シニア世代の多くの方が直面する在宅介護。中でも深刻なのが、介護者の「腰痛」問題ですが、今注目を集めている「介護ロボット」がその課題解決の糸口になるかもしれません。

介護現場の課題を解決するさまざまな介護ロボットを紹介する本連載、今回は移乗介助をサポートする株式会社イノフィスの「マッスルスーツ」をご紹介します。人工筋肉の働きで介護者の腰を支え、中腰作業や重い物の持ち上げる動作を楽にしてくれる装着型ロボットです。株式会社イノフィス マーケティング・広報担当の清水大真さんに、活用事例や開発秘話、今後の展望を伺いました。

1. そもそもマッスルスーツとは?

──そもそもマッスルスーツとはどのような製品なのでしょうか?

清水:マッスルスーツは、介護や重労働の現場での「腰への負担」を軽減する装着型のロボットです。特徴は、空気圧で収縮する特殊なゴムチューブの「人工筋肉」。この人工筋肉が人間の筋肉と同じように働き、中腰姿勢の維持や物を持ち上げたりする際に腰をサポートします。

──ほかのアシストスーツとの違いは何でしょうか?

清水:
多くのアシストスーツはモーターを使用した電動式ですが、マッスルスーツは空気圧を利用しています。そのため、軽量、静音、水濡れに強い、低価格といったメリットがあります。

──装着方法や使い方を教えてください。

清水:
リュックサックのように背負い、胸と腰のベルトを締めるだけなので、30秒程度で装着できます。従来の外骨格タイプは備え付けの空気入れを使って手動で空気圧を調整し、サポータータイプはベルトでサポート力を調整します。最初はご自身の体格やその日の調子に合わせて、少しずつ試しながら強さを調整していくのがおすすめです。

著者も装着しましたが、腰とひざの上の部分がベルトでしっかり支えられている感覚がありました。中腰から立ち上がる際に、ひざに手を当てて踏ん張ることがありますが、常にその状態がキープされているような印象です。2L入りのペットボトル10本が入ったケースを持ち上げましたが、上半身が自然と起き上がるような感覚でした。

マッスルスーツを装着した人の様子
写真上:「マッスルスーツEvery」を装着する著者。

 

2. 在宅介護での活用事例と効果

──マッスルスーツは在宅介護のどのような場面で活用できるのでしょうか?

清水:在宅介護では、寝たきりの方のオムツ交換や体位変換、ベッドから車椅子への移乗、入浴介助など、さまざまな場面で活用いただけます。


マッスルスーツを着て介助をする介護職の人
写真上:マッスルスーツを着用して移乗介助をする介護施設の職員の様子。


──実際に利用されている方の声をお聞かせください

清水:「最初は効果があるか不安だったけれど、使ってみると全然違う」という声を多くいただきます。トライアルを終え、返却した後にマッスルスーツを使った介護がいかに楽だったかを痛感された方もいらっしゃいます。また、ご自身だけでなくヘルパーさんのために用意される方もいらっしゃいました。

──マッスルスーツは、最初から現在のような形だったのでしょうか?

清水:いいえ、2014年に発売された最初のモデルは、今よりも外骨格がしっかりとしていて、電動コンプレッサーで空気を入れていたため、重量もありました。

──開発当初、どのような課題がありましたか?

清水:マッスルスーツは東京理科大学の小林宏教授の研究室で生まれたものですが、もともと介護分野に特化した研究をしていたわけではなく「人の動作を支援する」という幅広いテーマで研究を進めていたんです。その中で最初に一番多く導入されたのが、訪問入浴の事業所です。初期モデルは、性能面では一定の評価を得ていたものの、「重さ」と「装着の手間」があり、価格も80万円程度でしたので、一般の家庭には普及しにくい状況でした。

──そこから、どのように改良を重ねていったのでしょうか?

