年齢を重ねると、足に合わない靴からタコやウオノメ、外反母趾、巻き爪などのトラブルが起こりやすくなりますが、適切な靴を選べば、足元から健康を守り、元気に外へ出かけることができます。今回は、特にシニアの皆さんが自信を持ってお出かけできるよう、自分にぴったりの靴を選ぶためのポイントを紹介します。
合わない靴を履いていると、無意識のうちに体に不自然な力が入ってしまいます。そのため、タコやウオノメ、外反母趾、巻き爪などのトラブルにつながったり、血流の悪化による疾病を引き起こしたりと、健康生活に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
「靴が合わないと正しい姿勢を保つことができず、さまざまなトラブルにつながりやすくなります。また、足が痛いのに我慢して同じ靴を履き続けたために、痛みがひどくなって病院に駆け込む人も多くみられます」と話すのは、足の専門医である、足のクリニック 表参道 院長の桑原靖先生です。
日本人は靴を履く歴史が浅いために、比較的靴や足のケアに無頓着なのだとか。そのため、本来は予防・解消できるはずの足のトラブルが起こりやすいといいます。
足のトラブルを防ぐために、まず知っておきたいのが「足の基本的な構造」です。足を構成している骨は、片足で26〜28個、両足で50個以上あり、それらの骨は腱や靱帯でつながって、アーチ構造を成しています。
足のトラブルチェックテスト
1.「ゆっくり大股で歩く」ことができない
2.ぺたんこ靴よりヒールのある靴のほうがラク
3.夜寝ているときに足(ふくらはぎ)がよくつる
4.足の裏や指にタコやウオノメがよくできる
5.家族や親戚で足に悩んでいる人がいる
6.ズボンの裾を左右同じになると、一方が合わない
「アーチが崩れると、さまざまな足のトラブルの原因になります。早めに対処して、深刻な事態を防ぎましょう」と桑原先生。まずは、チェックテストでトラブルが起きていないか(あるいは起こる可能性はないか)を確認してみましょう。
6つの項目の中でチェックのついたものがあれば、以下のようなトラブルを抱えている可能性があります。
①にチェックがついた人:足が安定していない人は、両足が地面についていないと転びそうになるため、つい早歩きになります。
②にチェックがついた人:アキレス腱が硬くなっているサイン。足のトラブルを招きやすいので、歩く前に足のストレッチを習慣にしましょう。
③にチェックがついた人:崩れた足のアーチを引き上げようと、無意識にふくらはぎの筋肉を使いすぎて疲労している恐れがあります。
④にチェックがついた人:タコやウオノメは、足や歩き方に問題があり、重心のかかり方が偏っている証拠です。
⑤にチェックがついた人:足の構造と機能は、家族や近親者の足のタイプを遺伝的に引き継ぐ傾向にあるようです。
⑥にチェックがついた人:一方の足のアーチが大きく崩れている、もしくは左右の脚の長さが違う可能性があります。
以上、放置すると大きなトラブルになりかねないので、早めのケアが必要です。
「足を構成している骨はアーチ構造をしている」と紹介しましたが、足のアーチには、かかと・甲・指のつけ根を結ぶ5つの側面の三角アーチと、足の指でつくられる正面の半円アーチがあります。そして、体重がかかるとこの2つのアーチがたわむなどして、地面からの衝撃を吸収してくれます。
また、足のアーチは、「正常(ノーマルアーチ)」「扁平足(フラットアーチ)」「甲高(ハイアーチ)」の3つに大別され、それぞれに衝撃の受けやすさや体重の分散のされ方が異なります。自分のアーチタイプの特徴を知ることは、トラブル防止や正しい靴選びのポイントにもなるので、きちんと確認しておいてください。
それぞれの特徴は、以下のとおりです。
●正常(ノーマルアーチ)
正しい足のアーチが保たれ、土踏まずが上がっている足。地面からの衝撃を適度に吸収でき、体重は足全体に分散されます。
●扁平足(フラットアーチ)
立ったときにアーチが耐えきれずにつぶれ、土踏まずが平らになる足。足本来の機能は発揮されず、すぐに疲れてしまい、痛みも出やすい傾向にあります。
●甲高(ハイアーチ)
アーチが高くなっている足。体重がうまく分散されず衝撃も吸収できないので、足指のつけ根やかかと、足を通り越してひざなどに痛みを引き起こすこともあります。
足のトラブルを防ぐためには、「歩き方」に気を配ることも大事です。歩き方の良し悪しは、靴底(ソール)の減り方にも表れ、歩き方がきれいな人は、かかとの中心からやや外側が減っていく傾向にあります。
一方、歩き方が悪い人の場合は、内側から減ったり、左右で減り方が違ったりするケースが少なくありません。
アーチタイプによっても靴底の減り方が違うので、靴を選ぶ前にチェックしておくとよいでしょう。
●かかとの内側が減りやすい
扁平足の人に多くみられます。扁平足の人は足に体重がかかったときにアーチが極端に下がるため、足が内側に傾きます。
●靴底の外側が減りやすい
甲高の人に多くみられます。足の甲が高いと体重が外側にかかってしまい、外側を引きずるようになります。
●靴底の中心が減りやすい
アキレス腱が硬くなっている人に多くみられます。アキレス腱が硬くなると、足首が十分に曲がりにくくなり、余計な力が前にかかるためです。
●左右で靴底の減り方が違う
左右の足の形が違う人や、左右の脚の長さが違う人に多くみられます。体のバランスが悪くなっているので、医師への相談が必要な場合もあります。
足の痛みやトラブルを防ぐ正しい靴選びのポイントを解説します。靴のサイズというと、足のかかとからつま先までの長さであるレングス(足長)だけに注目しがちですが、足幅のもっとも広い指のつけ根部分を一周するウィズ(足囲)を知ることも大事です。ウィズは成人女性用では細いほうからA〜E、EE、EEE、EEEE、Fの9段階があります。
ただし、メーカーによってレングス、ウィズが異なり、すべてのウィズに対応する靴をつくっているメーカーはほとんどありません。試し履きをしながら、自分の足の形に合ったものを選びましょう。
以下では、スニーカーを例に靴選びのポイントを紹介します。基本的なポイントはスニーカーに限らず靴全般に共通なので、覚えておくと便利ですよ。
●ポイント1:ひもかベルトで足を固定できる
甲の高さは人それぞれに違うため、ひもで調整できる靴がよいでしょう。側面にファスナーがついていると、着脱しやすくなります。
●ポイント2:先端部分は少し浮いている
靴の先端部分が浮いていないと、踏みだすときにひっかかり、転倒などの原因になりかねません。ご注意を!
