2024年7月、全3回にわたりレポートをお届けしたイオングループ運営のデイサービス「イオンスマイル」。取材の際、イオンスマイルの特色であるマシンを使った筋力トレーニングに加え、「買い物」をリハビリの一環として行う店舗があることを知り、取材を希望。10月下旬に、館山店の取材が実現しました。地域ごとの買い物事情、高齢者にとっての買い物の意義、生活の中で行うリハビリの重要性についてさまざまな気づきを得た取材のレポートをお届けします。
千葉県の南端に位置し、観光地としても人気がある館山市。2024年6月、イオンタウン館山内にイオンスマイル館山店がオープンしました。取材当日、編集部は晴天の10月下旬に同店を訪れ、午前中のプログラムを見学しました。
利用者は女性5名、男性2名の計7名。スタッフの運転するワゴン車で通所し、到着後は血圧測定などのバイタルチェックを行いました。その後、皆そろって準備体操、口腔体操を行い、小休止を経て到着から約30分後の10時過ぎから、個々のマシントレーニングの時間が始まります。
写真上:イオンタウン館山、写真下:イオンスマイル館山店。
今回取材に応じてくれたのは、9月から利用している中山雅廣さん(70歳)。左手に麻痺がありながらも、ローイングやレッグエクステンションなどのマシンを積極的に利用し、平行棒を使った歩行訓練も行っています。「ここでの筋トレは家での生活に役立つ」と話し、家の中での歩行が楽になったそうです。
写真上:レッグエクステンションに励む中山さん。4種のマシンの中でもこちらが一番ハードなのだそう。写真下:平行棒での歩行訓練の様子。 運動中、両足に重りを付けている。
イオンスマイルでの筋力トレーニングを楽しみ、積極的に取り組んでいる中山さん。体に不自由を感じながらも、デイサービスや自宅で自身の体を鍛え、機能の維持・向上に努める姿勢が伺えます。
そんな中山さんにとって大きな課題だったのが、買い物でした。自宅周辺にスーパーなどの店舗がないため、車の運転ができない中山さんにとって買い物は深刻な問題でした。
「月に2回くらい、知り合いに頼んで自分の好きなものを買ってきてもらっていたから、そんなにストレスはたまっていなかったんだけど、やっぱり外へ行かないと気分転換にならないからね」と話します。その知り合いも中山さんと同じく高齢のため、いつまでも頼れるわけではなく、「自分で選ぶ」買い物をサポートしてくれるデイサービスがあるということが決め手となり、以前の施設からイオンスマイル館山店に移ることにしたそうです。
買い物だけでなく、ATMでの現金の引き出しや服用している処方薬の受け取りなどもイオンタウン内で済ませることができ、「まさに願ったりかなったりなんだよ」と笑顔で話してくれました。
約1時間のマシントレーニングを終え、いよいよ買い物リハビリの時間です。今回参加したのは、中山さんともう一人の男性利用者。それぞれに1人のスタッフが付き添い、カートを引きながらショッピングエリアへ出発します。ノースモールにあるイオンスマイルの店舗から、ウエストモールの専門店街を右手に眺めつつ、イオンのショッピングエリアを目指します。健康な大人なら5分もかからない距離ですが、買い物リハビリではゆっくりと会話を楽しみながら進みます。
10分ほどでフードコート近くの入口に到着し、まずはベンチで小休止。用意してきた買い物メモを確認しながら、最初にヘルス&ビューティーの売り場に立ち寄り、栄養ドリンクを購入。続いて、いよいよ食料品売り場へ向かいます。
写真上:イオンのショッピングエリアに出発。写真下:フードコートに到着し、買い物前の小休止中の様子。
写真上・下:買い物中の中山さんとスタッフ。パック数や内容量、価格、好みなど、さまざまな要素をスタッフに相談しながら購入するものを決めていきます。
焼きうどん、切り餅、冷凍のライスバーガー、菓子パン、お菓子など効率よく買い回り、サポートレジへ。
中山さん「2000円で収まるかな…」
スタッフ「2000円は超えちゃうんじゃない? 冷凍食品もあるし、お餅も高いからね。3000円はいかないかな?」
中山さん「本当は1500円くらいに抑えないといけないんだけど」
この日も予算を少しオーバーしましたが、予定していたものが買えたことで満足そうな中山さん。「あんまり食費をけちってもね……。今は物価が上がってきて大変だけど、たまにはケーキとかも食べたい。甘いものが大好きで、アイスクリームも買って帰れたらいいなと思ってるんだ」
電子マネー(WAON)で購入した商品は、スタッフが保冷機能付きのバッグに詰め、そのバッグをカートに載せます。片手に麻痺がある中山さんにとって、こうしたちょっとした行為も自分で行うのは難しいのです。
そして帰路へ。カートを自分で押しながら、まずはフードコートへ向かい、最後の休憩タイムを取ります。お昼前の時間帯で適度にお客さんが行き交う店内を眺めながら、中山さんは「(買い物は)飽きないね。いろんな人も見られるし」と話します。そこで、買い物メモやよく買うものについてもお聞きしました。
