「要介護4」とはどのような状態なのか、在宅生活は可能なのか気になる人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、要介護4の状態や受けられるサービスについて解説します。
要介護4は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間(介護にかかる時間)」が、90分以上110分未満、またはこれに相当すると認められる状態を指します。
要介護度は7段階に分かれており、要介護4は上から2番目にあたります。常時介護が必要で、日常生活のほぼすべてに介助が必要な状態です。具体的には、次のようなサポートが必要になります。
・立ち上がりや歩行、車椅子への移乗の介助
・ベッドからの起き上がりや座位保持のサポート
・着替え・排せつ・入浴の全面的な介助
・買い物や家事、役所関係の手続きなどの代行
身体機能の低下が進み、自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しく、寝たきりに近い状態になる場合もあります。また、認知症が進行すると意思疎通が困難になり、在宅での介護がより困難になるケースも少なくありません。
要介護4と、その前後の要介護度の違いをまとめました。
要介護3
◾️心身の状態
・身体機能は低下しているが、食事や座位の保持はひとりでできる
・日常生活全般をひとりで行うのが難しく、あらゆる場面で介助が必要
・認知症を患っている方が多い
◾️要介護認定等基準時間:70分以上90分未満
要介護4
◾️心身の状態
・要介護3より身体機能が低下しており、座位を保つのが難しい状態
・認知症が悪化している場合、意思疎通が難しくなり、不安や混乱から攻撃的な言動が目立つようになることもある
◾️要介護認定等基準時間:90分以上110分未満
要介護5
◾️心身の状態
・ほぼ寝たきりで、自力で身体を動かすのが難しい状態
・認知機能の低下が著しく、会話による意思疎通が困難になる
◾️要介護認定等基準時間:110分以上
要介護3も日常生活全般でサポートを必要としますが、食事の摂取や座位の保持などひとりでできることもあります。一方、要介護5は要介護度の中で最も重い区分であり、他者のサポートなしでは生活が難しい状態となります。
要介護4で利用できる主なサービスをまとめました。
在宅サービス
・訪問介護
・夜間対応型訪問介護
・訪問看護
・訪問入浴
・訪問リハビリテーション
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
通所サービス
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
施設への入居
・特別養護老人ホーム(特養)
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院
・特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
短期入所
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護
複合型サービス
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護
その他
・福祉用具の貸与費、購入費の支給
・住宅改修費の支給
要介護4の方が在宅で生活を続ける場合、昼夜を問わずケアが必要になる可能性が高くなります。そのため、夜間に対応できるサービスを利用し、ケアラーの負担を軽減することが大切です。
2025年1月現在、要介護4の介護保険の利用限度額(1か月あたり)は309,380円です。利用限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、自己負担額が1割(一定以上の所得者の場合は2割または3割)になります。
【要介護4の自己負担限度額】
1割負担:30,938円
2割負担:61,876円
3割負担:92,814円
限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」
在宅で生活する場合と施設に入居している場合に分けて紹介します。
■在宅生活の場合
・訪問介護(生活援助)・・・1,790円✕月8回=14,320円
・訪問看護・・・4,710円✕月4回=18,840円
・通所介護(7時間以上8時間未満、入浴あり)・・・10,630円✕月8回=85,040円
・通所介護(7時間以上8時間未満、入浴なし)・・・10,230円✕月8回=81,840円
・短期入所生活介護(単独型・従来型個室)・・・8,560円×月10日=85,600円
・介護ベッドレンタル・・・11,000円
・車椅子レンタル・・・6,000円
上記のケースでは、1か月の介護サービス費用の概算額は302,640円となります。このうち、1割負担の人の自己負担額は30,264円です。(食費や居住費、サービス加算などの費用は別途必要です)
■施設に入居している場合
【要介護4、利用者負担第4段階(住民税課税世帯)・30日間の場合】
・介護サービス費(1割負担の場合):26,580円
・食費:43,350円
・居住費:60,180円
・日常生活費:10,000円
合計:140,110円
上記はあくまで目安ですが、在宅生活と比較すると費用負担は高くなる傾向があります。
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
■高額介護サービス費
1か月に支払った介護サービス費のうち、負担限度額を超えた時に超えた分が払い戻される制度です。払い戻しを受けるには自治体への申請が必要で、負担限度額・払い戻し金額の上限は所得などにより異なります。
■紙おむつ代助成制度
市区町村が実施している制度で、要介護4以上が対象である自治体が多いです。自治体によって助成内容は異なり、おむつの現物支給や購入した紙おむつ代の助成などを受けられます。
■特別障害者控除
要介護4は特別障害者に該当する自治体が多く、40万円の控除を受けられます。控除を受けるには市町村の役所で手続きを行う必要があり、要介護認定を受けただけでは適応されないので注意しましょう。
■高額医療・高額介護合算療養費
医療保険と介護保険の費用負担が定められた上限を超えた時、超えた分を払い戻してくれる制度です。
要介護4は24時間体制のケアが必要となるため、ケアラーの負担も大きくなります。
在宅でのケアに困難を感じたら、無理せずケアマネジャーなどの専門家に相談し、施設入居も含めた介護サービスの利用を検討することが大切です。
監修:中谷ミホ
写真(トップ):写真AC
著者:小原 宏美
大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)