介護付き有料老人ホームとグループホームは、入居基準や利用料金、受けられる医療的ケアなどに違いがあります。今回は、それぞれの施設の特徴と違いをわかりやすく解説します。
■介護付き有料老人ホームとは?
主に民間企業が運営する、「老人福祉法」と「介護保険法」に基づいた入所施設です。
「介護付き」と名乗れるのは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている有料老人ホームのみで、国が定めた人員基準や設置基準を満たしています。
介護付き有料老人ホームには「一般型」「外部サービス利用型」の2種類あり、施設数が多いのは「一般型」です。本記事では「一般型」について解説します。
■グループホームとは?
別名「認知症対応型共同生活介護」とも呼ばれ、認知症の高齢者に専門的なケアを提供する共同生活施設です。主に民間企業や社会福祉法人、NPO法人が運営しています。
少人数の利用者が、各々の個室と共有スペースで生活する「ユニットケア」を採用しており、プライバシーを守りながら他者との交流も行えます。
介護保険法の「地域密着型サービス」に該当し、原則として居住地の市区町村にあるグループホームのみ入居可能です。
■介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームには以下の3つのタイプがあり、それぞれの入居条件は以下の通りです。
・自立型・・・入居時点で要介護認定を受けていない自立の人
・介護専用型・・・要介護1以上の人
・混合型・・・自立〜要介護認定を受けている人
上記以外にも、施設ごとに細かい基準が設けられており、認知症患者の受け入れ可能な施設も増えています。
■グループホーム
・医師から認知症の診断を受けている
・原則、65歳以上
・要支援2または要介護1以上
・施設と同じ市区町村に住居と住民票がある
ただし、施設によっては、65歳未満の方であっても、若年性認知症や初老期認知症といった特定疾患の診断を受けていれば入居できる場合があります。
■介護付き有料老人ホーム
・入居一時金・・・0~数億円
・月額費用・・・12~40万円
施設によって設備や内装、職員の人数などが異なるため、費用面での幅も大きくなっています。
月額費用は、以下の項目の合計金額です。
・家賃
・管理費
・介護サービス費
・自費サービス費
・追加サービス費
・医療費
・食費 など
なお、「一般型」の介護サービス費は、要介護度に応じた定額料金となっています。
■グループホーム
・入居一時金・・・数万円〜20万円
・月額費用・・・15〜20万円
月額費用は、以下の3つの項目の合計金額です。
・日常生活費
・介護サービス費
・サービス加算
施設による違いはあるものの、介護付き有料老人ホームより比較的低価格で利用できます。
■介護付き有料老人ホーム
「一般型」では、24時間体制で介護サービスが提供されます。また、看護師の配置が義務づけられているため、必要に応じて医療的ケアにも対応しています。
ただし、看護職員の勤務時間や医療設備は施設により異なるため、高度な医療的ケアが必要な人は事前に対応可否を確認しておきましょう。
■グループホーム
グループホームにも介護職員が常駐しており、24時間体制で介護サービスを利用することが可能です。
また、認知症の進行を抑制する目的で、掃除・洗濯・調理などは介護職員と利用者で一緒に行うこともあります。
グループホームには看護師の配置義務がなく、医療的ケアの充実度や看取りケアの対応可否は施設により異なります。
医療的ケアを必要とする人は、施設選びの際に医療的ケアの有無を確認しましょう。
◾️介護付き有料老人ホーム
メリット
・24時間体制で介護サービスを受けられる
・看護師が常駐しており、医療的ケアも利用できる
デメリット
・費用面の負担が大きい
・施設ごとに特色が異なるため、施設選びの際、迷いやすい
◾️グループホーム
メリット
・認知症ケアを専門とする職員が常駐している
・なじみのある地域での生活を継続できる
デメリット
・看護師の配置義務がなく、医療的ケアを受けられない場合がある
・少人数の施設のため、入居者同士の相性が合わないと調整が難しい
介護付き有料老人ホームは、施設によって入居基準が異なるのに対し、グループホームは認知症ケアに特化している点を把握しておくとよいでしょう。
【入居基準】
◾️介護付き有料老人ホーム
・原則65歳以上
・自立〜要介護
※「介護専用型」「混合型」「自立型」の3種類があり、それぞれで入居基準が異なる。
◾️グループホーム
・医師から認知症の診断を受けている
・原則65歳以上
・要支援2もしくは要介護1以上
・施設と同じ市区町村に住居と住民票がある
【介護体制】
◾️介護付き有料老人ホーム
・24時間体制で介護サービスを受けられる
◾️グループホーム
・利用者に応じた介護サービスの提供
・認知症の進行を抑制するための機能訓練・生活支援
【医療サポート】
◾️介護付き有料老人ホーム
・看護師が常駐し、医療的ケアを提供
◾️グループホーム
・基本的な健康管理と見守り
【費用の目安】
◾️介護付き有料老人ホーム
・入居一時金:0~数億円
・月額費用:12~40万円
◾️グループホーム
・入居一時金:数万~20万円
・月額費用:15~20万円
【看取り】
◾️介護付き有料老人ホーム
・可能な施設が多い
◾️グループホーム
・施設により異なる
【入りやすさ】
◾️介護付き有料老人ホーム
・すぐ入居できる場合が多い
◾️グループホーム
・少人数のユニットケアである特性上、待機期間が生じやすい
【入居に向いている人】
◾️介護付き有料老人ホーム
・設備や職員体制が充実した施設に入居したい人
◾️グループホーム
・医療的ケアを必要としていない認知症の人
・住み慣れた地域での生活を継続したい人
監修:中谷ミホ
著者:小原 宏美
大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)