在宅介護で特に大変といわれる排せつ介助。わが家でも尿パッドやリハビリパンツなどを使って、尿漏れしないよう工夫を重ねてきました。これまで行ってきた尿漏れ対策を振り返ります。
認知症の母が尿パッドを使い始めたきっかけは、実家の洗濯機の中から出てきた大量の紙くずです。最初は衣服のポケットの中に残っていたティッシュを誤って洗濯したからだと思っていたのですが、大量の紙くずが何度も洗濯機の中から見つかったのです。
原因を探ると、母が尿漏れで下着が汚れないようトイレットペーパーを股の部分にあてていたからでした。きちんと捨ててくれれば問題なかったのですが、認知症の進行とともに忘れる回数が増え、洗濯機の中が何度も紙くずだらけになってしまいました。
水に溶けたトイレットペーパーは、洗濯機のくず取りネットがキャッチするのですが、衣服や洗濯槽にも付着するため、紙を取り除いたあとに洗濯のやり直しが必要になります。すべて終えるまで2時間近くかかり、わたしのストレスが増えていったのです。
この紙くず問題を解決するために尿パッドを購入したのですが、母はこれまでの習慣が抜けず、声掛けをしないとトイレットペーパーを使ってしまいます。そこで母の寝室の枕元に尿パッドを毎日置いて、寝る前に使うよう促したところ、尿パッドを使ってくれるようになったのです。
これで尿漏れも紙くず問題も解決したと思ったのですが、新たな問題が発生しました。
今度は母が下着に尿パッドをつけたまま洗濯してしまい、尿パッドの中の吸水ポリマー(下の写真)が衣服や洗濯槽に大量に付着するようになってしまったのです。紙くずの処理と同じように吸水ポリマーを手で取らなければならず、洗濯のやり直しなどで2時間近くかかるようになってしまいました。
尿漏れを防ぐ介護用品はたくさんありましたが、母が誤って洗濯する可能性も考えなくてはなりません。尿漏れと洗濯のやり直し問題の両方を解決できる商品を探したところ、失禁パンツ(下の写真)を見つけました。
失禁パンツとは布のパンツの股の部分に尿を吸収する吸水パッドがついていて、ふつうの布のパンツと同じように洗濯できます。この失禁パンツのおかげで、吸水ポリマー問題は解決しました。
失禁パンツのデメリットは、尿パッドほどたくさんの尿を吸収できないことです。2年ほど使ったのですが、次第に母の失禁回数が増え、尿漏れを防ぎきれなくなっていったのです。
母の失禁は夜間が多かったので、失禁パンツに加えて寝室にポータブルトイレを設置して対策しました。しかし日中の失禁も増え始めたので、新たな尿漏れ対策が必要になりました。
母はオムツへの抵抗感があったので、パンツ型の紙オムツであるリハビリパンツ(リハパン)は履いてくれないだろうと思っていました。そのため尿パッドから使い始めたのですが、わたしの妹が家にあったリハパンを、試しに母に履かせてみたのです。
すると、認知症が進行していたこともあって、以前はオムツを嫌がっていた母がすんなりとリハパンを履いてくれたのです。リハパンがピンク色で薄手だったこともあって、母がイメージしていたオムツと違っていたから、受け入れてくれたのかもしれません。
母がリハパンを履くようになり、尿漏れの回数は減りました。最初は排尿2回分を吸収するリハパンを使っていましたが、失禁回数や尿量に応じて尿をたくさん吸収できるリハパンに変更し、現在では4回分吸収できるリハパンに変えて、尿漏れは落ち着きました。
今度こそ尿漏れも洗濯のやり直し問題も解決したと思ったのですが、母はリハパンも布のパンツのように扱って洗濯してしまうのです。リハパンは尿パッドよりも吸水ポリマーの量がはるかに多いので、今度は大量の吸水ポリマーが衣服や洗濯機に付着するようになってしまいました。
洗濯のやり直し問題が起きたあと、洗濯機付近に「トイレットペーパーや尿パッドを洗濯しちゃダメ」と貼り紙をして、母に注意喚起をしてきたのですが、認知症が重度まで進行すると貼り紙の効果もありません。それまでは母に洗濯をしてもらっていたのですが、やむを得ず別の対策をしました。
洗濯機のふたにベビーガードをつけ、すぐ横に洗濯カゴを設置したのです。ベビーガードとは、赤ちゃんが引き出しから危険物などを持ち出さないようにするためのロックで、わが家では下の写真のように洗濯機のふたに取り付けました。
この対策を行ってからは、母は汚れたリハパンを洗濯機の横の洗濯カゴに入れるようになり、洗濯はわたしやヘルパーさんがやるようにして、洗濯のやり直し問題を解決したのです。
それでもたまに母は台所などで、リハパンについた汚れを水で洗っています。するとリハパンが大量の水を吸って、バレーボールくらいのサイズに膨れ上がり、水を吸った大きなリハパンがトイレの影やタンスの中から出てくることもあります。
認知症の母が尿パッドやリハパンを洗濯したがるのは、母親として家族の洗濯を一手に担っていた頃のイメージが記憶に残っているからだと思います。
11年間の尿漏れ対策を振り返りました。
著者:工藤 広伸
介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年より岩手で暮らす認知症の母を、東京から通いで遠距離在宅介護を続けている。途中、認知症の祖母や悪性リンパ腫の父も介護し看取る。介護に関する書籍の執筆や、企業や全国自治体での講演活動も行っている。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書に『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)、『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか
介護ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/
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