写真上:中山さんが用意してきた買い物メモ。写真下:買い物後、最後の小休止中の様子。
「朝に書くこともあれば、前日の夜に書いておくこともある。行く直前だと焦って忘れることがあるからね。朝はバナナとパンを食べるから、バナナとパンは切らさないようにしている。あとは牛乳。寒い時はコーヒーを飲むけど、自分で準備しなきゃいけないから、熱いコーヒーを持ってうろうろするのも危ないんだよね。
ヤクルトのフタを開けるのも、納豆を混ぜるのも片手でやらないといけないから以前はよく失敗してた。でも、どうしたら食べやすくなるか工夫していたら、ほぼできるようになったよ。(納豆には)薬味もちゃんと入れてる。今日買った焼きうどんも、ちゃんと作れるんだ。目玉焼きや卵焼きも作る。手が使えないと手間はかかるけど、仕方ないね」
最後の小休止を終えて外に出て、ウエストモールの脇を通り、イオンスマイルへ戻ります。約1時間の買い物リハビリが終了し、帰るまでの時間は水分補給や整理体操をしながら過ごしました。そして、12時半にプログラムが終了し、スタッフに誘導されて車に乗り込み、帰路につきました。
写真上:買い物後、最後の小休止中の様子。写真下:順番に車に乗り込み、帰宅の途につきます。
このサービスを開始した背景や狙いについて、今回の取材に立ち会った事業部長の福部貴康さんにお話を伺いました。
「買い物支援のサービスを行っているデイサービスは他にもありますが、イオンスマイルの強みは、イオングループの総合スーパー(GMS)としてその体制を活かせるところです。何よりこのサービスを始めたきっかけは、地域の要望があったことです。高齢化が進む中で、買い物難民と呼ばれる人たちが増え、複合的な問題が生じている地域があります。ある地域では、高齢者同士が支え合って日常を何とかしのいでいる状況がありました。しかし、高齢者同士が助け合うだけでは限界があると感じたのです。『この先はどうするのか?』といった不安の中で、買い物支援が必要だと考えました」
このような買い物困難者の問題は、特に首都圏の一部の市町村で深刻化しており、ニュースなどで取り上げられることも少なくありません。高齢化や地元商店街の衰退によって、生活必需品の購入が難しい状況に直面している方々が増えています。こうした問題の中心には高齢者がおり、店舗が近くにないだけでなく、高齢者自身の身体や認知能力の問題も相まって自力での買い物が難しいという背景があります。さらに、この状況は今後も悪化すると予想されています。
福部さんは続けて語ります。
「買い物をリハビリの一環として行うことで、自分で商品を選ぶ楽しさが得られ、歩くことで歩行訓練にもなります。また、従業員と相談しながら自分の好きなものを選ぶプロセスは認知症予防にもつながります。買い物リストを作成すること自体が認知機能の訓練になるため、日常生活の中で行うリハビリは、認知機能の維持にも効果的です。こうした点で、イオンスマイルのサービスは単なる買い物支援とは異なる意義があるのです。
現在は館山店と大網店の2店舗で行われている買い物リハビリですが、イオンスマイルは今後、より多くの店舗でこのサービスを提供する予定です。特に地方では買い物のニーズが高いと聞いています。地方にはコンビニもない、移動販売も来ない地域があり、車がなければ生活できません。車を手放した方はどうすればよいのか? そこに支援が届かない状況があるのです。イオンならば、この問題に応えられると考えています。イオンの広い店舗には食料品だけでなく、お酒や衣類、日用品も揃っているため、従業員と相談しながらさまざまな商品を購入できるのです。この点で、他の事業者にはない強みがあります」
イオンならではの規模と多様な品揃えを活かし、デイサービスという枠を超えて高齢者の生活を支援する「買い物リハビリ」は、地域の問題に応えるユニークな事業と言えるでしょう。それがイオンスマイルの掲げる新しいリハビリの形なのです。
今回の取材で目にしたのは、イオンタウンという商業施設内のイオンスマイルに通う利用者たちのいきいきとした運動風景、そしてイオン店舗内を歩き、会話を楽しみながら買い物をする中山さんとスタッフの和やかな姿でした。これらの風景は、「介護」の枠を超え、地域社会とデイサービスの新たな接点を強く印象づけるものでした。
イオンスマイルが推進するこの事業は、利用者の身体的なニーズを満たすだけでなく、精神的な側面にも良い影響をもたらしています。今後もこの取り組みのさらなる発展に期待したいと感じました。
・イオンスマイル館山店
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著者:MySCUE編集部
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