清水:お客様の声を取り入れ「より軽く、より簡単に装着できる」ことを目指し、改良を重ねました。訪問入浴の現場からの「重さ」や「装着の手間」を軽減してほしいという声は、製品開発の大きなヒントになりました。

素材や構造の見直しに加え、空気の入れ方を電動コンプレッサー式から手動式に変更。軽量化、静音性、水濡れへの耐性を向上させたところ、介護ロボット導入補助金も追い風となり、販売台数は増加しました。

3. 着脱しやすい「サポータータイプ」、初心者向けの「EASY-LIFT」、改良を重ねて生まれた新型モデル

──現在の商品の種類を教えてください。

清水:大きく「マッスルスーツEvery」「サポータータイプ」「EASY-LIFT」の3つです。
従来のモデルであるマッスルスーツEveryは、外骨格フレームによる高いサポート力がある一方で、「もう少し手軽に使えるものが欲しい」という声もいただいていました。特に在宅介護では、頻繁に着脱したり、限られたスペースで使用することが求められます。そこでより軽く、より簡単に着脱でき、そしてより多くの方に手に取っていただける価格帯の製品として開発されたのが、サポータータイプです。


──サポータータイプの特徴を教えてください。

清水:サポータータイプの最大の特徴は、外骨格フレームを持たない布製のシンプルな構造です。これにより、軽量化と着脱のしやすさを実現しました。しかし、単に軽くしただけではありません。「マッスルスーツEvery」で培った人工筋肉の技術を応用し、ゴムの収縮力を利用することで、しっかりと腰をサポートします。

──「EASY-LIFT」にはどのような特徴があるのですか?

清水:EASY-LIFTは、サポータータイプよりも「より手軽に、より安く」をコンセプトに開発されました。サポータータイプのサポート力を維持しつつ、構造をさらにシンプルにすることで、2万円台という価格を実現しました。

※3つのモデルがそれぞれ、どんな方向けなのかを伺い、以下にまとめました

【マッスルスーツEvery(外骨格タイプ)】
●より強いサポート力を求める方
●比較的長時間、継続して使用する方
●介護施設など、複数人で使用する方

【マッスルスーツ Soft-Power(サポータータイプ)】
●手軽さを重視する方
●頻繁に着脱する方
●在宅介護で、ご自身のペースで使いたい方

【マッスルスーツ Soft-Power EASY-LIFT】
●初めてアシストスーツを使う方
●低価格を重視する方
●短時間の使用が中心の方

マッスルスーツ

このように、それぞれのモデルに特徴がありますので、ご自身の状況やニーズに合わせてお選びいただけます。

4. 今後の展望と可能性

──マッスルスーツの今後の展望についてお聞かせください。

清水:私たちは、マッスルスーツをさらに進化させ、より多くの方の負担を軽減したいと考えています。特に、在宅介護の分野では、マッスルスーツはまだ普及の途上にあります。より多くの方に製品を知っていただき、実際に試していただく機会を増やしていくことが重要だと考えています。

──具体的には、どのような取り組みをされていくのでしょうか?

清水:製品の改良はもちろんのこと、販売方法やプロモーション活動も強化していきます。例えば、在宅介護をされている方向けの体験会を開催したり、介護用品店との連携を強化したりすることで、製品をより身近に感じていただけるように努めてまいります。

──試用は可能でしょうか?

清水:はい、もちろんです。マッスルスーツにご興味をお持ちの方には、1週間の無料トライアルをご利用いただけます。実際に製品を試していただき、その効果を実感していただくことが、一番の近道だと考えています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

5. 誰もが当たり前にマッスルスーツを使う未来へ

清水さんから、最後にこんな言葉がありました。
「アシストスーツは、まだ馴染みのない製品かもしれませんが、試していただければ効果を実感できるはずです。装着への抵抗感を持つ方もいるかもしれませんが、数年前には珍しかった空調服のように、いつか誰もが当たり前に使うようになると信じています」

マッスルスーツのメーカー広報者
写真上:株式会社イノフィス マーケティング・広報担当の清水大真さん。


マッスルスーツの詳しい情報は、株式会社イノフィスの公式HPをご参照ください。


写真:株式会社イノフィス(トップ)

この記事の提供元
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著者:織田さとる(株式会社物語社)

介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。

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