高齢者向けの入所施設を探すなかで、特別養護老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いが気になる方もいるのではないでしょうか?

そこで本記事では、それぞれの施設の特徴や費用、入居基準などの違いについて詳しく解説していきます。

1. 各施設の特徴

■特別養護老人ホーム(以下特養)とは
「老人福祉法第20条の5」に基づいた、常時介護を必要とする高齢者のための生活施設で、主に社会福祉法人や地方自治体が運営しています。

介護保険が適応される公的施設のため、民間の介護施設と比較して費用負担を抑えられるのが特徴です。

■サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)とは

「高齢者住まい法第5条」に基づいた、高齢者のための賃貸住宅です。

「床面積は原則25㎡以上、バリアフリー」などの登録基準があり、主に民間企業が運営しています。サ高住には以下の2種類があり、そのほとんどが「一般型」です。

一般型・・・必要な介護サービスを個別で契約して利用する
介護型・・・施設内で必要な介護サービスを利用する

外泊や外出も自由にでき、生活の自由度が高いのが特徴です。

2. 費用の違い

■特養の費用目安
入居一時金などの初期費用は不要で、月額費用のみがかかります。月額費用は、以下の項目の合計金額です。

・居住費
・食費
・施設サービス費(介護サービス加算)
・日常生活費

1ヶ月あたりの利用料金は施設や居室の種類により異なりますが、8〜14万円程度となります。
なお、特養では居住費と食費に対して減免制度が適用されるため、所得が低い人も継続して入居しやすい仕組みになっています。

■サ高住の費用目安
サ高住は「高齢者向けの住居」という位置づけのため、入居する際には敷金が必要です。敷金と、入居後の月額利用料の相場をまとめました。

敷金
・一般型・・・数万円~数百万円
・介護型・・・数万円~数千万円

月額利用料
・一般型・・・5万円~25万円
・介護型・・・15万円~40万円

月額費用は施設により異なりますが、一般的には以下の項目の合計金額となります。

・居住費
・管理費
・食費
・生活支援費
・介護保険サービス利用料

介護度が上がり、介護サービスの利用が増えると、その分費用も多くかかります。なお、サ高住の中には、入居時に一定期間の家賃を前払いする「前払い方式」を採用しているところや、初期費用として「保証金」を設定している住居もあります。

3. 入居基準の違い

■特養の入居基準
65歳以上かつ要介護3以上の人
40~64歳で特定疾病のある要介護3以上の人

ただし、要介護1・2でもやむを得ない事情があると認められた場合は、特例で入居できるケースもあります。

■サ高住の入居基準
以下のいずれかに該当する単身・夫婦世帯が対象です。

60歳以上の人
60歳未満で要介護または要支援の認定を受けている人

ただし、これ以外に独自の基準を設けている住居も多いです。

「一般型」は自立〜要介護度の低い方が対象である一方、「介護型」は要介護5までの方が入居できる場合もあります。

また、賃貸住宅のため入居には連帯保証人が必要です。

4. サービス内容の違い

■特養のサービス内容
食事や入浴、排せつなどの身体介護を24時間体制で受けられるほか、機能訓練や健康管理などの生活支援も充実しています。

医師や看護師の配置も義務づけられており、医療的ケアにも対応しています。

ただし、導入している医療機器や医師の勤務形態は施設により異なるため、必要な医療行為が受けられるか事前に確認しておきましょう。

多くの施設で看取りに対応しており、終身利用も可能です。

■サ高住のサービス内容
必ず受けられるサービスは以下の2つです。

・安否確認・・・職員が定期的に利用者の部屋を訪問し、異変があれば迅速に対応する
・生活相談・・・利用者の心身の不安、介護・通院の悩みなど生活のさまざまな相談に乗ってくれる

介護サービスが必要な場合、一般型では個別で介護サービス事業者と契約することで利用できます。介護型では、施設が提供する介護サービスの利用が可能です。

また、近年では要介護4・5の入居者も一定数存在することから、看取りに対応できる施設も増えています。

5. 各施設のメリット・デメリット

●特別養護老人ホーム
メリット
・時間を問わず介護サービスを受けられる
・入居一時金が不要で月額利用料も安い
・看取りに対応している施設が多い

デメリット
・原則要介護3未満の人は入居できない
・入居希望者が多く、入居待ちが発生しやすい

●サ-ビス付き高齢者向け住宅
メリット
・生活の自由度が高く、好きな時間に食事や入浴ができる
・高齢でも、一般的な賃貸住宅と比較して入居審査が通りやすい
・必要な分だけ介護サービスを受けられる

デメリット
・一般的な賃貸住宅よりも費用が高額な場合が多い
・要介護度が上がると退去を求められるケースもある


両者を比較すると、入居条件や生活の自由度に違いがあることがわかります。

金額を抑えながら手厚い介護を受けたい人は特養が、ある程度自立していて、自由な生活を希望する人はサ高住がおすすめだといえるでしょう。

6. 特別養護老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の違いのまとめ

●特別養護老人ホーム
費用目安
入居一時金・・・なし
月額利用料・・・8~14万円

入居基準
・65歳以上かつ要介護3以上の人
・40~64歳で特定疾病のある要介護3以上の人
・特例により入居が認められた要介護1・2の人

サービス内容
・身体介護・生活支援・医療的ケア

看取り
・多くの施設で可能

向いている人
・要介護度が高く、常時介護を必要としている人
・費用負担を抑えたい人

●サービス付き高齢者向け住宅
費用目安
敷金
・一般型・・・数万円~数百万円
・介護型・・・数万円~数千万円
月額利用料
・一般型・・・5万円~25万円
・介護型・・・15万円~40万円

入居基準
以下のいずれかに該当する単身・夫婦世帯
・60歳以上の人
・60歳未満で要介護または要支援の認定を受けている人
※「介護型」は、要介護5まで入居可能な場合あり。

サービス内容
・安否確認・生活相談のほか、必要に応じて介護サービスも利用可能。

看取り
・住居により異なる

向いている人
・生活の自由度を重視する人
・ある程度自立した生活ができ、介護サービスの利用頻度が少ない人



監修者:
中谷ミホ

写真(トップ);著作者:Lifestylememory/出典:Freepik


この記事の提供元
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著者:小原 宏美

大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)

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