日々高齢者のケアにあたるケアラーにとって、シニアの服薬はケアの中でもとても重要な要素です。本人だけで管理しているとどうしても飲み忘れてしまったり、自己流の飲み方になったりしてしまうことがあります。、その結果、持病や体調、検査数値の悪化、そして時には驚くほどの残薬が見つかってしまったりなど……。そんな事態はできれば避けたいものです。

そんな不安をもつケアラーに知ってもらいたいのが、薬剤師による在宅訪問のサービス。薬剤師が定期的に利用者の自宅を訪問し、服薬や健康状態の管理を行うものです。イオングループのイオン薬局でもこの在宅訪問を行っています。そこで今回は、イオン薬局北小金店の管理薬剤師、松岡俊樹さんの在宅訪問に同行し、その様子を取材させていただきました。

1. 「るんるんに行くと楽しい」――訪問先での何気ない会話に宿る信頼関係

訪問先で迎えてくださったのは、98歳の助川金雄(すけがわ・かねお)さん。ふだんは訪問のヘルパーさんなどの支援を受けながら一人暮らしを続けていらっしゃいます。少し前に自宅で頭部に怪我をしてしまって以来平日には、息子さんに付き添われて通院されていて訪問の看護師さんも毎日来られているとのことでした。


助川金雄さん

今回取材に応じて下さった助川さん。98歳とは思えないほど、元気でしっかりとされていました


松岡さんは、助川さんの手や足の様子、体調の変化などを丁寧に確認しながら、こんなふうに語りかけていました。

「血管がちょっと弱くなっているから、血管が茶色く見えることがあります」
「最近は放射線治療で毎日の通院で大変ですけど、顔色もよくなってきてますよ。ごはん、食べられていますか?」

実際、前回の訪問時には少し痩せて心配されたそうですが、現在はふっくらとした様子に戻りつつあるようです。

助川さんは、通っていたデイサービス「るんるん」にもしばらく行けていないことを少し寂しそうに話しながらも、明るくこうお話しくださいました。
「とにかく、るんるんに行くと楽しくて。みんなでふざけたことばっかり話しているから。(中略)ここのところ、行けてないからちょっと寂しいね」

こうした何気ないやり取りの中にも、薬剤師としての松岡さんの目配りが感じられます。助川さんの声に耳を傾けながら、薬の飲み方や健康状態に関するアドバイスも自然に盛り込まれていました。


助川さん宅の壁に貼られた飾り物

デイサービスのイベントでもらった飾り物が壁に大事に貼られていました

2. お薬カレンダーで飲み忘れ防止をサポート

服薬の状況について松岡さんに伺うと、「助川さんはしっかりされていて、飲み忘れることはほとんどないんです」とのこと。ヘルパーさんが服薬をサポートしているとはいえ、ご本人の工夫も欠かせません。
「こうやって(今日飲む分を)テーブルの近くに貼っておくと、忘れないんだよね。目に入ると、ちゃんと気づけるから」

松岡さんの訪問は2週間に1回。2週間分のお薬をお薬カレンダーにセットして整え、体調の確認などを行って帰るスタイルです。むせたりしないか、すべて飲めているかなど、飲む時の状況にも気を配り、「(薬を)一粒ずつ飲んでいる」「咳が出るからまとめては飲まない」といった助川さんの飲み方も、よく把握されているようでした。


助川さん宅のテーブル周りにある薬
助川さん宅のお薬カレンダー

上:テーブルの脇の棚に、今日と明日の分の薬を貼り、忘れずに服用
下:2週間分の薬をセットできるお薬カレンダー。ほぼ2週間に一度の訪問時にこちらにセットする

3. 事故の予防やちょっとした不安にも気を配って

今回の訪問では、助川さんがけがをしてしまった時の状況についてのことも話題にのぼりました。入浴の際、浴槽で後ろ向きに転倒したということですが、ご本人は当初、大したことはないと気にせずにいたのですが、少しずつ腫れてきたため、受診に至ったそうです。
「湯船に腰掛けようとしてプラスチックの縁に頭をぶつけたの。コンクリートだったら大変だったね」
そんなエピソードを受けて、松岡さんはこうアドバイスします。
「ヘルパーさんにも一人のときにお風呂に入らないよう、見守ってほしいとお願いしています。一緒に入らなくても、そばに誰かがいるだけで安心できますからね」