●ポイント3:つま先の余裕が5~10㎜程度
体重がかかると足は少したわんで前後に伸びるため、ぴったりではなく、ある程度の余裕が必要です。
●ポイント4:インソールが着脱できるもの
着脱できるものなら、取り外したインソールに足をのせて、大きさの確認ができます。足のタイプに合ったインソールとの交換もできるので、おすすめです。
●ポイント5:ヒールカップが硬く、かかとにフィットする
かかとを包んでいるヒールカップがしっかりしていないと、サイズが合っていてもかかとが不安定で足に負担がかかってしまいます。
「正しい靴選びは足のトラブル予防の基本です。お店の人に相談するなどして自分に合った靴を探しましょう。また、インソールを活用することで、自分の足に合わせやすくなります」とは桑原先生の言葉です。
一般にインソールというと、ウレタンなどの平たいものをイメージしますが、足のアーチ全体を下から立体曲面として支えるのがその役目なので、三次元的な構造をしているのが本来の形状です。インソールは薬局などでも買えますが、できれば靴店やスポーツ店で相談して買うとよいでしょう。
外反母趾の人など既製品のインソールが合わない人は、医療機関で自分の足の形状に合わせたインソールをオーダーメードすることも可能です。
自分に合うインソールが入手できたら、靴を買うときに持参し、靴に入れて試し履きをしましょう。1サイズ大きい靴が適する場合もあるので、専門店でよく相談して選んでください。
最後に、ビジネスシューズとパンプスの選び方にも触れておきます。基本的なポイントはスニーカーと同様ですが、革の柔軟性やフィット感がより重要になります。
それぞれのチェックポイントは、次のとおりです。
●ビジネスシューズ:革素材のものはややきつめを選ぶ
ローファーなど、ひものない靴はホールド力が乏しいので、人によっては足のアーチが崩れる原因になることも。ビジネス用の靴は、足にしっかりフィットさせられる「ひも靴」を選ぶのがおすすめです。革素材のものを買うときは、ややきつめのサイズを選びましょう(革はほどよく伸びて、足になじんでくるためです)。
●パンプス:ヒールは4㎝以下でしっかりしたものを
パンプスは、できるだけ足の甲まで覆われているものを選びましょう。脱げそうな靴を履くと、無意識に指に力が入って疲れるうえに、トラブルの原因にもなります。ヒールはなるべく太く安定感があり、4㎝以下のものを選ぶのがおすすめです。ヒールがそれ以上高くなると、足が前にすべって足指が圧迫され、姿勢も前のめりになりやすくなります。
自分に合った靴を選ぶことは、健康や生活の質を維持することにもつながります。「靴なんてどれも一緒」などと考えず、サイズやフィット感にこだわった靴選びを心がけましょう。
もし、「自分だけで選ぶのは少し不安」という場合は、シューフィッターのいるショップを利用するのも一つの方法です。シューフィッターは足の専門家であり、足の計測やフィッティングも丁寧に行ってくれるので、きっと自分に合った一足が選べるはずですよ。足のトラブルがある場合も、遠慮せずに相談してみましょう。
この記事を参考に、ぜひ自分にぴったりの靴を見つけてくださいね!
監修:桑原靖先生
構成:株式会社研友企画出版
桑原靖(くわはら・やすし)
足のクリニック 表参道 院長
2004年、埼玉医科大学医学部卒業。同大学病院形成外科で外来医長、フットケアの担当医として勤務。2013年、東京・表参道に日本では数少ない足専門クリニックを開業。専門医、専門メディカルスタッフによるチームで、足の総合的な治療とケアを行う。日本フットケア・足病医学会評議員。著書に『元気足の作り方 ― 美と健康のためのセルフケア』(NHK出版)、『外反母趾と足底腱膜炎 自力でできるリセット法』(アスコム社)など。
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。