高齢のご家族やご自身が自力での歩行が困難になった場合、安全に移動するための方法の一つに「車いす」があります。しかし初めて車いすを選ぶ場合、「どのような種類を選べばいいのか」「どのような機能があったら便利なのか」など、疑問に感じることも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、車いすを選ぶときに知っておきたい種類や機能、その他特徴についてご紹介します。

1. 車いすは購入 or レンタル?

車いすを利用する際の選択肢には、「購入」と「レンタル」があります。車いすを購入する場合、価格の相場は通常のタイプで2〜5万円、電動タイプで10〜20万円ほどです。長く使用する予定であれば、購入したほうが費用を抑えられることが多いですが、購入後に体型が変わり合わなくなってしまったり、病気やケガの影響で新たな機能が必要になることもあります。そのような場合、買い替えが必要になるため、購入する際は将来のことも念頭に入れ慎重に選ぶことをおすすめします。

一方、レンタルの場合は、月額5,000円程度で利用できます。一時的に使用したい場合や試しに使ってみたい場合は、初期費用を抑えられるレンタルの利用がおすすめです。また、要介護2から要介護5の認定を受けている場合、車いすのレンタルに介護保険を適用することができます(※1)。負担割合が1割ならば、月額の負担が数百円程度に抑えられるため、利用を検討している場合は、担当のケアマネジャーさんに相談してみましょう。

※1 介護保険を使って車いすをレンタルするには、要介護2~5の認定を受けていることが条件になります。しかし要支援~要介護1の方でも、例外給付の条件に該当する方は、介護保険を使った車いすのレンタルが可能になることがあります。そのため、まずはケアマネジャーさん等にご相談ください。

2. 性能やサイズによって4種類に分かれる車いす

車いすは、4つの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解して、用途に合わせて選びましょう。

●自走式タイプ
「自走式タイプ」は、自分の手で車輪を回して走るタイプのことを指します。車輪の外側に付いたハンドリムを操作して動かすため、手を使って車輪を回す体力・筋力のある方におすすめです。また、ご家族をはじめとするケアラーに後ろから押してもらうこともできます。ただし、後輪が大きいため、小回りが利きにくいというデメリットがあります。

●介助式タイプ
「介助式タイプ」は、ケアラーが後ろから押して使用するタイプの車いすです。そのため、ハンドリムは付いていません。自分で車いすを操作できない方、車いすを動かす体力・筋力に自信のない方におすすめです。自走式タイプよりも後輪が小さいため小回りが利きやすく、室内での使用にも向いています。

●電動タイプ
「電動タイプ」は、内蔵した電動モーターによって動く車いすで、手元のレバーやボタンを使用して動かします。車いすを自力で動かす体力はないけれど、自分の意思で移動したいという方におすすめです。モーターやバッテリーが搭載されているため重量があり、価格も10万円以上と高いものがほとんどです。

●コンパクトタイプ
「コンパクトタイプ」は、持ち運ぶことを想定してつくられた、軽量で小型なタイプの車いすです。通常の車いすの重量が13〜15㎏あるのに対し、コンパクトタイプは10kg前後と軽いのが特徴です。折りたためるタイプのものもあり、車での移動や旅行時にも使いやすくなっています。ただし、乗り心地や安定感は、通常の車いすよりも劣る点が欠点としてあげられることがあります。

3. 体の状態に合わせて機能を選ぼう

4つの種類に分けられるだけでなく、車いすの中には、さまざまな機能を備えたものもあります。使用する高齢者の体の悩みに合わせて、必要な機能を選びましょう。

●体型に合わせて微調整できる
各パーツの位置や機能を細かくカスタマイズできる車いすを「モジュール車いす」といいます。利用する高齢者の体型に合わせることができるため、乗り心地にこだわりたい方におすすめです。また、使用し始めてから体型や不具合のある部位が変わってもそれに合わせて機能を調整できるため 、長く使うことができます。ただし、メーカーや種類によって調整できるパーツや可動域が異なるため、注意が必要です。

●リクライニング機能
背もたれが倒せる「リクライニング機能」の付いた車いすは、長時間同じ姿勢で座っているのが難しい方におすすめです。なかには、座面も同様に傾けられる「リクライニング・ティルトタイプ」もあります。リクライニングのみの車いすよりも前にずり落ちにくいため、より安全に使用できます。

しかし、リクライニング機能を備えた車いすは、通常のものよりも重量感があり小回りが利きにくいため、持ち運びや狭い場所での移動にはあまり向いていません。

●立ち上がり自動ブレーキ
「立ち上がり自動ブレーキ」は、車いすに乗っている高齢者が急に立ち上がったときに、自動でブレーキがかかる安全システムのことを指します。
高齢者のなかにはブレーキのかけ方がわからなかったり、ブレーキをかけ忘れたまま乗り降りしようとする方がいます。ブレーキをかけないと乗り降りの動作中に車いすが動いてしまい、バランスを崩して転倒するなどの事故が起こりやすくなります。あまり新しい機器の取り扱いが得意でない方は、この自動ブレーキ機能の付いた車いすがおすすめです。

●フットレストの折りたたみ機能
車いすに乗ったときに足を置く部分を「フットレスト」といいます。このフットレストを折りたためる機能があると、足元が広く使えるため移乗がスムーズに行えます。何らかの理由で乗っている方が足漕ぎをする際にも、便利です。


写真:著作者:freepik


●アームレストの跳ね上げ機能
車いすのひじ掛け部分を「アームレスト」といいますが、ワンタッチでアームレストを跳ね上げられる機能のある車いすもあります。アームレストをワンタッチで上げられることで、立ち上がることなくおしりを横すべりさせるだけで、移乗することができます。自力で立ち上がるのが難しい高齢者の場合、本人はもちろんケアラーの負担軽減にもつながります。

●クッションを付けることも可能
コンパクトタイプの車いすの場合、軽量化のため座面にクッション性がないものも多くあります。おしりの骨が当たって痛い場合や、腰痛がひどくて走行時の衝撃がつらい場合は、クッションを付けるといいでしょう。

普通のクッションや座布団で代用する方もいますが、安定性や快適さを求めるなら車いす専用の「体圧分散クッション」がおすすめです。あらかじめクッションがセットになっている車いすの場合は、セットのものを選ぶのが良いでしょう。


写真(下):著作者:freepik

体の状態に合わせて機能を選ぼう

4. まとめ

車いすは、足腰の筋力が低下してくる高齢者を介助するために、なくてはならない道具の一つです。一方で、種類や機能によって特徴が異なるため、今までに車いすを使った経験者が周囲にいない場合、どれを選んで良いか分からないという方も多くいらっしゃいます。そのような時は、利用者本人の乗り心地や使い勝手と同時に、ケアラーの負担を減らすため、介助しやすい機能の付いた車いすを選ぶことを意識してみてください。

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護にあたるケアラーをサポートをするプラットフォームです。 シニアケアをスマートに。高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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