このような、一人暮らしの高齢者に気を付けてほしいポイントに加え、「外に置いたままにした食べ物は避けてくださいね」「(クーラーに加え)扇風機もついていて安心しました」など、食中毒や熱中症といった夏の時期特有のリスクにも触れるなど、生活の細かなところまで気を配る姿が印象的でした。


在宅訪問時の薬剤師松岡さん

薬についてだけでなく、生活面での配慮も忘れない松岡さん

4. 「薬」だけでなく「暮らし」を支える訪問サービス

この在宅訪問サービスは、数年前から始まっており、松岡さんが北小金店に着任された2年前にはすでに多くの患者さんがこのサービスを利用されていたそうです。

訪問サービスの対応は主に11時〜18時の間ですが、患者さんの状況に応じて9時から20時まで対応しているとのこと。保険の適用範囲内での利用が可能です(医療保険、介護保険、各種公費に対応。対応時間は店舗により違います)。

サービスの希望があると契約を結んだのち、患者さんとご家族、在宅医療チームとの間で協議を行い、個別にプランを作成します。残薬整理やお薬カレンダーの設置、一包化なども含め、服薬管理を多角的にサポートしています。また、地域のICTシステムを活用し、主治医や看護師、ケアマネジャーなどの多職種間とで情報を共有することで、患者さん一人ひとりに対して、より迅速で適切な対応を実現しているとのことです。

松岡さんによれば、訪問サービスの利用者の多くは高齢者の方ですが、近年では医療的ケアの必要なお子さんをもつご家庭からの依頼も増えてきているそうです。
「(高齢者の方の場合)一人暮らしの方もいらっしゃいますが、ご家族と同居されている方も多くいらっしゃいます。状態としましても、寝たきりの方からたまにお散歩に出かけられる方まで、幅広い患者様がご利用されています」

導入のきっかけとしては、ケアマネジャーや医師からの在宅調剤のご提案や、普段からお買い物などでイオンを利用しているご本人・ご家族からの相談もあるといいます。

今回の取材を通して、在宅医療の現場において薬剤師は、単に「薬を届ける人」ではなく、患者さんやそのご家族、そして多職種連携の要としての役割を担う存在として重要性を感じました。
「在宅医療は、比較的新しい近年伸展してきた医療体制であり、患者様やご家族様にとっては不安が先行するケースが多いのではないかと感じています。しかし、そうした不安を解消した先では、患者様からは服薬治療の継続が困難であった状況から解放されたこと、ご家族様からはケアのためのさまざまな仕事に伴う負担が軽減されたことで安心感を得られたこと、また、言い争うことが減って家族との時間を大切にできるようになったなど、生活の質が向上したとのお声を多く頂戴しております」

さらに、「薬剤師としての知識だけでは、在宅チームの一員として機能することはできません。他職種と深く相互理解を深めていくことが不可欠です」と語る松岡さんですが、時には患者さんが他職種に言えなかったことを話してくれることもあり、そこから体調の変化や困りごとが見つかることもあるそうです。在宅訪問の場は、そんな安心と信頼の空間でもあるのだと感じました。


イオン薬局の管理薬剤師、松岡さん

イオン薬局北小金店の管理薬剤師、松岡俊樹さん

5. 取材を終えて

助川さんのように、しっかりと服薬を続けながら、自宅で安心して暮らしている高齢者の方がいるというのは、ケアに関わるご家族にとっても大きな安心につながります。

イオン薬局の在宅訪問サービスは、薬の管理だけにとどまらず、生活全体に寄り添うかたちで健康を支える、ケアラーにとっての頼もしい存在になっているようです。




・「いつもの薬局 イオン薬局」
イオン薬局は、毎日の暮らしに寄り添う「かかりつけ薬局」として、お薬・健康・在宅医療のことなどに関するご相談をいつでも受付けています。年中無休で処方箋も受付中(一部店舗を除く)。
詳しくはイオン薬局公式サイトへ
イオン薬局公式サイト



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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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