花粉の飛散量は、前年の夏の気象条件に大きく影響されます。気温が高く、日照時間が多く、雨が少ない夏は、スギの花芽が多く形成され、翌春の飛散量が増加します。
2024年の夏は猛暑となり、2025年春の花粉飛散量は広範囲で例年より多くなることが予想されています。毎年花粉症に悩まされている方は、特に早めの対策をおすすめします。また、中高年になって初めてスギ花粉症を発症する人もいます。花粉症の症状を軽減するために、花粉症対策の基本から治療法、症状軽減のためのポイントまで解説します。
花粉症とは、花粉を原因としたアレルギー性疾患です。花粉の種類は多く、飛散時期も地域によって異なります。主にスギ(2〜4月)、ヒノキ(3〜6月)、シラカンバ(4〜6月)、イネ科のカモガヤやススキ(5〜11月)、キク科のヨモギやブタクサ(8〜10月)などがあります。
日本で最も多いのは、これから飛散シーズンを迎えるスギの花粉症です。人間の体には、細菌やウイルスを排除する免疫システムが備わっていますが、花粉症では体が花粉を異物と認識して抗体を作ります。そのため、再度花粉が侵入すると、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、涙などの症状が表れます。さらに、頭痛や微熱、せき、肌のかゆみなどの症状も表れます。
花粉症は、家族にアレルギー体質をもつ人や、花粉に接する機会が多い人が発症しやすい病気です。現在花粉症でない人も、予防のためには花粉と接しないことが重要です。また、すでに花粉症の人も症状を悪化させないため、対策を取りましょう。
特に都会では、晴れて風が強い日は注意が必要です。都会は土の地面が少ないため、花粉は土に吸収されずに踏まれたり、強風で粉砕されたりして粒子が細かくなります。粒子が細かくなると、空中に舞い上がりやすいため、吸い込むリスクが高まります。また、大気汚染物質が付着した花粉を吸い込むと、さらに症状が悪化しやすくなります。
花粉症対策では、日ごろから情報を収集することが大切です。花粉の飛散量が多い日は外出を控えるなど、予め状況を把握したうえで行動すれば、花粉との接触を最小限に抑えることができます。以下のサイトなどを参考にしましょう。
・環境省 花粉情報サイト
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/
・林野庁 林野庁における花粉発生源対策
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/
・NPO法人花粉情報協会 花粉いんふぉ
https://pollen-net.com
症状が重症でない場合、ドラッグストアなどで購入できるOTC(市販)医薬品で症状を軽減する方法があります。症状が出始めたころから薬を使用すると、重症化を防ぐことができます。
目の症状には点眼薬、鼻の症状には内服薬や点鼻薬があります。最近では、医療用医薬品からOTC 薬として転用され、効果の高いスイッチOTC薬が増えています。十分な効果を得るためには、薬剤師や登録販売者に症状を伝え、副作用を確認してから選ぶことが重要です。また、血管収縮成分の入った点鼻薬は鼻詰まりに即効性がありますが、連用するとかえって鼻詰まりが悪化する場合があるので、長期間使用するのは避けましょう。
1週間以上症状が改善しない場合は、医療機関を受診することをおすすめします。治療法については、症状やライフスタイルなどを考慮して、主治医とよく相談することが大切です。
花粉が本格的に飛散する2週間前から治療を始めると治療効果が高いため、毎年症状が重い人は、早めに医療機関を受診しましょう。
花粉症の検査や治療が必要な場合は、耳鼻咽喉科、眼科、内科を受診しましょう。血液検査やプリックテストで花粉症の有無がわかります。治療には、症状を抑える対症療法と根治療法があります。
対症療法では、アレルギーの症状全般を抑える飲み薬、目の症状には点眼薬、鼻の症状には鼻噴霧用スプレーなど、症状に合わせて薬を組み合わせます。根治療法は、花粉の抽出液を注射するアレルゲン免疫療法(減感作療法)と、飲み薬を舌の下に含んで飲み込む舌下免疫療法があります。免疫療法は花粉シーズンにはできないため、6〜11月に開始し、副作用や治療期間(3〜5年程度)を確認することが必要です。
花粉症対策は、花粉を部屋に持ち込まないことが重要です。以下のポイントを実践して、室内から花粉を徹底的にシャットアウトしましょう。
5-1.玄関に入る前に花粉を払う
服に付着した花粉を家の中に持ち込まないよう、帰宅したら玄関に入る前に上着についた花粉をしっかり払い落とします。玄関にハンガーを用意し、一番外側に着ているコートなどはそこに掛けるようにすると、室内への侵入をさらに防げます。
5-2.玄関にウエットティッシュを常備
帰宅したら、室内に入る前に、玄関先でウエットティッシュを使って花粉を拭き取ります。衣服や手足のほか、靴も拭いておくと安心です。使ったウエットティッシュはふた付きのゴミ箱などに捨てましょう。
5-3.帰宅後はすぐに手洗い、うがい、洗顔をする
帰宅したらすぐに石けんを使って手を洗い、うがいと洗顔も忘れずに行って、花粉を洗い流します。また、花粉は髪の毛にも付着しているので、帰宅後はなるべく早めに入浴やシャワーをすませましょう。
5-4.花粉の流入を防ぎつつ換気する
感染症予防のためには換気も重要ですが、窓を全開にすると大量の花粉が室内に流入してしまいます。窓を開ける幅は10㎝ほどにし、レースのカーテンを閉めれば、花粉の流入量をかなり減らすことができます。カーテンは定期的に洗濯しましょう。花粉の流入を防ぐための専用の網戸も市販されています。なお、早朝は花粉の飛散量が比較的少ないので、その時間帯に換気するのが理想的です。
5-5.こまめに掃除する
フローリングの床はウエットシートで拭き、カーペットは丁寧に掃除機をかけます。ただし、掃除機のタイプによっては排気で花粉を舞い上げてしまうので、その場合は粘着ローラーで掃除します。ソファも粘着ローラーで掃除しましょう。
5-6.適度な湿度を保つ
加湿器などを使って室内を保湿すると、花粉が舞い上がりにくくなります。鼻やのどの粘膜の乾燥を防ぐ意味でも、適度な湿度を保つことが大切です。
5-7.洗濯物は部屋干しする
花粉が飛散する時期は、洗濯物や布団は部屋干しするのが基本です。衣類を洗濯する際は柔軟剤を使うと、静電気の発生が抑えられ、花粉が付着しづらくなります。
外出時には、マスクをする、髪を束ねる、メガネをかける、上着はつるつるした素材のものを選ぶことも有効です。
鼻うがいは、洗浄液で鼻腔内の花粉を洗い流して、鼻水や鼻詰まりなどの症状をやわらげます。人肌程度の生理食塩水、もしくは市販の専用洗浄液を片方の鼻に流し込み、反対の鼻の穴から出します。このとき「あーっ」と声を出しながら行うと、スムーズに洗浄液が流れていきます。行うタイミングは帰宅時や入浴時、就寝前など。洗いすぎると鼻の粘膜を傷つけるため、1日2 回程度までにしましょう。
監修: 大久保公裕先生
大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)
日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部感覚器科学分野 教授。1984年日本医科大学卒業、1988年同大学院耳鼻咽喉科卒業後、1991年までアメリカ国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後は日本医科大学医学部講師、准教授を経て、2010年に教授就任。免疫アレルギー性疾患のエキスパートであり、花粉症治療においては日本を代表する存在。アレルギー性鼻炎の新しい免疫療法の開発も積極的に進めている。
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護にあたるケアラーをサポートをするプラットフォームです。 シニアケアをスマートに。高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。