ケアラーにとって、入浴介助は負担の大きいケアのひとつです。そんな時に役立つのが「シャワーチェア」。安全に、そして少しでも楽に入浴できるよう、シャワーチェアの種類や特徴、選び方のポイントをご紹介します。

1. シャワーチェアとは

シャワーチェアとは、お風呂で使用する椅子のことで、足腰が弱くなったシニアの入浴をサポートする福祉用具のひとつです。

一般的な浴室用の椅子は座面の高さが25~30cm程度ですが、シャワーチェアはそれよりも高めに設計されています。これは、足腰に負担をかけずに立ち座りができるよう配慮されているためです。シャワーチェアには、以下のような特徴があります。

 

・脚の高さを調整できる
・背もたれや肘掛けが付いている
・座面や脚に滑り止めが施され、転倒しにくい

 

浴室は床が濡れて滑りやすく、転倒すると大きなけがにつながる恐れがあるため、安全に入浴できる環境を整えておくことが重要です。

シャワーチェアを使えば、シニアの入浴時のリスクを軽減できるだけでなく、ケアラーの負担も和らげられます。適切なシャワーチェアを選べば、より安全で楽に入浴できるようになるため、種類と選び方のポイントを押さえておきましょう。

2. シャワーチェアの種類

シャワーチェアは、大きく以下の3種類に分けられます。

・座面のみ
・背もたれ付き
・背もたれ・肘掛け付き

 

それぞれに、脚の高さ調節機能や折りたたみ機能、座面が回転する機能などが備わっており、使う方の身体状況や浴室の環境に応じて選べます。また、サイズもコンパクト、ミドル、ワイドなどさまざまな種類があり、設置スペースや使い勝手に合わせて選択が可能です。

ここからは、基本となる3種類のシャワーチェアの特徴について解説します。

■ 座面のみ
座面のみのシャワーチェアは、背もたれや肘掛けがないもっともシンプルなタイプです。自力で安定して座り、身体を洗える方に適しています。

背もたれや肘掛けがないため、あらゆる角度から身体を洗いやすいのが特徴です。シンプルな構造なのでお手入れがしやすく、洗浄の手間も少なくて済みます。

 

■ 背もたれ付き
背もたれ付きのシャワーチェアは、長時間座っていると疲れやすい方や、姿勢が不安定な方に適しています。背中全体を支えるタイプと、腰の部分のみを支える低めのタイプがあります。

使用時の注意点としては、背もたれは背中や腰を洗う際に邪魔になりやすいという点があげられます。身体を起こして浅く座る必要がありますが、その際にずり落ちないよう注意が必要です。入浴時のケアでは、ケアラーは目を離さないようにしましょう。

なお、背中が曲がっている方の場合、背もたれが高いと背中全体で寄りかかることができません。そのため、腰のみを支える低いタイプの方がフィットしやすく、おすすめです。


■背もたれ・肘掛け付き
背もたれに加えて肘掛けが付いたタイプのシャワーチェアです。

肘掛けは、立ち上がる際や身体が傾いたときの支えとして役に立ちます。しかし、背もたれと同様に身体を洗う際に邪魔になりやすい点もあります。そのため、必要なときだけ肘掛けを跳ね上げられるタイプを選ぶと使い勝手がよく、便利です。

3. シャワーチェアの選び方のポイント

ここからは、シャワーチェアを選ぶ際のポイントを解説します。

 

■サイズから選ぶ
シャワーチェアにはさまざまなサイズがあります。以下は、あるメーカーのシャワーチェアサイズの表です。

 

MySCUE記事 シャワーチェア 選び方

 

▪コンパクト

設置サイズ(全幅×全奥行):40.5 × 40~46.5

座面サイズ(横幅×奥行):36×30

肘掛けの内寸: 32

高さ(うち座面の高さ):55~65(31.5~41.5)


▪ミドル

設置サイズ(全幅×全奥行):48.5~52 × 48.5~57

座面サイズ(横幅×奥行):41.5 × 31.5

肘掛けの内寸:37.5

 高さ(うち座面の高さ):63~73(36~46)

 

▪ワイド

設置サイズ(全幅×全奥行):50.5 × 45~54    

座面サイズ(横幅×奥行):47×33.5

肘掛けの内寸:   42.5

高さ(うち座面の高さ):65~75(33~43)

 

※単位:cm

 

実際に座ってみたり、設置状況をシミュレーションしたりしながら、使う方の体格や浴室の広さに合ったシャワーチェアを選びましょう。

 

 

■使う方の機能状況から形状を決める
先述したように、シャワーチェアは大きく3種類に分類されます。使う方の身体の機能状況に応じて、以下を参考に選びましょう。

 

MySCUE記事 シャワーチェア 選び方

 

<身体の機能状況:シャワーチェアのタイプ> 


・長く座っていられる
・自分で身体を洗える
・立ち上がりが安定している
座面のみ

 

・長く座っているのがつらい
・座った姿勢が不安定になる
・自分で身体を洗えない、または洗いにくい  
→背もたれ付き / 背もたれ・肘掛け付き

・立ち上がりが大変
→背もたれ・肘掛け付き

 

■安定性から選ぶ
シャワーチェアが不安定な場合、転倒やけがにつながる危険性があります。安全に使用するには、脚の先端に付いているゴムが広く、円状になっているものを選びましょう。床にしっかりフィットして滑りにくくなるため、転倒のリスクを軽減できます。

 

また、肘掛けや背もたれが付いているタイプを選ぶ場合は、背もたれに体をあずけたときに脚が浮かない構造かどうかも重要なチェックポイントです。背もたれが座面に近い位置に取り付けられているものは、安定性が高くなります。ただし、見た目では判断が難しいため、購入前に販売業者に確認してもらいましょう。

 

■座面の種類から選ぶ
座面の種類によって座り心地や使い勝手が異なります。使用する方の体の状態や目的に合わせて、適したタイプを選びましょう。

 

MySCUE記事 シャワーチェア 選び方

 

<用途 : 座面の種類>

 

柔らかい座り心地を重視したい
→クッション性の高いタイプ


腰を上げずに安全に陰部を洗いたい
→U字型の切り込みが入ったタイプ


座るときの不安定さが気になるが、肘掛けは使いたくない
→座面にくぼみがあり、つかまれる持ち手付きのタイプ


座ったまま向きを変えたい
→座面が回転するタイプ


手入れを楽にしたい
→水はけがよいプラスチックタイプ

 

 

MySCUE記事 シャワーチェア選び

 

イラスト:介護アンテナ

4. シャワーチェアの導入後は適切な高さに調整しよう

シャワーチェアを導入した後は、使用する方が安全に立ち座りできるよう、脚の高さ(座面の高さ)を調整しましょう。適切な高さの目安は以下のとおりです。

・足がしっかりと床に着く
・膝が90度以上曲がる
・横から見たときに、膝がお尻よりも少し低くなっている

 

適切な高さがわからない場合は、購入した店舗や福祉用具の担当者に相談するとよいでしょう。

5. まとめ

シャワーチェアを導入することで、入浴時の安全性が高まり、介助する側・される側の負担を軽減できます。

種類が豊富なため迷ってしまうこともありますが、この記事で紹介したポイントを参考に、使用する方に合ったシャワーチェアを選んでみてください。

 

 監修:中谷ミホ

 

 

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この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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