介護はトラブルの連続です。しかし、行政や関係機関に相談したとしても、すぐに問題が解決するとは限りません。大変な時に支援が得られず、「相談しても仕方ない。自分が動くしかない」と、相談を諦めてしまう方は多いものです。

1. 事例で学ぶ:Yさん(50代・女性)「ケアマネジャーが頼りにならない」

会社員のYさん(50代・女性)の父親は、17年前に脳梗塞で車いす生活になった妻を老老介護しています。60代で妻の介護を始めた父親も80歳を迎えて物忘れ症状が出始め、要支援2と認定されました。

Yさんが気がかりなのは両親の食生活です。当初は慣れないながらも手料理を頑張っていた父親ですが、腰を痛めたことから最近では買い物にも行けず、缶詰やカップ麺で済ませることが多くなっています。Yさんも週末にはできる限り実家を訪れ、家事のサポートをしたり、手作りのお惣菜を届けたりと努力してきましたが、疲労が蓄積して仕事にも支障が出ています。訪問介護で夕食を週2回作ってもらえるようになったものの、母親の食欲が落ち、急に痩せてしまったことが心配です。

少しでも母親の栄養状態を改善したいと、Yさんはケアマネジャーに「訪問ヘルパーさんが夕食の手伝いに来た際、食後にサプリメントを出してほしい」と相談しました。父親にサプリメントを飲むように伝えても、忘れることが多かったからです。しかし、ケアマネジャーからは「介護保険のルール上、そのような対応はできません」と断られてしまいました。Yさんは「結局、私がなんとかするしかないのか……」と諦めてしまいました。

私がYさんから相談を受けた際、Yさんは「ケアマネは頼りにならない」「全然動いてくれない」と憤慨しておられました。詳しくお話を伺うと、介護保険の範囲外のことや、対応が難しい要望をお願いして断られた経験から、そのように感じておられるようでした。

介護保険サービスで対応できる範囲には限りがあります。例えば、訪問介護サービスでは、トイレへの付き添いやおむつ交換などの身体介護、食事の準備やポータブルトイレの掃除といった生活支援が受けられます。また、一部の医療行為として、爪切りや湿布の貼付、目薬の点眼なども(いくつかの条件を満たしたうえで)認められています。しかし、サービスは本人に関わる範囲に限られ、家族の衣類の洗濯やトイレ掃除などには対応できません。Yさんがケアマネジャーに相談した「食後にサプリメントを出す」という依頼も、医師が処方する薬の服用補助は可能ですが、市販のサプリメントに関しては認められていません。そのため、ケアマネジャーはYさんの要望を断ったのです。



写真:著作者:freepik

2. 伝え方を変えると対応が激変! 関係も良好に

Yさんには「サプリメントを出してほしい理由をケアマネジャーに伝えてみましょう」とアドバイスをしました。そもそも、Yさんが懸念しているのは「両親の食生活の偏り」と「母親の急な体重減少」があったからです。

Yさんは「母親は先月から3kg以上体重が減り、食べる量も減っていて心配だ」とケアマネジャーに伝えました。すると、ケアマネジャーはすぐに自宅を訪問し、週2回通っているデイサービスにも連絡を取り、「お母様の体重減少について、デイサービスや訪問介護と連携して対応を検討します」と話してくれました。加えて「お父様も他者と関わり、活動量を増やすと良いかもしれません。リハビリを取り入れたデイサービスを利用してみてはいかがでしょうか?」と、父親への対応策も提案してくれました。

Yさんは、まるで別人のように動き始めたケアマネジャーの様子に「伝え方次第でこんなにも変わるんだ!」と驚いたそうです。これまでYさんは、介護保険の範囲外の依頼をして断られることが続き「ケアマネジャーは頼りにならない」と感じていました。そのため、両親の状況や自分の負担について、一度もケアマネジャーに相談していなかったのです。

しかし、この出来事をきっかけに、Yさんは「ダメもとで相談してみる」「断られたら、お願いしたいことの理由や目的を具体的に伝える」こと、さらに「仕事に支障が出ているため、頻繁に実家に来られない」など、自分の状況も併せて伝えることを意識するようになりました。

その後、Yさんは両親の看取りを終えました。以前は「ケアマネはあてにならない!」「動いてくれない!」と不満を抱いていたYさんでしたが、「ケアマネジャーさんは戦友です。あの方がいてくれなかったら、このように穏やかに看取ることはできなかった」と話してくれました。



写真:著作者:ijeab/出典:Freepik

3. 要望と理由をセットにして伝えるのがコツ

私が代表を務める介護者メンタルケア協会では「助けを求めましょう。サポートしてほしい内容を具体的に伝えましょう」とお伝えし続けています。しかし、介護をされている方から「相談しても何も変わらなかった……」とのお声が多く届くのも事実です。

もし、今まさに「助けを求めても、どうせ何も変わらない」と、苦しい思いを抱えている方は「どのようなサポートを必要としているのか」という要望に加えて「今、何に困っているのか」「何を不安に感じているのか」「このままではどうなってしまうと感じているのか」といった、サポートを必要としている理由を一緒に伝えてみてください。できれば、箇条書きのメモを作り、相談する際に相手にも渡しておくといいでしょう。

介護でよくあるトラブルや、ケアマネジャーとのコミュニケーションのコツは、ダイヤモンド社から出ています『がんばらない介護』 でもご紹介しています。ぜひ参考にしてください。



写真(トップ):ピクスタ

この記事の提供元
Author Image

著者:橋中 今日子

介護者メンタルケア協会代表・理学療法士・公認心理師。認知症の祖母、重度身体障がいの母、知的障害の弟の3人を、働きながら21年間介護。2000件以上の介護相談に対応するほか、医療介護従事者のメンタルケアにも取り組む。

関連記事

シニアの体型とライフスタイルに寄りそう、 2つの万能パンツ

2022年7月23日

排泄介助の負担を軽減!排尿のタイミングがわかるモニタリング機器とは?

2022年9月23日

暮らしから臭い漏れをシャットアウト! 革新的ダストボックス

2022年9月5日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする