移動や排せつなど、生活の中でのシニアの何気ない動作が「大変そう」と感じている家族も多いのではないでしょうか。実はこうした悩みには、住まいの環境整備が有効です。今回は、自立を促進し、介護を予防するためにできる住まいの工夫を紹介します。

1. 場所ごとに考える住まいの工夫のポイント

住まいに少し工夫を加えるだけで、安全性が高まり、今できていることを無理なく続けやすくなります。住まいの場所ごとに、転倒予防や生活のしやすさを高める工夫を紹介しますので、ぜひご自宅の環境を見直す参考にしてください。


■居間・廊下での工夫ポイント
・絨毯やマットは端を固定し、滑り止めをつける
・廊下と部屋の間の段差を解消する
・廊下に手すりを設置する

ご自宅の中で転倒が多い場所の一つが、居間やリビングです。特に、床に絨毯やマットを敷いている家庭では、つまずきや滑りを防ぐために敷物を固定しておきましょう。また、意外と見落としがちなのが、廊下と部屋の間にあるわずかな段差です。

階段や玄関などの大きな段差は意識されやすい一方で、2~3cm程度の段差は気づかれにくく、すり足で歩く方がつまずいて転倒することもあります。こうした場所には、段差解消用のスロープを設置しておくと安心です。


スロープ


また、ふらつきが気になる方には、廊下に手すりを設置するのもよいでしょう。杖や歩行器の使用には抵抗を感じていても、手すりであれば自然と手を添える方も多くいます。工事不要の置き型タイプのものもあるため、手軽に試してみましょう。

■ダイニングでの工夫ポイント
・座ったときに安定する椅子を選ぶ
・扱いやすいカトラリーや食器を用意する


ダイニングの椅子

写真:著作者:lifeforstock/出典:freepik

座った姿勢が安定していないと手元の動きも不安定になり、こぼしたり疲れたりすることがあります。背もたれや肘掛けのある椅子を選び、身体をしっかりと支えられるようにしましょう。

食べこぼしが多い方には、持ちやすいカトラリーがおすすめです。柄が太く滑りにくいスプーンやフォークなら、力の弱い方でも扱いやすく、口元まで運びやすくなります。

また、食べ物をうまくすくえない場合は、食器の工夫も必要です。内側にふちがカーブしていて、底に滑り止めのついた皿は、すくいやすく食事がスムーズになります。

■トイレでの工夫ポイント
・ドアは引き戸、または外開きにする
・L字型や肘掛け型の手すりを設置する
・床に足が着く高さに便座を調整する


トイレへの出入りがしやすいのは引き戸ですが、改修が難しい場合は開き戸のままでもかまいません。中で倒れてしまったときに外から助けやすくなるように、外開きにしておくと安心です。

手すりは立ち座りや移動、ズボンの上げ下ろしなどの際に支えになるため、便器の近くに一箇所は設置しておくとよいでしょう。

便座の高さは、座ったときにひざと足首が90°になるのが理想です。高さが足りない場合は「補高便座」、逆に高すぎる場合は「薄型便座」に交換しましょう。

■洗面所での工夫ポイント
・蛇口にレバーを取り付ける
・椅子を設置する
・電動で高さを調整できる洗面台にリフォームする


握力が弱く、水道のハンドルをひねるのが難しい場合は、レバー式の蛇口に変更するのがおすすめです。後付けできるタイプは、工事不要で取り入れられ、費用も抑えられます。

また、立って洗顔や歯磨きするのがつらい場合は、椅子に座って行いましょう。ただし、座ると蛇口や鏡が遠くなり、使いにくくなる場合もあるため、やや高めの椅子を選ぶと良いでしょう。

車椅子ユーザーには、電動で高さ調整ができる洗面台へのリフォームも検討できます。体格や使用シーンに応じて簡単に調整できるため、使い勝手が向上します。

■浴室での工夫ポイント
・床に滑り止めを設置する
・壁や浴槽のふちに手すりを設置する
・シャワーチェアを使う
・浴室と脱衣所の温度差をなくす


シャワーチェア


浴室内では、転倒や溺水などのリスクがあります。滑り止めや手すりを使い、移動や浴槽の出入りが安全にできるように配慮しましょう。

シャワーチェアは、一般的な浴室用の椅子より座面が高く、背もたれがついているものを使うことで、洗体や立ち座りが楽になります。長時間座っていても疲れにくく、姿勢も安定します。

また、ヒートショックを防ぐために、浴室と脱衣所は事前に暖めて温度差をなくしておきましょう。特に冬場は急激な寒暖差から血圧が大きく変動する可能性があるため、事前に温かくしておきましょう。

■階段での工夫ポイント
・可能であれば両側に手すりを設置する
・段差ごとに滑り止めテープを貼る
・階段途中の壁や足元に照明を設置する


バリアフリー住宅の階段


可能であれば両側に手すりを設置することで、片手が使いにくい場合でも安全に階段を昇り降りできます。また、足元を安定させるために、各段に滑り止めテープを貼っておくのも有効です。テープは見やすいように、段差とのコントラストがはっきりする色を選ぶと踏み外しを防げます。

さらに、階段途中や足元に人感センサー付きの照明を設置すると、夜間でも安全に階段を利用できます。

2. 住まいの工夫を進めるうえでの注意点

住まいを整える際に注意したいのは「変えすぎないこと」です。住み慣れた環境が急に大きく変わると、本人にとっては不安や混乱などのストレスの原因になることがあります。また、同居する家族にとって使い勝手が悪くなる場合もあるため、家族全体の生活バランスにも配慮が必要です。

工夫を進める際は、まずは福祉用具の導入からはじめ、それでも不十分な場合に住宅改修を検討するなど、段階的に進めるのがよいでしょう。

特に住宅改修については、本人の意向を十分に尊重し、時間をかけて慎重に進めることが大切です。

整備後の効果を見る際は、以下の点に着目してください。

・シニアの生活がどのように楽になったか
・どのようなことが新たにできるようになったか
・ケアラーの負担がどの程度軽減されたか

整えること自体が目的ではなく、暮らしやすくなることを目指して進めましょう。

3. まとめ

今回は住まいの工夫を通じて、介護予防につなげる方法を紹介しました。高齢になると移動や排せつなどの何気ない動作が負担になり、転倒のリスクも高まります。

シニアが自立した生活を長く続けるために、まずは身近なところから、無理のない範囲で住まいを見直してみましょう。



監修:中谷ミホ



写真:PIXTA、写真AC


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この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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