電気代の値上げが家計に負担をかける中、節電の努力はとても重要です。しかし、誤った方法で行うと効果が得られないばかりか、体調を崩す原因になることも。実際に、電気代を抑えようと、エアコンの使用を控えた結果、自宅で熱中症になる高齢者も増えています。この記事では、節約アドバイザーの和田由貴さんの知恵を参考に、「無理なく、楽しく!」をモットーに、エアコンを上手に使いながら、省エネと節電を実現する方法を解説します。

1. たった1℃の差が電気代に大きく影響

クーラーの手入れをする女性

エアコンは、設定温度と部屋の温度の差が大きいほど消費電力が増えます。起動時が最も多くの電力を消費するため、冷房の設定温度をたった1℃変えるだけで消費電力が約10%〜13%も変わるといわれており、これによってワンシーズンで940円の節約につながると計算できます。

環境省は快適な室温の目安として「28℃」を推奨していますが、これはエアコンの設定温度ではなく、部屋の温度を28℃前後に保つことを指します。特にシニア世代の方は、暑さを感じにくいことがあるので、無理に我慢せず、体調に合わせて設定温度を調整することが重要です。室温28℃、湿度60%以下を目安にすると良いでしょう。

エアコンの効きが悪いと感じる場合は、フィルターの汚れが原因かもしれません。フィルターにホコリがたまると空気の通りが悪くなり、風量が低下してエアコンの効きが悪くなります。フィルターの掃除をすると、約5%の節電につながります。目安としては、2週間に1回程度フィルターを掃除するのが理想的。表面のホコリを使い古しの歯ブラシなどで落とし、掃除機で吸い取るだけでも効果があります。

また、冷房停止時にカビの発生を防ぐには、いきなり電源を切らずに5分〜10分ほど「送風」運転をしてみてください。こうすることで、エアコン内部の結露ができにくくなります。冷房や除湿の代わりに、気温があまり高くない時期には送風モードを活用するのも賢い方法です。

2. 風量は多くても電気代はほぼ同じ!賢い自動運転と風向きの秘密

エアコンのリモコン

暑さを感じた時、設定温度を下げる前に風量を調整しましょう。実は、風量を強くしても電気代にはほとんど影響がありません。風が強いだけでも体感的に涼しく感じられます。むしろ気を付けたいのは、風量を抑え過ぎることです。弱風に設定し過ぎると部屋がなかなか冷えず、エアコンが長時間フル稼働してしまい、かえって電気代がかかる悪循環に陥ることもあります。

風量の設定は「自動」にするのが最も効率的で省エネ効果が高くなります。自動運転なら、部屋が冷えるまで「強風」で一気に設定温度に到達させ、その後自動で「微風」や「弱風」に切り替わるので効率的です。

冷房を使う時は、重い冷気が部屋全体に広がるように、エアコンの風向きを「水平」に設定するのがおすすめです。冷たい空気は下に落ちる性質があるため、水平にすることで部屋全体にまんべんなく行き渡りやすくなります。スイング機能は、送風運転時にサーキュレーターのように活用できますが、冷房や暖房時には基本的には使わない方が効率的です。

3. 夏は扇風機を使いこなす!冷気を広げるプロの技

クーラーで涼む男性

エアコンの電気代を抑えるには、扇風機やサーキュレーターとの併用が非常に効果的です。これにより体感温度が下がり、エアコンの設定温度を控えめにできるため、節電につながります。扇風機は人に直接風を当てて体感温度を下げ、涼しさを感じるのに適しており、サーキュレーターは強く直進的な風で部屋の空気を効率的に循環させるのに優れています。

冷気を効率よく循環させるには、エアコンの冷気と扇風機を併用して空気をかき混ぜることが重要です。例えば、エアコンのある部屋と涼しくしたい部屋のドアを開け、涼しくしたい部屋の窓をわずかに開け、そこに扇風機の風を送る方法が有効です。これにより、部屋の熱気が外部に排出され、不足した空気を補うために、エアコンが稼働している部屋から冷たい空気が流れ込んできます。これは、複数の部屋を1台のエアコンと扇風機で涼しくすることも可能にします。扇風機を冷気のたまる場所や、エアコンの対角線上に置くのも、部屋の空気を効果的に対流させるこつです。

4. 「つけっ放し」と「小まめなオンオフ」は、時間帯で使い分けが正解!

エアコンの「つけっ放し」と「小まめなオンオフ」は、時間帯や状況に応じて使い分けることが適切です。エアコンは電源を入れた時に最も多くの電力を消費します。

あるメーカーの実験によると、真夏の昼間(9時〜18時)であれば、30分程度の短い外出なら、エアコンをつけっ放しにした方が電気代を抑えられます。これは、暑くなった部屋を再び冷やす際に消費する電力が増加するためです。一方、夜(18時〜23時)など外気温が低い時間帯は、室温が元に戻るペースが遅く、室温を下げるエネルギーが少なくて済むため、小まめにオンオフを切り替える方がより節電効果が高くなることがあります。

寝ている間のエアコン使用も、基本的には「つけっ放し」が推奨されます。タイマーで冷房が切れるように設定すると、夜中に暑さで目覚めて結局つけ直すことになり、上昇した室温を下げるためにかえって多くの電力を消費する可能性があります。節電を意識する場合でも、睡眠に支障のない控えめな設定温度(30℃前後など)でつけっ放しにしておきましょう。換気を行う際も、室内に熱気が入り込むため、冷房はつけっ放しにしておくのが良いとされています。

5. 冷房?除湿?意外と知らないエアコンの真実

クーラーのリモコンを操作する女性

エアコンの「冷房」と「除湿(ドライ)」モードの節電効果について理解しておきましょう。除湿運転には、ほとんどのエアコンに採用されている「弱冷房除湿」と、空気を暖め直すため消費電力が大きい「再熱除湿」の2つの方式があります。

弱冷房除湿は、冷房を弱めに運転することで湿気を取り除く方式であり、弱く冷房をつけているのと同等です。そのため、部屋の湿度だけでなく温度まで低下します。再熱除湿では、一度エアコン内部で空気を冷却した後、吹き出す前に室温と同じくらいまで空気を暖め直します。これにより室温を保ちながら湿気だけを取り除けますが、空気を冷やしてから暖め直すため、弱冷房除湿よりも消費電力は大きくなります。

これらの特性から、どちらの除湿運転でも節電効果は期待できません。弱冷房除湿は冷房を弱く使用しているのと同等の電気代がかかり、再熱除湿は冷房よりも余計に電気代がかかります。節電したい夏の暑い時期には、「冷房」を使用するのが最適な選択です。冷房の設定温度を低めにすることで湿気も効率的に取り除け、快適な室温を保てます。除湿運転は、肌寒い梅雨の時期や湿気が多い時、部屋の温度を下げずに湿気を取りたい時に活用しましょう。

6. 室外機も要チェック!節電の隠れた要

クーラーの室外機

室外機は室内から集めた熱を屋外に放出する重要な部分であり、その状態が電気代に大きく影響します。室外機は風通しの良い場所に設置し、周囲に物を置かないようにしましょう。直射日光が当たる場合は、日よけを設置して日差しを遮ることが効果的です。

ただし、排気口までふさがないように注意してください。シーズン前に泥はねやクモの巣、落ち葉などの汚れを取り除いておくことも大切です。室外機は水洗い可能ですが、高圧洗浄機の使用は避けてください。アルミのフィンが折れ曲がったり、故障の原因となったりする場合があります。すでに日なたに設置されている室外機を無理に移動させると、冷媒配管の破損など故障の原因となるため、避けましょう。

7. 焼け石に水」を防ぐ!部屋が暑くなりにくい環境づくり

室内の工夫

エアコン効率を高めるには、部屋が暑くなりにくい環境を整えることも重要です。

・窓からの日差し対策
部屋に入ってくる熱の7割が窓から入るといわれています。窓の内外で日差しを遮り、室温の上昇を抑えましょう。特に日差しの強い南側や西側の窓に効果的です。窓に当たる日差し自体も熱源となるため、窓の外にすだれやサンシェードを掛けることが重要です。

・適切な換気
帰宅時は、まず窓を開けてこもった熱気を外に逃がしてからエアコンをつけると効率的です。換気をする際は、外の涼しい空気の入り口となる窓を狭く、室内の熱い空気を外に逃がす出口となる窓やドアを広く開けましょう。入り口と出口が対角線上にあるとより効果的ですが、難しい場合は入り口付近に扇風機を置いて風の流れを作るのも良いでしょう。

・家の断熱性を高めるリフォーム
長期的視点で見ると、複層ガラスや二重窓、樹脂窓への取り換えなど、家全体の断熱性を高めるリフォームも有効な手段です。初期費用はかかりますが、夏冬ともにエアコンの使用を抑制できます。また、環境省の補助金(住宅省エネ2025キャンペーン「先進的窓リノベ2025事業」)などを活用できる場合があります。

8. 見落としがち!放熱する電化製品と古い家電の意外な落とし穴

エアコンの効率だけでなく、他の電製品も電気代や室温に影響を与えます。

・放熱する電化製品への注意
白熱電球は多くの熱を出すため、部屋の温度を上げる原因になります。蛍光灯や白熱電球を使っている家庭は、発熱量が少なく消費電力も低いLED照明への切り替えがおすすめです。これにより年間約279円~2,883円の節約につながります。冷蔵庫は夏場に電力消費が多い家電であり、頻繁な開閉は庫内の温度を上げて無駄な電力消費につながり、本体からの放熱量も増加します。冷蔵庫の開閉を減らすことで、年間約320円の節約効果が見込めます。

・古いエアコンも買い替え検討?
省エネに優れたエアコンは15年ほど前から広く販売されており、ここ10年ほどの性能はほとんど横ばいです。そのため、あまりに古い機種(10年以上前が目安)なら買い替えを検討すべきですが、10年以内の機種であれば、最新機種と比べても大幅には見劣りしない節電効果を期待できます。10年前のエアコンと現在のエアコンを比較すると約15%~17%程度の省エネとなっており、年間で5,100円~5,200円程度の節約効果を得られる可能性があります。

9. これだけは知っておきたい!その他の賢い節電術

スマホアプリ

日々のちょっとした意識や工夫で、さらに節電効果を高めることができます。

・消費電力量が大きな家電に集中
節電を考える際は、消費電力量の大きな家電(エアコン、冷蔵庫、照明器具など)から見直すことが重要です。スマートフォンの充電器など、待機電力がほぼゼロのものを気にしても節電効果はあまり期待できません。

・プラグの抜き差しに関する注意
エアコンのプラグを頻繁に抜くことは、故障の原因になる可能性があります。エアコンは停止しているように見えても室外機が稼働していたり、冷媒の循環が完全に止まっていなかったりすることがあるため、電源を切った後数時間はプラグを抜くのを避けるべきです。プラグを抜くのは、オフシーズンなど長期間使用しない場合のみが良いとされています。

・「省エネモード(エコモード)」の活用
「省エネモード」は、エアコンが室内環境を読み取り、メーカーが定めた必要最低限の設定温度で自動運転する機能です。手軽に節電したい場合に選択肢の一つとなります。

・取扱説明書の再確認
エアコンなどの家電製品には、さまざまな節電機能が備わっています。以前のエアコンと比べて機能が進化している場合もあるため、一度取扱説明書を読み直し、ご自身の家庭に合った機能や使い方を確認することをおすすめします。

・スマート家電の活用
スマートリモコンやスマートプラグなどのスマート家電を有効活用することも推奨されます。例えば、外出先からエアコンを操作して帰宅する時間に合わせて部屋を快適にしておく、タイマーで照明を点灯させるなどの機能により、無意識のうちに効果的な節電が可能になります。また、離れて暮らす親のエアコンの遠隔操作も可能です。室温が28℃以上になったら自動で電源を入れたり、設定温度を調整したりして、熱中症予防につなげましょう。

10. まとめ

特に高齢者のいるご家庭では、電気代を気にし過ぎるあまり体調を崩すことのないよう、熱中症予防のためにもエアコンを適切に使用することが何よりも重要です。エアコンの定期的なお手入れと適切な使い方を意識し、健やかかつ快適に、無理のない範囲で省エネに取り組んでいきましょう。




構成:研友企画出版


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著者:和田由貴(わだ・ゆうき)

消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。また、環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートでもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通する。私生活では2人の子を持つ母で現役の節約主婦でもあり、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。「節約は、無理をしないで楽しく!」がモットーで、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。専門分野は食費・光熱費・交通費・レジャー費など生活全般の節約、エコライフ、買い物、100円ショップ、その他消費生活アドバイザーの立場から製品安全や消費者問題、環境教育などにも携わる。
https://wada-yuki.com/profile1/

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