認知症の方とのコミュニケーションに悩んでいる方は、多いかもしれません。認知症の方は、難聴や物忘れなどがあることから、時にコミュニケーションがうまくとれないという問題を抱えていることがあります。一方、うまくコミュニケーションがとれると、トラブル防止につながるだけでなく、認知症の進行を遅らせることができる可能性も秘めています。

そこで今回は、認知症の方とコミュニケーションする際に意識すべき点、そして逆にしてはいけないことなどについてご紹介します。

1. 認知症の方とのコミュニケーションの特徴

認知症の方は脳の認知能力が低下しているため、例えば、一度話した話題を何度も繰り返したり、不可解な発言をしたりすることがあります。それは、本人が幻覚を見ていたり、発言したこと自体を忘れていることが原因で、その結果、他者とコミュニケーションを難しくしている場合があります。

しかし、話がかみ合わないからと否定したり無視したりすると、認知症の方は心を閉ざしてしまうことがあります。そこで重要になるのが「信頼」です。常に敬意をもって接し、相手の自尊心やプライドを傷つけないように心がけてみてください。

2. 認知症の方とコミュニケーションをとる際のコツ

認知症の方と上手にコミュニケーションをとるためには、いくつかコツがあります。ここで紹介することを意識して、是非認知症の方と会話してみてください。

●大きな声でゆっくりと話す
認知症の方に限らず、高齢者の方は聴力が衰えていることがあります。小さな声や高い音は聞き取りづらくなっているため、普段よりも少し大きめの声で話しましょう。人によって聴力に左右差があるため、どちらの耳が聞き取りやすいかを確認しておくことも大切です。

また認知症の方は、早口や難しい言葉を使うと、理解が追いつかないことがあります。なるべく簡単な言葉で簡潔に、ゆっくりと伝えるようにしましょう。

●相手の目を見て話す
ご自身は話しかけているつもりでも、認知症の方にうまく伝わっていないケースはよくあります。その場合、目を見て話すようにすると、相手は自分が話しかけられていることがわかるので、話を聞いてくれるようになります。こちらも相手の表情が読み取れるようになるため、認知症の方がうまく言葉にできない気持ちも理解しやすくなります。



●共感して受け入れる
認知症の方は、自分の気持ちをうまく言葉にできないわずらわしさから、暴言を吐いたり、急に怒り始めたりすることがあります。そんなときも、冷静に対処するよう心がけましょう。可能な限り温かく相手の気持ちに共感し、受け入れるように対処してあげてください。すると次第に落ち着きを取り戻し、自分の気持ちを話してくれるかもしれません。また、話を聞いたときに相づちを打つのも効果的です。自分の話を聞いてもらえたという安心感から、信頼関係に結びつきやすくなります。

認知症の方は会話の内容自体は忘れてしまっても、会話したときの感情は覚えていることが多いといわれています。なるべくプラスの感情が残るように意識しながら、会話をしてみましょう。

●ジェスチャーを取り入れる
言葉だけで伝えるよりもジェスチャーを交えながら話すほうが伝わりやすく、記憶にも残りやすいと言われています。例えば「私が」と言いながら自分を指さしたり、「今日はいい天気ですね」と言いながら窓に視線を向けたりするといいでしょう。

また、適度なスキンシップは、相手の安心感につながります。そのため、そっと肩やひざに手を置きながら話を聞いてみるのも効果的です。ただし、過度なスキンシップはかえって嫌がられることもありますので、適度な距離感を保つのがポイントです。

3. 認知症の方と接するときにやってはいけないこと

認知症の方とコミュニケーションをとるときに、やってはいけないNG行為がいくつかあります。ここでは、認知症の方が嫌がる行為をいくつかご紹介します。

●無視や放置
同じことを何度も言われたり聞かれたりすると、「相手をしていられない」と感じることもあるでしょう。しかしケアラーが無視をしたり、適当な返事をして放っておいたりすると、認知症の方は強い孤独感に襲われます。信頼関係が損なわれる恐れもあるため、可能な限り誠実に対応するようにしましょう。

●否定的な言葉を使う
認知症の方と会話をしていると、何を言っているのかわからなかったり、思ったような返答が返ってこなかったりと、ストレスに感じることもあります。そんな時、つい強い言葉で否定してしまいがちですが、そうすると傷ついて心を閉ざしてしまったり、激高してしまったりします。認知症の症状を悪化させる恐れもありますので、否定的な言葉を使うのは避けるようにしましょう。



●物忘れを指摘する
認知症に多い症状の一つに「記憶障害」があります。食事を取ったことを忘れたり、物をしまった場所を覚えていなかったりする症状です。物忘れのたびに指摘すると、認知症の方は覚えていないことにショックを感じてしまいます。食事の意向の確認には「何が食べたい気分ですか?」、探し物の際には「一緒に探してみましょう」など、寄り添う声かけを心がけてみてください。

●子ども扱いをする
認知機能が低下しているとはいえ、認知症の方の多くは年上です。年下のケアラーに子どものような扱いを受けると自尊心が傷つき、信頼関係も失われてしまいがちです。敬語を使うようにする、見下したような態度をとらないようにするなど、相手を尊重した姿勢が大切です。

4. 新しいツールも活用して積極的にコミュニケーションをとろう

会話をしようとする場合、耳から入った情報を脳に伝えて理解し、それに対しての返答を考えるという一連の働きが必要になります。そのため、コミュニケーションをとることは、脳にとってよい刺激となり、認知症の悪化を防ぐ可能性があるといえます。

しかし、核家族化が進む現代社会では、一人暮らしをしている高齢者の方も多く、持続的に誰かとコミュニケーションをとれる環境にいる方も少なくなっています。一方で、最近では高齢者のコミュニケーション不足の解消に役立つ製品も数多く登場していますので、それらを活用するのも一つの手です。

例えば、家族の代わりに会話の相手になってくれたり、朝夕の挨拶や気づかいの言葉をかけてくれるコミュニケーションロボットや、離れた場所に暮らす親との会話が簡単にできるビデオ通話ツールなどが挙げられます。

写真:著作者:freepik

5. まとめ

認知症は、認知機能の低下や記憶障害を伴うため、コミュニケーションをとるのが難しいと感じているケアラーも多いでしょう。しかし、無視をする、否定するなどの間違った対応をすると、相手のプライドを傷つけたり、症状を悪化させたりする恐れがあるため注意が必要です。最初は適切なふるまいがなかなかできなくても、認知症の方ご自身の状態が安定すると、ひいてはケアラー自身の負担軽減にもつながります。そのため、少しずつでも認知症の方の状態を理解し、状況に応じた接し方を心がけることが重要です。

認知症の方とコミュニケーションをとるときは、可能な限り「尊敬」と「共感」を心がけ、何を言われても受け入れる姿勢が大切ですが、ケアラー自身がストレスを感じてしまうことも多々あると思います。そのような場合は、周りの人やコミュニケーションツールにも頼りながら、無理せず上手に認知症の方と付き合っていく方法を見つけ出していきましょう。


写真(トップ):ピクスタ


この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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