在宅介護において、多くの方が直面する「排せつ」の問題。「もし、排尿のタイミングが事前にわかったら……」そんな思いに応えるのが、今回ご紹介する排せつ予測デバイス「DFree(ディフリー)」です。
今回は、排尿のタイミングが事前にわかるDFreeについて、製造・販売元のDFree株式会社 代表取締役 中西敦士さんと、同社カスタマーサクセス 三澤紋子さんにお話を伺いました。
写真上:DFree本体(左)と専用お知らせ機器。
──DFreeがどのようなデバイスなのか、主な特徴を教えてください。
中西さん:DFreeは、お腹に装着した超音波センサーによって、膀胱の膨らみをリアルタイムで捉え、排尿のタイミングを予測するデバイスです。専用のタブレット画面に、膀胱への尿のたまり具合を10段階で表示し「そろそろです」といった通知でお知らせします。
最大の特徴は、尿が「出る前」に通知するという点です。排せつ物を検知する機器は他にもありますが、事前に排尿のタイミングがわかり、失禁そのものを未然に防ぐという点は、他にはない大きな特徴です。日々の排尿記録も取れるので、その方の排尿パターンを把握するのにも役立ちます。
──センサーを肌に直接貼るとのことですが、着け心地や重さ、扱いやすさはどうでしょうか?
中西さん:最新の第5世代は重さが20g以下と非常に軽量で、ケーブルもありません。単3電池ほどの重さです。お腹の、普段ベルトや下着のゴムが当たるような位置に貼り付けるため、違和感のある方は少ないです。
認知症やその他の疾患で貼り付けていることをうまく理解できない方も利用していますが、ご自身で取り外してしまうケースは7%と、低いデータも出ています。
写真上:DFree本体を装着イメージ。
──DFreeは、どのような方に役立つのでしょうか?
中西さん:普段はご自身でトイレに行けるものの週に何度か失敗してしまう、といった方に特におすすめです。この場合、ご家族がDFreeの通知を見て「そろそろトイレに行った方がいいよ」と声をかけるだけで、ご本人が「ああ、そうか」と気づいて自分で行けるようになり、失禁がなくなることがあります。
また、排尿の感覚が曖昧で、2〜3時間ごとに定期的にトイレにお連れするようなケースにも有効です。経験則でトイレにお連れしても、排尿がないとまた15分後、30分後……と常にトイレのことを考えなくてはならないという状況に陥りがちです。DFreeがあれば「2時間経ったけど、まだ溜まっていないからもう少ししてからにしよう」という判断もできます。DFreeがトイレ誘導の的確な目安となり、結果的にご本人の安心にもつながります。
──常に装着している必要があるのでしょうか?
中西さん:必ずしも24時間装着し続ける必要はありません。「スポット尿測定」という機能があり、起床時やデイサービスの送迎前など、知りたいタイミングでセンサーをお腹に15秒ほど当てるだけで、その時点でのたまり具合を確認できます。
──具体的な使用方法を教えてください。
三澤さん:まず、センサーを正しい位置に装着することが大切です。超音波センサーなので、肌にしっかり密着していないと測定できません。目安としては、おへその下にある恥骨から指2本分くらい上の位置になります。ご高齢の方にも分かりやすいように、装着位置のガイドも付いています。
中西さん:次に大事なのが、通知を出すタイミングの調整です。溜められる尿の量やトイレまでの距離、お体の状態などは人それぞれですので「そろそろライン」という通知レベルをその方に合わせて設定していきます。導入時には必ずトライアル期間を設けているので、弊社カスタマーサクセスのスタッフがオンラインで設定のサポートをさせていただいています。
写真上:DFree株式会社 代表取締役 中西敦士さんと、同社カスタマーサクセス 三澤紋子さん。
──実際に利用している方から声や印象的なエピソードがあれば教えてください。
中西さん:脳出血を患い排せつに介助が必要になった方がいました。周りの人に手間をかけさせるのが嫌で大好きな旅行に行けなくなり、表情は落ち込み、会話も減っていたようです。しかし、DFreeを利用するようになってからは、出先でも余裕を持ってトイレを探すことができるため、再び旅行にも出かけられるようになったようです。
三澤さん:夜間決まったタイミングでトイレにお連れしても失敗が続いてしまっていた方のケースでは、DFreeの通知で一緒に起きてトイレに行くようにしたことで、失敗なくトイレに行けるようになり、夜の安心感につながったという声をいただきました。
──今後、DFreeを通じてどのようなことを目指していますか?
中西さん:DFreeは、利用者の声に耳を傾け、進化を続けてきました。初代モデルはセンサーと本体がケーブルで繋がっていましたが、現在はケーブルをなくし、さらに軽量化をすすめてきました。これもすべて、利用する方にとっての使いやすさを追求した結果です。
今後は、在宅介護だけでなく、医療機関での導入もすすめていきたいと考えています。入院中にDFreeを使用して排尿感覚をつかみ、退院後もそのままご自宅で、介護保険を利用して継続的に使っていただけるような、スムーズな連携を構築していきたいです。
三澤さん:排せつのことで悩んでいる方に、「トイレでの排せつを諦めないでほしい」と強くお伝えしたいです。「年だから」「病気だから」と諦めてしまう前に、DFreeのような選択肢があることを、まずは知っていただきたいです。
中西さん:誰にとってもいつかは介護が必要になります。自分ごととして捉え、準備をしておくことが大切です。実際に困ったときは、一人で抱え込まず、ぜひ私たちにご相談ください。DFreeは、機器だけでなく専門知識を持ったチームがしっかりとサポートします。
DFreeの本体価格は99,000円(税込み)です。特定福祉用具に認定されているため、介護保険を利用できる方は、1〜3割の自己負担額で購入可能です。DFreeの詳細については、公式サイトをご参照ください。
写真(トップ):PIXTA
著者:織田さとる(株式会社物語社)
介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。