・ カルシウム
・ 水分

■ 社会参加

就労やボランティア活動により「誰かのためになっている」という生きがいを感じたり、役割をもったりしましょう。また、外に出て人と会うことも大切です。地域活動への参加や友人と会う機会が少ない方は、移動能力が低下するという研究結果もあります。

・ 町内の行事
・ 同世代の方たちとの交流
・ 家族や友人たちとの外出

こういった社会との関わりを保てるように、交流を続けていきましょう。


【参考文献】
都市部高齢者の閉じこもりと生活空間要因との関連. 村山洋史, 渋井優, 河島貴子, 他. 日本公衆衛生雑誌 2011; 58(10): 851-860.

■ 運動
歩く機会をもち、筋力の強化や柔軟性の維持を図りましょう。また、バランス能力を保ち、痛みや転倒を防ぐことが大切です。目的をもたずに歩くことは苦痛かもしれませんので、家族や友人と一緒に、楽しく散歩するとよいでしょう。運動や社会交流が継続できるよう、努めましょう。

■口腔ケア
食後の歯磨きをしっかりと行うだけでなく、歯科を受診して歯のメンテナンスをしましょう。歯の健康が失われると食べる機能が低下し、飲み込む力も衰えやすくなります。また、飲み込みにくくなると、ムセ・窒息・誤嚥性肺炎などのリスクが高くなります。

おいしく食事をとり、口や身体の機能低下を防げるよう、口腔ケアに取り組みましょう。

5. まとめ

フレイルになっても、取り組み次第で元の健康な状態に戻れます。ご家族の心身が衰えたように感じたら、フレイルのチェックをしてみましょう。

もしフレイルに該当するようであれば、紹介した予防方法を無理のない範囲で行ってみてください。慢性的な疾患のある方は、並行して治療も怠らないようにしましょう


 監修者:中谷ミホ

イラスト(トップ):著作者:Freepik 

この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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