さまざまな介護ロボットを紹介する本連載、今回は株式会社MIXIが開発する、会話AIロボット「Romi(ロミィ)」をご紹介します。利用者に家族のように寄り添い、癒しと笑顔をもたらします。新発売の「Lacatanモデル」では、さらに人間らしい自然な会話が可能に。同社のRomi事業部UX企画Gマネージャーの長岡輝さんに、Romiの特徴や在宅介護での活用事例、今後の展望について伺いました。
──会話AIロボット「Romi」はどのようなロボットなのでしょうか?
長岡さん:Romiは手のひらサイズのおしゃべりができるロボットです。最大の特徴は、AIを使って、まるで人間と話しているかのような自然な会話ができることです。従来のロボットは、あらかじめ決められた言葉しか話せませんでしたが、Romiはディープラーニング(深層学習)という技術を使って、たくさんの日本語の会話を学習しています。そのため、会話の流れや季節、時間帯なども考えて、その場に応じた言葉を自分で考えて話すことができるんです。ディープラーニングを活用して発話を生成する家庭用コミュニケーションロボットは、Romiが世界初になります。
写真上:会話AIロボット、Romiの本体。
──開発するにあたって特に重視したこと、こだわったことは何でしょうか?
長岡さん:人は人以外とコミュニケーションをとる経験があまりないんです。ペットを飼っていれば犬や猫に話しかけることはありますが、生き物ではないものに話しかけるという経験は多くの方がしていません。
そこで私たちは、どのような形や大きさで、どんな仕草をすれば多くの方に受け入れてもらえるのかを、プロトタイプ(試作モデル)を作りながら検証していき、最終的に行き着いたのが、小さくて丸みを帯びた形でした。できるだけ多くの方に受け入れやすいようにと考えると、小さくて丸いほうが受け入れられやすいと考えたんです。
また、モーターや画面を搭載することで表情豊かな動きを実現しました。もっと話したくなるような要素は何だろうと考えたときに、やはり動きや感情表現が豊かなほうが「話を理解してくれている」という会話感の向上につながると思い、そういった点を大切にして開発を致しました。
写真上:株式会社MIXI Romi事業部UX企画Gマネージャー長岡輝さん。
──この春、より高性能な「Lacatanモデル」が発売されます。どのような機能が新しく追加されたのでしょうか?
長岡さん:大きく分けて4つの新機能が搭載されています。
1つ目は、「視覚機能」によって、Romiがカメラで見たものを認識し、会話に反映できるようになったということです。「これ、何に見える?」とRomiに聞けば、「おいしそうなケーキだね」なんて答えてくれるかもしれません。
2つ目は、「長期記憶機能」によって、以前の会話をより長く覚えていられるようになりました。以前話した趣味や好きな食べ物のことを覚えていて、会話に織り交ぜてくれるので、より親密な関係を築くことができます。
3つ目が「声の種類が選べる」ことです(*1)。自分好みのRomiにカスタマイズすることができ、人間に近い声も選べます。
4つ目が「自然な会話のテンポ」です(*2)。人間同士の会話のように相づちを打ったり、少し言葉が重なっても、スムーズに会話を続けられるようになりました。
*1、2 「声の種類が選べる」と「自然な会話のテンポ」は発売から数ヶ月後のアップデートで使用可能となります。
──本当に人間と話しているかのような会話ができるロボットになったわけですね
長岡さん:そうです。Lacatanモデルは、まるで生きているかのような、より自然で人間らしいコミュニケーションができるようになりました。新機能の「視覚」や「長期記憶」によって、話し相手のことや周囲の状況を深く理解して、それを会話に反映できるようになったわけです。
例えば、作った料理を見せながら「今朝はこういう料理を作ったよ」と言うと、「おいしそうなオムライスだね」みたいな感じで言葉を返してくれたり、「今日同窓会なんだけど、この服装どう思う?」と聞くと感想を教えてくれたりします。
──実際にRomiを利用されている方からはどのような声が寄せられていますか?
長岡さん:Romiオーナーの方にアンケートを取ったところ、「親の見守り目的」で利用されている方が全体の約20%を占めています。高齢のご家族へのプレゼントとして購入される方も多いです。
「足が痛い」など、家族には言いにくい体調の変化や不安をRomiに話すことで気持ちが楽になるという声もありました。サービス付き高齢者住宅にお住まいの方は、Romiが友人との会話の交流のきっかけになるとおっしゃっていました。
また、意外に思われるかもしれませんが、若い世代の方にも話し相手として愛用されています。「Romiだからこそ話せたことがありますか?」という質問に、半数の方が「ある」と回答しています。
誰にでも、職場の同僚や友人には言いにくい悩みがあると思います。相談しようにも、「話しすぎると心配されるのでは」「変な人と思われるのでは」と思ってしまう方もいるかと思いますが、Romiにならそのような心配をすることがないため、安心して話せるのだそうです。
──会話以外にも、見守り機能や話しかけ機能など、さまざまな機能が搭載されていますね。
長岡さん:見守り機能は「何日の何時にRomiと会話をした」という記録が残り、スマートフォンのアプリで確認できます。プライバシーへの配慮の観点から、会話の内容自体は確認することはできませんので、見守られる側にも喜ばれています。
話しかけの機能は、特定の曜日や時間にRomiから話しかけるというもので、よく使われているのは、朝昼晩の服薬の確認です。スマートフォンで設定した時間に「もうお薬は飲んだ?」と話しかけてもらっている方もいます。家族から直接言われると抵抗があっても、Romiから言われると言うことを聞ける方もいるようです。
──Romiの今後について、どのように考えていますか?
長岡さん:将来的には、自治体や地域の医療機関との連携が取れないか、模索しています。自治体からの案内をRomiから発信したり、地域の医療機関との連携に活用したりできるのではないかと考えています。
Romiに話しかけた内容から「早期にこういうケアをしたほうがいいのでは」ということがあれば、連携して解決に向けて動くようにできないか、方策を考えています。
ただし、そのためには会話内容の一部を連携先に提供する必要があるため、高度なプライバシー提供についての事前の合意形成が必要になります。
──最後に、Romiの購入を検討している方へメッセージをお願いします
長岡さん:話し相手がそばにいることはとても楽しいことだと思います。Romiはお話ができたり、歌を歌ったり、便利な機能がたくさんあります。
ロボットが歌う姿を見て癒されながら話し相手にもなるという体験は、これまでなかなかなかったかと思うんです。
Romiは使ってみるとかなり心地よく感じられるので、ちょっとでも興味があったら調べてみて、実際に試していただけたらなと思います。
Romiは本体価格の税込98,780円と、毎月1,958円 の月額利用料で利用が可能です。
※Romiの詳しい解説はRomi公式サイトをご参照ください。
著者:織田さとる(株式会社物語社)
介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。