シニアは、夏に限らず1年中脱水症状のリスクが高い状態にあるため、適切に水分摂取できているか常に気を配ることが大切です。
本記事では、シニアの脱水症状を防ぐ水分補給のポイントをわかりやすく解説します。
私たちの身体は、約6割が水分で構成されています。体内の水分が不足した状態を「脱水状態」、不足した水分量が体重の3%以上になった状態を「脱水症」といいます。
脱水が原因で起こる「下痢・嘔吐・微熱・めまい」などの不調は「脱水症状」とされ、重症になると命にかかわるおそれもあります。
また、体重の1〜2%の水分が失われた状態は、脱水症の手前にあたる「隠れ脱水」と呼ばれています。隠れ脱水は本人や周囲も気づきにくいため、日頃の行動をよく観察し、水分を摂る量が足りているかどうかをチェックすることが大切です。
シニア世代は、気温や湿度が上昇する夏場だけでなく、空気が乾燥する秋冬でも脱水状態に陥りやすい傾向があります。その理由を以下にまとめました。
・身体の中に水分を留める機能が低下する
・頻尿になる人が増える
・トイレの回数を減らすために水分を摂らなくなる
・のどの渇きに気づきにくくなる
・食事の量が減る
・利尿作用のある薬の服用
年齢を重ねるにつれ、水分を蓄える貯水庫のような役割をもつといわれる筋肉量が減少することで、若い世代に比べて脱水症のリスクが高くなります。
加齢や病気による腎臓の機能低下により、尿量の増加や頻尿が起こることも脱水症の原因のひとつです。トイレの回数を少しでも減らそうと水分摂取を控えるシニアの方も少なくありません。
また、高齢になると身体全体の感覚が鈍くなり、「のどの渇き」を自覚しにくくなることもあります。そのほかにも、食事量の減少により、食べ物から摂取する水分量が減ったり、薬の利尿作用により脱水症になりやすくなったりするケースもあります。服薬中の方は、かかりつけ医に利尿作用の有無を確認しておくと安心です。
シニアが脱水症におちいっているかどうかのチェックリストを「軽度・中度・重度」の3つに分けて紹介します。
〈軽度〉
□口が渇いている
□唇・舌・皮膚が乾燥している
□尿の量が少ない
□ぼーっとしている
□めまいがある
□皮膚をつまんで離したら、3秒以上痕が残る
〈中度〉
□頭痛がある
□全身のだるさ
□手足がふるえる
□ふらつきがある
□微熱がある、顔が赤くなっている
□血圧の低下
〈重度〉
□幻覚・昏睡などが起きる
□呼吸が苦しくなる
□意識がもうろうとしている
□目がくぼんでいる
これらに当てはまる症状がない場合でも、いつもと様子が異なる部分があれば、すぐ安静にして次に紹介する処置を行いましょう。
①すぐに水分補給を行い、重症化を防ぐ
発熱や気温の上昇などにより汗をかいている場合は、水分と同時に塩分(ナトリウム)の補給も大切です。梅干しや塩分入りタブレットのほか、スポーツドリンク、経口補水液などで、体内のバランスを整えましょう。
※糖分や水分の摂取制限がある方は、かかりつけ医の指示に従うことが重要です
②室内の気温と湿度を調整し、安静にする
加齢とともに暑さ・寒さの温度変化を感じにくくなるため、ケアラーなど周りにいる人がエアコンやサーキュレーターなどを使って適切な室温に調整しましょう。
衣服や寝具なども気候に合ったものに整えると、体内に熱がこもりにくくなり、脱水症の予防につながります。
このようなケアを行っても症状が改善しない場合や、重症が疑われる場合は、ただちに医師や看護師に連絡してください。
①1日に必要な水分量を把握する
高齢者の1日の水分摂取量は約2ℓ(食事から1ℓ、飲み物から1ℓ)が目安です。
②水分補給するタイミングを決めておく
「朝起きてすぐ・食事前後・入浴後・運動後・お酒を飲んだ後・寝る前」など、あらかじめ飲むタイミングを決めておくと、無理なく続けられます。
③果物やゼリーなどで水分を摂ってもらう
飲み物だけでなく果物やゼリーからも水分を補うと、義務感が軽減されて楽しみながら脱水症を予防できます。
水分補給は習慣化することが重要なポイントです。ご本人の好みや生活リズムに合わせて、無理のない方法を見つけていきましょう。
・カフェイン・アルコールの摂りすぎに注意
緑茶やコーヒーなどに含まれるカフェインや、お酒は利尿作用があるため、脱水を進行させることがあります。
・本人もケアラーも続けやすい方法を考える
毎日の習慣として無理なく続けられるよう、「楽しみながら」取り組むことが大切です。
・水分の摂りすぎにも注意を
水分過多になると「むくみ」「血圧上昇」「夜間頻尿」などの原因になることもあります。腎臓や心臓に疾患がある場合は、医師の指示を仰ぎましょう。
【水分補給を「楽しい時間」にするための工夫】
・おやつの時間にお茶を添える
・汁物の種類を工夫してみる
・市販のゼリー飲料や惣菜、外食も適度に取り入れる
これらの工夫を取り入れることで、水分補給が日常の負担ではなく、楽しみの一つとなります。
著者:小原 宏美
大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)