家族のためにポータブルトイレの導入を検討してみたものの、「種類が多すぎてどのように選んだらよいのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
今回は、ポータブルトイレの種類と選び方のポイントを解説します。ご家族に最適なものを見つけられるよう、ぜひ参考にしてください。
ポータブルトイレは大きく4つに分けられます。それぞれに特徴があるため、使う方の体の状態や生活スタイルに合わせて選ぶことが大切です。
■プラスチック製
軽くてコンパクト、持ち運びしやすいのが特長です。部屋の模様替えや掃除のときにも移動しやすく、手入れも簡単。汚れてもサッとふき取ればすぐに清潔を保てます。価格も比較的安いため、費用を抑えたい方に向いています。
ただし、軽い分、安定性がやや不足しているため、自分でしっかりと座っていられる方に適しています。
■木製いす型
重量があり安定感に優れているため、立ち座りの動作がスムーズに行えます。座り心地がよく、長時間座っていてもあまり負担を感じません。
また、家具調のデザインで、インテリアに自然と溶け込み、ふたを閉じれば、普通のいすとして使えます。見た目にこだわりたい方にもおすすめです。
移動には底面のキャスターを活用すると便利ですが、木製部分は汚れや傷がつきやすいため、こまめなお手入れが必要です。
■コモード型(金属製)
軽量と安定感を兼ね備えたタイプです。座面の高さ調節が簡単にできるため、使う方の身長や身体の機能に合わせやすいのがメリットです。
ただし、金属製の見た目は家庭のインテリアになじみにくいため、外観よりも機能性を重視したい方に向いています。
■ベッドサイド設置型(スチール製)
ベッドと並べて密着設置できるタイプです。片側の肘掛けが短く、ベッドから乗り移る際に、お尻が邪魔になりません。
座面をベッドの高さに調節すれば、軽くお尻を浮かすだけで乗り移れるため、足腰に不安のある方でも安心して使用できます。
スチール製でしっかりした造りですが、そのぶん重く、持ち運びには向いていません。ベッド中心の生活を送っている方におすすめです。
ポータブルトイレを選ぶ際には、次の5つのポイントに注目して選びましょう。
■本体のサイズや重量から選ぶ
サイズや重量が大きい場合、全体の安定感があり安全に使用できますが、広い設置スペースが必要です。
一方、小さいものは運びやすく場所をとりませんが、やや安定性に欠ける場合があります。設置スペースの広さや本体の安定性、移動させる頻度などを考慮してサイズや重量を決めましょう。
メーカーによって異なりますが、重量は3〜30kg程度、サイズは横幅で40〜60cm程度と大きく幅がありますので、設置する場所で事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
■乗り移りのしやすから選ぶ
夜間に目が覚めてすぐ使用する場合、誤って肘掛けに腰を下ろしてしまい、転倒してしまうケースがあります。こうした事故を防ぐには、肘掛けを跳ね上げられるタイプを選ぶと安心です。
また、座面の高さを調整できるものや、立ち座りの際に、足を便器側に引くことのできるスペースがあるものは、立ち上がるときの負担を軽減できます。
■座り心地から選ぶ
便座の座り心地が合っていないと、用を足しづらくなってしまいます。ポータブルトイレを頻繁に使う方や、長めに座ることの多い方は、クッション性の高いソフト便座が適しています。一方、使用頻度がそれほど高くなく、座る時間も短い場合は、プラスチック製の便座でも不自由なく使えます。
また、座り心地には背もたれの有無も大きく影響するため、姿勢が不安定な方や疲れやすい方は、背中をしっかり支えてくれるタイプを選ぶと安心です。
■付属機能から選ぶ
使う方の状態や生活スタイルに合わせて、付属機能に注目して選ぶ方法もあります。
ここでは代表的な機能をご紹介します。
【暖房便座】
冬は部屋が暖かくても、便座の冷たさが気になってトイレをためらうことがあります。冷たい便座に座るのがつらく感じる方には、暖房機能付きのタイプが安心です。
【シャワー機能】
排せつ後の拭き取りが難しい方には、シャワー機能付きがおすすめです。お尻を洗浄するシャワーやビデ機能も搭載されたものなら、衛生的に使えるうえに、皮膚トラブルの予防にもつながるので、ケアラーの負担軽減にもなります。
【脱臭機能】
ポータブルトイレの臭いは、使う本人だけでなく、家族にもストレスとなることがあります。脱臭機能付きのタイプなら臭いを除去でき、座るだけでセンサーが反応し、自動で臭いを除去してくれるため、手間もかかりません。特に換気がしづらい部屋で使う場合には、優先して検討したい機能です。
■価格から選ぶ
ポータブルトイレは、機能や構造によって価格に大きな差があります。たとえば、あるメーカーでは、1〜2万円程度のシンプルなタイプから、20万円近くする高機能モデルまで、幅広い価格帯が展開されています。そのため、必要な機能や構造と、予算とのバランスを考慮して選ぶことが大切です。
また、介護保険を利用すれば、購入費用の一部を補助してもらうことも可能です。上限10万円までは、自己負担割合(1~3割)に応じた金額で購入できます。ただし、10万円を超えた分は全額自己負担となるため、高額なモデルを検討する際には十分な確認が必要です。
著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級