フレイルを予防するためには、衰えのサインを見つけ、適切な対策をとることが重要です。

今回は、フレイルの特徴や発症のきっかけ、進み方などを解説したうえで、予防のために取り組みたい4つの対策を紹介します。

1. フレイルの特徴

フレイルは、健康と要介護状態の中間に位置すると言われています。足腰の衰え、物忘れ、食欲の低下といった、健康な状態よりもやや衰えているサインが見られるのが特徴です。フレイルを放置していると、徐々に衰えの悪循環が起き、やがて要介護状態になってしまいます。

しかし、適切な対策をとればフレイルから健康な状態に戻ることも可能です。そのため、ご家族に元気のない様子が見られたらフレイルの可能性を疑い、健康な状態に戻れるよう、対策を進めましょう。また、健康な方でもフレイルにならないための対策をとることが大切です。

2. フレイルのきっかけと進み方

フレイルは、「身体」「心」「社会性」「口」の4つに分類されます。フレイルのきっかけや進み方は人によって異なります。以下の例を見てみましょう。

■ 身体のフレイルから始まる例
1.ひざ膝が痛いため、活動量や体力が低下する:身体のフレイル

2.カロリー消費が減って食欲が低下し、口の機能が衰える:口のフレイル

3.食べたくないので、家族と食事を摂らなくなる:社会性のフレイル

4.部屋に閉じこもるようになり、落ち込んだり物忘れが増えたりする:心のフレイル

5.さらに活動量や体力が低下する:身体のフレイルをきっかけとした悪循環

■心のフレイルから始まる例
1.友人や配偶者との死別により、抑うつ状態になる:心のフレイル

2.外に出たくなくなり、部屋に閉じこもるようになる:社会性のフレイル

3.人と会わなくなり、話す・飲み込むなど口の機能が低下する:口のフレイル

4. うまく食べられなくなり、栄養が不足して身体が衰える:身体のフレイル

5.身体の不調により、抑うつや意欲の低下が進む:心のフレイルをきっかけとした悪循環

このように、人によってフレイルのきっかけや進み方は異なります。心身の状態が衰えるきっかけを見つけ、適切に対処することがフレイル予防のポイントです。

3. フレイル予防のために取り組みたい4つのこと

フレイルを予防するために取り組みたい4つの対策を紹介します。「運動」「栄養」「社会参加」「口の健康」の4つについて、バランス良く実施しましょう。

■ 運動をする
筋力・柔軟性・バランスなどを向上させ、転びにくい身体を作ることが大切です。以下の運動に取り組みましょう。

【筋力トレーニング】
・座ってもも上げ:もものつけ根を意識して30~50回
・椅子からの立ち座り:30~50回
・つま先立ち:足を肩幅に開き、かかとの上げ下げ30~50回
・お尻上げ:お尻と裏もものつけ根を意識して20~30回
・片足立ち:テーブルなどに手をついて30~60秒

【ストレッチ:それぞれ20秒を目安に行う】
・体幹:椅子に座って上半身を左右に倒す
・太ももの裏:椅子に座って片足を前に伸ばし、身体を前にゆっくり倒す
・太もも内側:左右に足を開き、片方に体重をかけ、もう片方を伸ばす
・ふともも前側:片足で立ち、上げている方の足首をもって膝を後ろに曲げる
・ふくらはぎ:足を前後に開き、前側の足に体重をかけ、後ろ側の膝を伸ばす

いきなりすべてを行うのは大変ですので、できる運動や無理のない回数から始めましょう。テレビを見ながら、CMのときだけ行うのがおすすめです。



■ 栄養を摂る
「これだけ食べれば栄養は十分」という万能食品はありません。多くの食品をバランス良く食べることが大切です。1日3食すべてにおいて、主食・主菜・副菜を組み合わせ、以下の食物を意識して食べましょう。

主食:ご飯、パン、麺
主菜:肉・魚・卵・大豆製品
副菜:野菜・いも・きのこ・海藻

筋肉を作るためのたんぱく質は特に重要です。
トーストにハムやチーズを足したり、ご飯を納豆ご飯にしたりすると、手軽に摂取できるでしょう。

食が細くてあまり多く食べられない方は、栄養補助食品を摂ると足りない栄養素を補えます。エネルギーが180kcal以上あり、たんぱく質を10g程度含む物を選ぶとよいでしょう。ドリンク、ゼリー、プロテインバーなどさまざまな種類があるため、お好みで選んでみてください。



■ 社会参加をする
ボランティアや就労などを通じて、役割を見つけることが重要です。誰かに必要とされることで、意欲が湧いてきます。ただし「誰かの役に立つこと」に固執する必要はありません。大切なのは、社会とのつながりを保つことです。「社会参加=人と接点をもつ」と考えましょう。

たとえば、家族で買い物に行くことを想像してみてください。それだけでも、以下の効果が見込めます。

・店の中を移動するため、運動機能が維持できる
・何を買おうか考えるため、判断力や計算力などの認知機能が維持できる
・外出先で恥ずかしい思いをしないように、身なりを整える機会をもてる

このように社会参加(人と接点をもつこと)は、運動機能や認知機能だけでなく、社会性の維持にもつながり、フレイル予防に効果的と考えられます。

■ 口の健康を保つ
口の健康を保つと、食べる機能が維持され、必要な栄養を効率よく摂取できます。また、誤嚥性肺炎(飲み込みに失敗して起こる肺炎)の予防にもつながります。主に以下の対策をとりましょう。

【口腔ケア】
・毎食後に歯磨きする(入れ歯も必ず洗浄する)
・定期的に歯科を受診し、むし歯や歯周病をチェックしてもらう

【口や舌の体操:それぞれ3回を目安に行う】
・うーいー体操:口をすぼめて「うー」、横に開いて「いー」
・舌の押し付け:舌を左右頬の内側に強く押しつける
・舌回し:舌で口の中を1周なめる(右回り、左回りを行う)
・舌の上下運動:舌であごや鼻の頭に触るように上下させる

【食べる物や食べ方の注意点】
・最低30回は噛んで食べる
・固い物を積極的に食べる
・家族と一緒に食事を摂る

口の健康を保つためにこれらを実践し、おいしく食事を食べ続けられるようにしましょう。

4. まとめ

フレイルの予防は、紹介した4つの取り組みをバランス良く行うことが大切です。フレイルは人によってきっかけや進み方が異なるため、心身のどの部分が弱っているのかを把握し、衰えのサインを見逃さないようにしましょう。


監修者:中谷ミホ

イラスト(トップ):著作者:Freepik


この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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